平成30年度入学式学長式辞(2018年4月8日)
 
新入生の皆さん、本日はおめでとうございます。

 平成30年4月8日、新見公立大学 健康科学部看護学科66名、助産学専攻科6名、大学院看護学研究科3名、ならびに新見公立短期大学 幼児教育学科54名、地域福祉学科41名の入学式をここに挙行できますことは、私共教職員にとりまして大いなる喜びであります。大学を代表いたしまして、新入生の皆さん、ならびにご列席のご家族の皆様に心よりのお祝いを申しあげます。また、ご多用中にもかかわりませず、ご臨席を賜りました、ご来賓の皆様に厚く御礼を申し上げます。

 今朝は少し気温が下がり季節外れのみぞれ交じりとなりましたが、春風とともに木々の芽吹きが始まります4月は、万物の悠久のいとなみの中に生命の躍動感を感じ、新しい出会いを祝福するのに最もふさわしい時であります。本日、ここに、それぞれの夢と希望を胸に、心を躍らせている新入生の皆さんを前にして、私ども大学の教職員一同、大変誇らしく嬉しい気持ちで一杯であります。新入生の皆さんを心より歓迎いたします。

 長く辛かった受験勉強を経て、今日の日を迎えられた事と思いますが、他者との競争は、今回の入試でひとまず終止符を打つことになります。これからの競争相手は他者ではなく、内なる自分であり、如何にして自分自身の総合力を高めていくか、ということが最重要課題となります。

 人間の総合力は、知識、技能など数値化できる学力とともに、必ずしも数値化ができない人間力との総和であります。本学は開学以来の基本理念として「誠実、夢、人間愛」を謳っております。誠実であること、夢を抱くこと、そして人間の尊厳を守り、利他の心で生命をいとおしむ人間愛の精神を培うこと、それらが、皆さんが目指す看護師、保育士、介護福祉士など、人と係る専門職の人間力向上において、最も重要な要素であります。

 皆さんも既にご承知のように、本学は、これからの大学改革の一環として来年4月より、健康科学部1学部3学科体制に改組し、短期大学の募集を停止します。平成30年度の幼児教育学科と地域福祉学科の新入生の皆さんが、新見女子短期大学に始まります新見公立短期大学の有終の美を飾る学年となります。私共、教職員は、短期大学の新入生95名を、今まで通り2年間で優秀な保育士、介護福祉士として養成することに全力を挙げて取り組む覚悟であります。また、本学は、日本の中山間地域にあるほぼ唯一の保健福祉系の公立大学として、新見市との連携をより強化して、「健やかな子供の発達、心の豊かさの向上、高齢者の健康寿命の延伸」を目指す地域共生社会の構築に向けて、課題の検証を進めていく計画であります。

 来年から、元号が変わることになりますが、平成の時代に明らかになったことのひとつとして、現役世代に不都合なことを「ないことにする」社会の矛盾が露呈したことが挙げられます。日本の原子力行政では、原子力発電は安全であり、事故は「おこらないこと」が前提でしたが、2011年の東日本大震災により、その安全神話は崩壊しています。的確に管理されていない公的文書のこと、日本の国の借金1085兆円のこと、少子・高齢化、人口減少とともに著しい格差が進行していることなどなどを「ないことにする」かのような対応による多くの矛盾と課題が、将来、あなた方の世代に重くのしかかってくることになります。
 
 これから大学生となる皆さんには、目指す専門職としてだけでなく、自立した社会人として生きる力としての人間力を高めることも重要となってきます。
今日、私から3つのことをお願いします。

 まず、1つ目は、自分の目標と夢を明確に持ち、それに向かって諦めないで、努力し続ける力を身につけてください。人生での成功のカギは、失敗をしても、遅くなっても、最後までやり抜く力です。どうすれば、夢が実現するのかを考え続けることが、主体性と協調性の向上、物事の多様性への理解など人間力の向上につながります。それとともに、夢を実現に導く幸運の女神とめぐり会う確率が確実に高まります。 
         
 2つ目は、読書の習慣を身に付けてください。近年、若者の読書離れが進行し、読書時間ゼロの大学生が2017年の調査で53.1%を占めると報告されています。本学では読書力の養成に力をいれていますが、読書は、自分をつくる、自分を鍛える、自分を広げる基盤であり、社会人としての人間力を高める最も重要なツールであります。

 3つ目は、政治にも関心を持ち、少なくとも1昨年から始まりました18歳選挙権を行使してください。選挙は、未来を変えるための必須のプロセスであり、無関心が社会に拡がる種々の矛盾や格差を助長します。社会の構成員であることを自覚して、政治的判断力としての人間力を養うことが、現役世代に不都合なことを「ないことにする」社会の矛盾を解決するための重要な要素となります。

 以上、人間力の向上を中心にお話ししましたが、幅広い人間力の涵養は日常の生活にあります。明るい笑顔に思いやりと気配りの一言を添えた挨拶をお互いに掛け合いながら、健康に留意して充実した学生生活を送って下さい。ご列席のご家族の皆様、ならびにご来賓の皆様に、本学に対する温かいご支援とご厚情をお願い致しまして、私の式辞とさせていただきます。

平成30年4月8日
 
新見公立大学・新見公立短期大学学長 公文 裕巳