平成 30 年度卒業証書・学位記授与式学長式辞 (2019 年 3 月 18 日) 卒業生、修了生の皆さん、本日はおめでとうございます。

 平成 31 年3月18日、新見公立大学 健康科学部看護学科 66 名、助産学専攻科 6
名、大学院看護学研究科4 名、ならびに新見公立短期大学 幼児教育学科53 名、地
域福祉学科50 名の皆さんに、卒業証書、学位記を授与できますことは、私共にとりまして大いなる喜びであります。大学を代表いたしまして、卒業生、修了生の皆さん、ならびにご列席のご家族の皆様に、心からのお祝いを申し上げます。また、ご多用中にもかかわりませず、ご臨席を賜りました、ご来賓の皆様に厚く御礼を申し上げます。

 昨年は思いもかけない西日本豪雨災害や台風に見舞われ、新見の地も甚大な被害を受けました。被災された皆さまに、謹んでお見舞いを申し上げますとともに、一日も早い復興を祈念致しております。
さて、今年の冬は例年にない暖冬で、雪の日も少なく、本学学報のタイトルでもあります、阿哲マンサクも2月中旬には小さいリボン状の鮮やかな黄色い花を咲かせて、新見に早い春の訪れを告げてくれました。まもなく、皆さんが、夢と希望を膨らませて初めて本学の門をくぐった桜の季節となります。そして、周辺の山々が緑に輝く季節から、新見川に蛍が飛び交う夏を経て、美しい紅葉の秋となり、雪景色の冬から、再び穏やかな春へと新見の四季は巡っていきます。私たち教職員は、この悠久の時を刻む新見の地で、皆さんの人生の最も大切な時期に、時間を共有できたことを大変嬉しく思っています。

 今、壇上から、入学時とは見違えるほど立派に成長し、充実感と自信に満ちた皆さんの眼差しを拝見し、専門職としての知識、技能の修得に加えて、建学の精神である
「誠実」「夢」「人間愛」を基盤に人間力の向上に努めてくれました皆さんのことを「誇り」に思うとともに感謝の気持ちでいっぱいです。卒業にあたり、私から皆さんへの餞として、そして、平成30年度の卒業アルバムの表題として、『ひたむきに、前向きに、そして、しなやかに』を声援の言葉として贈ります。皆さんは、これからも学生時代と同様に自らの目標に向けて、『ひたむきに、前向きに』自分の道を歩んでくれると思います。しかし、学生時代とは比較にならないストレスの多い現実の社会において、これからは『しなやかに』という要素も重要になってくるというメッセージです。自分らしさを失わない柔軟性と多様性を受け入れることのできる『しなやかな心』を持って生き抜く力、その力こそが、本学で皆さんが培った人間力そのもののはずです。自信を持って、『あせらずに、あわてずに、そして、諦めずに』、新たな夢に向かって挑戦を続けて下さい。
 
 皆さんもご承知のように、本学は、本年 4 月より、課題先進地域にある地の利と教育研究資源を活かし、「人と地域を創る新見公立大学」として、新・健康科学部 1 学部3 学科体制に移行します。日本の典型的中山間地域にある唯一の保健福祉系の公立大学の使命として、人の生活基盤を支える看護学科、健康保育学科、地域福祉学科の 3 学科が協働して、人に優しい地域共生社会の在り方を検証しつつ、「健やかなこどもの発達、心の豊かさの向上、高齢者の健康寿命の延伸」を実現する多職種連携を実践的に研究、教育していく計画です。大学の「真価」は、本学を巣立っていく皆さんが本学での学びを生かして、それぞれの専門領域で光り輝いて活躍し続けてくれることにあります。新・健康科学部では、人生100年時代の多様な学びを構築するために、皆さんの卒後・生涯教育や学び直しを支援していく体制を整備していきますので、皆さんからの建設的な要望とともに積極的な活用を期待しています。また、あとに続く後輩への温かい声援に加えて、かけがえのない青春の時間を過ごした新見市での人との出会いや街の思い出を胸に、新見市と大学の発展を応援してください。

 いよいよ旅立ちの時がきました。皆さんは、本学39年のあゆみのなかで、その大半を占めています平成の時代、その30年の最後を飾る卒業生、修了生となります。新しい元号で始まります新時代は、内閣府によるとサイバー空間とフィジカル空間が高度に融合し、人工知能(AI)やロボットなどが活躍する Society5.0 として人々が快適で活力に満ちた質の高い生活を送ることのできる、人間中心の社会として描かれています。しかし、社会に広がる格差や人口減少が進む地方の現実を見る限り、これらの新しい技術革新が無条件で人間を幸福にするとは思えません。むしろ、皆さんが職業とする看護師、保育士、介護福祉士などヒトの生活基盤を支え、人と人、人と地域を繋ぐ『優しさ』こそが、ヒトの幸福を紡ぎ、支える力の源であると思っています。
最後に、もう一度繰り返しますが、新しい夢に向かって、『ひたむきに、前向きに、そして、しなやかに』に生き抜いてください。夢に向かうことが苦しいと思ったとき、立ちはだかる壁に心が折れそうになったとき、雨の日、雪の日、真夏の炎天下の日に息が切れて、キツかった大学の坂道の急勾配を思い出して下さい。坂の上にあった青春の時間、友との交友、今日少し潤んだ眼差しでいる教職員との笑顔の思い出が、もう一度挑戦する勇気をきっと与えてくれると思います。

 皆さんのこれからの輝かしい人生を祈りつつ、卒業、修了に際しての心からの祝辞とさせていただきます。おめでとうございます。

平成 31 年 3 月 18 日
新見公立大学・新見公立短期大学学長 公文 裕巳