卒業生、修了生の皆さん、本日はおめでとうございます。
 

 2023年3月18日、新見公立大学 健康科学部 健康保育学科45人、看護学科81人、地域福祉学科49 人、助産学専攻科5人、大学院看護学研究科2人の皆さんに、卒業証書、学位記および修了証書、ならびに本学独自の称号等を授与できることを大変うれしく思います。

 コロナ禍での4回目の春を迎えましたが、本日、初めて本講堂が満席となり、しかも、学生の皆さんのマスク無しでの輝く笑顔のもとに、保護者の皆様を交えての式典が開催できていることを心から喜び合いたいと思います。

 学部卒業生の皆さんは、本学が2019年度に新・健康科学部1学部3学科となり、「課題先進地の現場で人と地域を創る新見公立大学」として新たにスタートした4年制大学の栄えある第一期生であります。新・健康科学部は、「健やかな子どもの発達、心の豊かさの向上、高齢者の健康寿命の延伸」を指標として、地域共生社会の構築における3学科の役割と多職種連携を研究、教育することを目標に開設しました。健康保育学科では、「子どもの発達を支える理想の保育専門職」の育成、看護学科では、「全ての世代の心と体の健康を支える看護専門職」の育成、地域福祉学科では「21世紀型スーパー地域福祉人材」の育成という高い目標を掲げ、3学科共通科目や防災士資格取得に加えて本学独自の称号取得のために新たな要素を組み込んだ多彩なカリキュラムと学修コースを設定してスタートしました。皆さんが、この4年間、本学の時代を先取りする新しい学修プログラムを着実に履修し、無事に卒業の日を迎えてくれたことに心より感謝いたします。お陰様で、大学としても皆さんの笑顔とともに大いなる成長を遂げ、日本の中山間地域にある唯一の保健福祉系の公立大学として、進むべき方向性を再確認することが出来ました。

 残念だったことは、2年次からの3年間を想定外の新型コロナウイルス感染症のパンデミックに見舞われたことであります。都会に比べて影響は少なかったとはいえ、実習やインターンシップなど地域をフィールドとする学修活動の制約、それに加えて、アクリル板、マスク、消毒、ディスタンスのある学内生活と行動制限をともなう日常生活などにより、随分とストレスの多い青春時代を過ごすことになったと思います。しかし、本日の卒業証書は、コロナの時代をしなやかに生き抜いた証でもあり、これから歩む社会人としての人生の中で想定外の困難に遭遇した時に、耐える力と乗り越える力を学修する時間であったとポジティブに捉えることが出来るのかも知れません。

 昨年に続き、今年の冬も寒さが厳しく、記録的な大雪も経験しました。しかし、先月末には、新見に春の訪れを告げるアテツマンサクの花の便りが届き、まもなく桜の開花や木々の芽吹きが始まります。皆さんの4年間は、専門職として知識、技能の修得とともに、悠久の時を刻む新見市での四季折々の変化に富む豊かな自然のなかで、人の優しさやぬくもり、そして人と人との繋がりやコミュニケーションの大切さを心に刻みつつ、「人の痛みが分かる優しい人間として生きる力である人間力」を身に付けるために必要十分な時間であったと確信しています。人と人との出会いは本当に不思議なものです。巡り合うことを想像もしていなかった多くの皆さんが、この新見の地で初めて出会い、共に学び、絆を深めつつ初心を貫き、今、専門職としてそれぞれの道に旅立とうとしています。改めて、「誠実・夢・人間愛」の建学の精神のもとに、3学科の学びで身に着けた地域貢献・多職種連携力を生かし、共に生きる社会の構築について考え続けてください。

 今、残念ながら輝きを失いつつある日本は、少子・高齢化と人口減少に伴う諸々の課題の顕在化、社会に拡散した分断と格差のコロナ禍での拡大、ロシアのウクライナ侵攻に代表される世界的な人権の無視と人間性喪失の傾向などにより、多くの人が孤独の時代での生きづらさを感じるようになっています。また、子どもの幸福度が著しく低下していることも大きな課題となっています。このような時代背景のなか、「病気や障害があっても、社会に適応してその人らしく生活している状態が健康であり、それを支える人と仕組みを科学する」本学の健康科学を学び、共生社会の実現を願う保育、看護、福祉人材の果たす役割は極めて大きいと言えます。

 あらためて、学部卒業生ならびに修了生の皆さんには、新見公立大学で学んだことを誇りに、多様性と変化に富む社会の現場において、夢と志しを持って、これからの専門職人生をしなやかに逞しく歩み続けて下さい。大学の真の価値を決めるのは、本学で学んだ皆さんが、専門職として社会に貢献してくれることと同時に、ワーク・ライフ・バランスを考えた幸せな人生を送ってくれることです。自らを大切に共に生きる社会のWell-beingを目指して、WithコロナからPostコロナへと変貌する未来に向けて旅立つ皆さんに心からの声援を送ります。
 

令和5年3月18日
新見公立大学学長 公文 裕巳

令和4年度卒業証書・学位記授与式学長式辞.pdf [ 87 KB pdfファイル]