2025年度 私の読書ノート(教職員推薦図書)
新見公立大学教職員が、学生に向けてお勧めの本を紹介する企画です。
専門分野の良書や、人生について考える書、面白い小説など、様々なジャンルの本が紹介されています。推薦図書を通じて、普段はなかなか接する機会のない他学科の教員や、よく知っている教員の意外な一面を発見することができるかもしれません。
紹介されている本は図書館で借りることができます。
看護学科
健康保育学科
地域福祉学科
全世代型地域包括ケア研究センター 認定看護師教育課程
公文裕巳学長の読書ノート
無と意識の人類史 私たちはどこへ向かうのか (東洋経済新報社 2021) 広井良典/著
科学哲学・公共政策などを専門とする現代のオピニオンリーダの一人である著者が、「私たち人間はどこからきて、どこへ向かおうとしているのか」を問う壮大な人類史。人類は狩猟採取社会、農耕社会、そして産業化(工業化)社会において、人口や経済で「拡大・成長」と「定常化」というサイクルを3回経験した。第3の定常化時代にある今日、これからも「限りない拡大・成長」を追い続けていくのか、地球環境や人生の「有限性」を認め、「地球倫理」という思想ないし世界観を基盤とする社会への転換を図るのか?
九段理江/著 東京都同情塔(新潮社刊 2024)
第170回芥川賞受賞作品。実際には建築されなかったイラクの女性建築家ザハ氏が設計した東京オリンピックのための新国立競技場に向き合って、新しい刑務所「シンパシータワートーキョー」が建てられることに。犯罪者は不幸な境遇の「同情されるべき人々」と再定義され、そこで満ち足りた生活を送ることに。過度に寛容を求める風潮の広がりや、生成AIのカタカナ言葉が浸透した社会の在り方に違和感を覚えながら、不思議な近未来のパラレルワールドを力強く生きていく建築家・牧名沙羅の物語。受賞会見で「生成AIを駆使して書いた」と発言して話題となったが、後日に生成AIで小説は書けないと述懐。
存在のすべてを (朝日新聞出版 2023) 塩田武士/著
神奈川県で約30年前に発生した二児同時誘拐事件、元警察担当の新聞記者門田次郎は定年退職後、旧知の刑事の死をきっかけに事件の真相を求めて再取材を重ねる。その結果、ある写実画家の存在に行き当たる。物語は空白の3年間を求めて、過去と現在が交錯しながら、美術を通じた心理描写を交えてドラマティックに展開する。謎解きの要素のある深い人間ドラマ。
看護学科
塩見和子先生の読書ノート
人類は宇宙のどこまで旅できるのか(東洋経済新報社 2024)レス・ジョンソン/著 吉田三知世/訳
NASAの研究者が、いつの日か人間は太陽以外の恒星を周回する惑星へと子孫を送り出し、そこに住まわせるに違いないとの信念を持ち、その実現を目指す宇宙トラベルガイドです。しかし、身体的、心理的、社会的な課題が多くありそうです。
看護倫理 見ているものが違うから起こること(医学書院 2024)吉田みつ子/著
看護師と患者の体験世界の違いに焦点を当て、看護倫理の問題について考えることができます。具体的な事例を通して、看護師と患者の間で何が起きているのかを理解し、倫理的な看護実践を目指すための糸口となるでしょう。看護学生にとって実践的な指針となる1冊です。
いのちに驚く対話(医学書院 2024)岡田圭/著
ニューヨークでホスピス緩和ケアに従事した著者が、死に直面する人々との対話を通じて、言語や文化を超えたコミュニケーションの重要性を探求しています。具体的な事例を交え、患者との対話の実践的な指南書として、医療従事者にとって貴重な1冊です。
四宮美佐恵先生の読書ノート
気くばりがうまい人のものの言い方(三笠書房 2019)山﨑武也/著
言葉は生き物です。口から出た後は、その言葉を発した人の意図とは異なったはたらきをし、善意が悪く解釈されることもあります。ほんの少しの表現の違いやとっさの一言で、相手を喜ばせることも、不快にさせることもあります。この本では、気遣いの基本から心が伝わる一言、触れてはいけない話題まで、円滑なコミュニケーションのコツが学べます。
