2020年度 卒業生、修了生の皆さんへ

 卒業生、修了生、ならびに保護者の皆様、おめでとうございます。

 本日ここに、新見公立大学 健康科学部看護学科61人、助産学専攻科6人の皆さんに、卒業証書、学位記および修了証書を授与できることを大変嬉しく思います。

 大都市圏を中心に未だ新型コロナウイルス感染症の収束が見通せない状況にあり、多くの大学で昨年に続き通常の卒業式が実施できていません。幸い、本学は、中山間地域にあること、学生と教職員の努力ならびに地域の皆様のご支援もあり、今、こうして保護者の皆様を交えての卒業式が開催できていることを素直に喜びたいと思います。

 特に、学部卒業生の皆さんは、看護学部から健康科学部への名称変更後の第一期生であります。その皆さんに、卒業前の半年間ではありましたが、昨年9月に完成した新棟・地域共生推進センター棟での快適な学生生活、そして本講堂での初めての卒業式の式典、それらを思い出として贈ることができたことを教職員一同大変嬉しく思っています。

 2年連続の豪雨災害に引き続き、昨年からはコロナ禍に見舞われ、不要不急の名のもとに随分と不自由な学生生活を送られたことと思います。しかし、今、壇上から、皆さんの充実感と自信に満ち溢れた眼差しを拝見し、この4年間、新見の地でお互いに友情の絆を結びつつ切磋琢磨して、見違えるほど立派に成長してくれたことに安堵するとともに、皆さんを誇りに思います。

 まもなく、皆さんが、夢と希望に胸を膨らませて初めて本学の門をくぐった桜の季節となります。そして、周辺の山々が緑に輝く季節から、新見川に蛍が飛び交う夏を経て、美しい紅葉の秋となり、雪景色の冬から、再び穏やかな春へと新見の四季は巡っていきます。新型コロナウイルスとともに多くのことが変化しましたが、変わることのない大自然の営みは悠久の時を刻み続けています。皆さんは、変わらない新見の原風景とともに、人の温かさやぬくもり、人と人との繋がりや絆の大切さを、コロナ禍の生活をとおして、改めて心に刻むことができたのではないでしょうか。

 2020年、本学は開学40周年を迎えましたが、この間、一貫して、建学の精神である「誠実、夢、人間愛」を基盤とする人間力の向上に努めてきました。「人間力」の厳密な定義はありませんが、凡そ、人の痛みが分かる優しい人間としての「生きる力」であると考えています。デジタル技術革新や気候変動など変化が激しく、予測不能な21世紀の社会に新型コロナウイルスが加わったことで、看護専門職が目指す「全ての世代の心と体の健康を支える」ことの重要性や守備範囲は著しく大きくなっています。変貌する時代に船出する皆さんの卒業アルバムに「しなやかに逞しく生きる」というタイトルを贈らせていただきました。これからの専門職人生を本学で培った人間力を基軸として「しなやかに」、身に着けた課題解決能力と自己教育力を活かして「逞しく」生き抜いてください。

 大学の真の価値を決めるのは、皆さんが、看護師、保健師、助産師、ならびにスキルアップした修士としてどれだけ社会に貢献してくれるかであるとともに、どれだけ幸せな人生を送ってくれるかであると思っています。

 皆さんのこれからの輝かしい人生と健康を祈りつつ、卒業、修了に際しての心からの祝辞とさせていただきます。おめでとうございます。

令和3年3月20日
新見公立大学学長 公文 裕巳