爽やかな新見の春風と木々の芽吹きが新しい出会いを祝福しています。新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。

 昨年1月に始まる新型コロナウイルス感染症は未だ収束が見通せないままに、大都市圏を中心に各地で第4波の到来を迎えつつあります。本学は、中山間地域にあることと、在学生、教職員ならびに地域の皆様の感染予防に対する積極的な取り組みにより、今、こうして保護者の皆様を交えて、健康科学部3学科、助産学専攻科ならびに、大学院看護学研究科の入学式が開催できていることを素直に喜びたいと思います。とは言うものの、このところ新見地域でも感染者が増加しており、感染防止対策を徹底して、大学での学びを止めない努力をお願いします。

 さて、学部入学生の皆さんには、コロナ禍のなか、長く辛かった受験勉強を経て、今日の日を迎えられた事と思います。他者との競争は、今回の入試でひとまず終止符を打つことになり、これからの競争相手は他者ではなく、内なる自分となります。人間の総合力は、知識、技能など数値化できる能力と、必ずしも数値化ができない「人間力」との総和であり、如何にして自分自身の総合力としての人間力を高めていくかということが重要課題となります。

 「人間力」についての明確な定義はありませんが、凡そ、人の痛みが分かる優しい人間としての「生きる力」であると考えています。本学の建学の精神である「誠実、夢、人間愛」のもと、誠実であること、夢を抱くこと、そして人間の尊厳を守り生命をいとおしむ人間愛の精神を培うこと、それらが、皆さんが目指す保育、看護、介護、福祉の専門職としての「生きる力」の基盤になると考えています。

 入学に際して、本学での専門職として学びとともに、人間力を高める方策として、私から3つのお願いをします。

 1つ目は、改めて読書の習慣を身に付けて下さい。読書は、幅広い教養を身に着け、ものの見方、感じ方、考え方を豊かにして「感性」を磨く重要なツールとなります。

 2つ目は、課題先進地域の現場で学ぶという本学の特色を生かして新見市全域を学びのキャンパスと考えて学修して下さい。平素より「地域に学び地域とともに歩む」という精神で、地域での実習、地域貢献活動、地域交流などをとおして、地域課題の理解とともに、人の温かさやぬくもりに触れて「共感力」を養って下さい。

 3つ目は、自分の夢や志を具体的に描きそれに向かって諦めないで、努力し続ける力を身に着けて下さい。人生での成功のカギは「GRIT<やり抜く力>」であることは、ペンシルベニア大学心理学の Angela Lee Duckworth教授の研究で実証されています。このやり抜く力は、「Perseverance <忍耐力>と passion<情熱>」の2つ要素で構成されており、本学での学びをとおして身に着けられる資質であると考えています。因みに、本年2月19日に火星に着陸したアメリカの火星探査車の名前は「Perseverance」です。

 以上、人間力向上について3つのお願いをしましたが、幅広い人間力涵養の基盤は日常の学生生活にあります。当面はマスク越しとなりますが、明るい笑顔に思いやりと気配りの一言を添えた挨拶をお互いに掛け合いながら、友情の絆を結びつつ、感染予防と健康に留意して充実した学生生活を送って下さい。

 終わりに、ご列席の保護者の皆様には、改めまして本学に対する温かいご支援をお願い致しまして、私の式辞とさせていただきます。

令和3年4月10日

新見公立大学学長 公文 裕巳