令和7年度 公立大学法人 新見公立大学入学式 学長式辞(2025年4月5日)
令和7年度入学式学長式辞
爽やかな新見の春風が新しい出会いを祝福しています。新入生の皆さん、ならびにご列席のご家族の皆様、本日はおめでとうございます。新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行してほぼ丸2年が経過し、新見公立大学開学45周年となる記念の年の入学式を、コロナ以前の形式で晴れやかに開催できることを大変嬉しく思っています。ご臨席を賜りました石田新見市長をはじめご来賓の皆様に心より御礼申し上げます。
新見公立大学は、2019年度に開学40周年を1年前倒しして「課題先進地域の現場で人と地域を創る新見公立大学」健康科学部1学部3学科の4年制大学として新たにスタートし、2023年度に大学院についても健康科学研究科に改称・改組して、時代の要請に応える現在の体制となっています。本年度は、健康科学部の7期生として健康保育学科57人、看護学科83人、地域福祉学科55人、助産学専攻科6人、ならびに大学院健康科学研究科看護学専攻博士前期課程2人、同博士後期課程2人、地域福祉学専攻修士課程3人の新入生を迎え、学生総数は本学45年の歴史のなかで最も多い799人となりました。引き続き、日本の中山間地域にある唯一の保健福祉系の公立大学として、中山間地域の持続可能な未来像としての地域共生社会の構築、ならびにその基盤となる全世代型地域包括ケアの課題の追求と解決策を研究・教育する特色ある大学を目指してまいります。
新入生の皆さんをお迎えする大学の教職員は、学生と共に歩む大学として、常に学生ファーストの精神で、学修カリキュラムはもとより修学環境についても不断の改革、改善に努めていくことをお約束致します。学部入学生の皆さんは、小規模大学での教職員と学生との距離の近い、血の通う学びを通して、保育、看護、福祉それぞれの領域で理想の専門職を目指して歩みを進めてください。そのために、専門職としての知識・技能の修得とともに、「誠実・夢・人間愛」の建学精神のもと、「誠実であること、夢を抱くこと、そして、人間の尊厳を守り生命をいとおしむ人間愛の精神」を基盤に人間力の向上に努めてください。また、健康科学を学ぶ学生として自らの健康にも留意してください。本学の健康科学の目標は、「病気や障害があっても、社会に適応してその人らしく生活している状態が健康であり、それを支える人と仕組みを科学する」ことであります。つまり、共に生きる周りの人の健康を支えるために、先ず、自らが健康である必要があります。なお、本学でいう健康とは、社会的・身体的・感情的問題に直面した時に、それらに適応して自分をコントロール出来る状態とその能力のことであり、皆さんには困難な状況に柔軟に対応しうる精神的能力としてのレジリエンス、心のしなやかさを養うことが求められます。
ところで、今、2020年から4年間続いた新型コロナウイルスパンデミックに加えて、ロシアのウクライナ侵攻やイスラエル・ハマス戦争など非人道的事態の日常化、地球温暖化から沸騰化へとすすむ気候変動と繰り返す自然災害を目の当たりにして、改めて、飢餓、戦争、自然災害、感染症という人類の歴史的4つの課題の克服が21世紀においても容易でないことが明らかになっています。更に、AIをはじめとする科学技術の早すぎる進歩、フェイクニュースを拡散するSNS、ならびに価値観や社会の仕組みの変貌とともに予測の出来ない時代が加速するなか、分断と格差の拡大により多くの人が孤独の時代の生きづらさ感じるようになっています。
人は、本来、共同で出産と子育をし、共に寄り添い、助け合って生きるという環境に適応して進化、生存してきた動物の1種、ホモサピエンスであります。そのため、他者に依存し依存されるという関係性を可能にする心のはたらき、つまり、自分の利益よりも、周りの人の利益を優先する心である「利他の心」が自然にめばえ、利他的な行為が快い感情と共感性を導く動物として適応的に生命をつないできました。人類の繁栄と文明の進化や経済の発展による物質的な豊かさとともに、人と人との繋がりが希薄化した現代社会では、「利他の心」が自然にめばえてくることが分かり難くなっているのかも知れません。しかし、皆さんが、今回、保育、看護、福祉の領域を自らの進むべき道として選択した背景には、人間本来の心のはたらきである「利他の心」が自然にめばえ、育まれてきたからに違いありません。この「利他の心」こそが、孤独・孤立に向かうこれからの時代に皆さんが身に付けるべき人間力であり、先に触れた、心のしなやかさ根底となる人の優しさです。
本学では、学内や実習施設での学修だけでなく、各学科ならびに3学科共同で地域をフィールドとして学修することや、課外活動としての地域交流・地域貢献活動を大学全体として推進しています。皆さんは、四季折々の変化に富む豊かな自然に恵まれた新見市全域を学びのキャンパスとして、「地域に学び、地域と歩む」本学の学びをとおして、人の優しさやぬくもり、人の孤独と生きづらさや悲しみに直接触れ、人と人との繋がりやコミュニケーションの大切さを心に刻みつつ、人間力と心のしなやかさを身につけて欲しいと思っています。助産学専攻科、大学院への進学者の皆さんも、改めて初心に帰り、本学の目指す健康科学の目標に向かって歩みを進めてください。
以上、入学生の皆さんには、本日より明るい笑顔で挨拶を交わしながら、友情と絆を結びつつ、「未来を創る学びを求めて」充実した学生生活を送って下さい。ご列席のご家族の皆様には、本学に対する温かいご支援をお願い致しまして、私の式辞とさせていただきます。
令和7年4月5日
新見公立大学学長 公文 裕巳
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