卒業生、修了生ならびにご家族の皆さん、本日はおめでとうございます。


 2024年3月16日、新見公立大学 健康科学部 健康保育学科54人、看護学科83人、地域福祉学科49 人、助産学専攻科6人、大学院健康科学研究科看護学専攻3人の皆さんに、卒業証書、学位記および修了証書、ならびに本学独自の称号を授与できることを大変うれしく思います。
 学部卒業生の皆さんは、本学が2019年度に新・健康科学部1学部3学科となり、「課題先進地域の現場で人と地域を創る新見公立大学」として新たにスタートした4年制大学の第二期生として2020年4月に入学されました。想定外の新型コロナウイルス感染症の全国拡大にともない入学式を簡素化し、換気のために全ての窓を開放した本学体育館で実施しました。やや肌寒く張り詰めた緊張感のある式典会場に、ウグイスの爽やかな鳴き声がこだまし、皆さんを祝福してくれたことを覚えているでしょうか?あれから4年が経ちました。この4年間をコロナ禍という制約のある状態での大学生活を送ることになったのは大変残念なことでしたが、幸い、本学が中山間地域にあることと独自の感染症対策を実施したことにより、他大学と比較して学修面での負の影響は少なかったと思われます。その結果、「健やかな子どもの発達、心の豊かさの向上、高齢者の健康寿命の延伸」を指標として、地域共生社会の構築における3学科の役割と多職種連携を研究、教育することを基本に設計した本学の時代を先取りする学修プログラムを着実に履修し、皆さんが無事に卒業の日を迎えることができたことに安堵しています。お陰様で、大学としても皆さんの成長とともに進化を遂げ、日本の中山間地域にある唯一の保健福祉系の公立大学として、進むべき方向性を再確認することが出来ました。

 しかし、日々の生活を振り返ると、現実には各種の実習やインターンシップなど地域をフィールドとする学修活動の制約や日常の学生生活での行動制限やマスク着用などの負の影響は少なくなく、精神的にもストレスの多い青春時代を過ごすことになったことと思います。本日の卒業証書は、皆さんがコロナの時代をしなやかに生き抜いた証であり、コロナ禍の4年間はこれから社会人として、専門職として歩む人生の中で想定外の困難に遭遇した時に、耐える力と乗り越える力を学修する機会になったとポジティブに捉えることが出来るかも知れません。

 一昨年、昨年と異なり、今年の冬は暖冬で、雪の少ない年でしたが、それなりに寒さの厳しい冬の新見でした。季節はめぐり、先月末には、新見に春の訪れを告げるアテツマンサクの花の便りが届き、まもなく桜の開花や木々の芽吹きが始まります。皆さんの4年間は、専門職として知識、技能の修得とともに、悠久の時を刻む新見市での四季折々の変化に富む豊かな自然のなかで、人の優しさやぬくもり、そして人と人との繋がりやコミュニケーションの大切さを心に刻みつつ、「人の痛みが分かる優しい人間として生きる力である人間力」を身に付けるために必要十分な時間であったと思っています。人と人との出会いは本当に不思議なものです。巡り合うことを想像もしていなかった多くの皆さんが、この新見の地で初めて出会い、共に学び、絆を深めつつ初心を貫き、今、専門職としてそれぞれの道に旅立とうとしています。改めて、「誠実・夢・人間愛」の建学の精神のもとに、3学科の学びで身に着けた専門職としての知識・技能とともに人間力を生かし、それぞれの現場で共に生きる社会の構築を念頭に活躍してください。

 助産学専攻科ならびに大学院を修了された皆さんには、学部卒業生とは少し異なる思いで本日の式典に臨まれていると思いますが、進学時の初心を貫き目標を達成したことを誇りに、これからの専門職人生を歩んでください。

 卒業にあたり、私からの希望を込めたメッセージとして、皆さんの学生ボランティアノートの表紙に記載しています「いつの日にか夢を志に」という願いを改めて餞に贈りたいと思います。夢は、通常、一人ひとりが自分のために目指す願望ですが、志は個人の願望を超えて、多くの人たちの夢を叶えようとする思いや気構です。皆さんがこれから取り組む人の生活基盤や健康を支える専門職領域では、多くの人たちの夢や希望を優しく支え、実現につなげていくことや、多くの社会的課題、不合理や矛盾についても、専門職の立場で考え、その解決につなげていくことが出来ると思います。本学での「夢を叶える学び」を基盤に、「志を果たす学び」へと学びの質と内容を進化させながら、皆さんの支えを必要とする人たちのために尽力してください。

 本学は昨年4月に、大学院を改組するとともに、「全世代型地域包括ケア研究センター」を開設して、中山間の住み慣れた地域で、安心してこころ豊かに共に生きる社会の構築を目指して、基盤研究とともに、「新見モデル」として生活課題を解決する複数の産学官民プロジェクトを開始しました。いずれこの新見モデルが皆さんの「志を果たす学び」として役に立ち、大学とともに共同で展開可能となる日が来ることを期待しています。改めて、卒業生、修了生の皆さんには、新見公立大学に学んだことを誇りに、あとに続く後輩たちへの温かい思いやりとともに、かけがえのない青春の時間を過ごした新見市での人との出会いや街の思い出を胸に、新見市と大学の発展を応援してください。

 終わりに、大学の真の価値を決めるのは、本学で学んだ皆さんが、専門職として社会に貢献してくれること、そしてワーク・ライフ・バランスを考えた幸せで充実した人生を送ってくれることです。ポストコロナの時代に逞しく、しなやかに飛び立つ皆さんに心からの声援を送ります。

                                      令和6年3月16日
                                  新見公立大学学長 公文 裕巳
 

令和5年度卒業証書・学位記授与式学長式辞.pdf [ 112 KB pdfファイル]