「老けない人」の習慣、ぜんぶ集めました。(青春出版社 2023)ホームライフ取材班/編
老けない人が日々心がけている習慣について調査し、食事、メンタル、アンチエイジング、ボディケア、しぐさとふるまい、運動、睡眠など幅広い分野から116項目がピックアップされています。これらの習慣は若々しい体と見た目をキープするのに役立ち、実践することで老化の2大原因である「酸化」「糖化」を抑え、脳が若返りイキイキとするようになります。
仕事も人間関係もうまくいく引きずらない力(三笠書房 2024)枡野俊明/著
「前後裁断」という禅語は、「人生はいまこのときを生きることで完結する。過去、現在、未来はつねにつながっているようで切れている。過ぎ去ったことにこだわらず、未来のことを心配せず、ひたすら現在を見つめ、いまできることを一生懸命やりなさい」と読み解けます。この本では、「引きずらない力」の重要性を説き、どう「前後同断」するかのヒントを禅的な視点から紹介しています。
矢庭さゆり先生の読書ノート
社会的処方 孤立という病を地域のつながりで治す方法(学芸出版社 2020)西智弘/編著
本書は、緩和ケア医である著者が実践する「社会的処方」を中心に展開されます。孤立を治すために、地域のつながりを大切にし、個人の興味や関心に応じた地域のグループを紹介する方法が紹介されています。これは、制度に頼るのではなく、文化として人と人をつなぐ取り組みであり、社会的孤立に対処するためのヒントを与えてくれる本です。
「ありがとう」の教科書 良いことばかりが降りそそぐ感謝の技術30(すばる舎 2022)武田双雲/著
感謝の力について深く考えさせられる本です。感謝の習慣を日常に取り入れることで、人生の幸福度が高まるという考え方が根底にあります。具体的な感謝の技術として、「ありがとう思考」「先出し感謝」「感謝空間に身を置く」など、日常生活で活用できる30の技術が紹介されています。小さなことにも感謝することが、心に響くメッセージとして心に残ります。一度読んでください。
最後は言い方 これだけでチームが活きる究極のスキル(東洋経済新報社 2024)L.デビッド・マルケ/著 花塚恵/訳
組織でのコミュニケーションにおいて、「言い方」がいかに重要かを示した本です。上司が指示を出す際、単に指示するのではなく、部下と対話を重ねることで、組織内の心理的安全性を高め、より良い風土を築くことができるというアプローチが紹介されています。「私の意見はこうだ」を「みんなはどう思う?」に変えることで、意見の交換と相互尊重を促進できるという洞察に満ちた1冊です。
金山時恵先生の読書ノート
東京保健師ものがたり(東京法規出版 2023)和泉慶子/著
この本の著者は保健師です。望まない妊娠、ネグレクト、独居高齢者、難病等の実事例を通して保健師の仕事の難しさと大切さ、地域保健活動を知ることができます。多職種連携を図りながらその人の健康と生活を守るという保健師の取りくみが書かれています。情景を描きながら読んでみてください。
となりのナースエイド(KADOKAWA/角川文庫 2023)知念実希人/著
この本の著者は現役の医師であり、小説家でもあります。新人のナースエイドは、外科医師ですが、姉が半年前に死亡した事件を契機に医師ではなくナースエイドとして働きます。姉の死の真相を追うという医療ミステリーです。医療現場における人間関係と倫理、個人の成長と再生をテーマとしており、医療の本質や人間の絆の重要性を描いています。
わたしの猫、永遠(潮文庫 2024)小手鞠るい/著
この本の著者は、岡山県備前市の出身の小説家、詩人、エッセイストです。
京都の書店で出会った真美絵とケイシーの恋の物語です。ケイシーがアメリカに帰るため真美絵が別れを決意した日、運命の猫が現れます。力強くも優しく、儚く美しい「永遠」をテーマに描かれています。愛と運命、幸福が交錯する物語です。
原田信之先生の読書ノート
岡山県新見の伝説 玄賓僧都・後醍醐天皇・金売吉次・人柱(法藏館 2024)原田信之/著
古い歴史を持つ新見には、興味深い伝説が多く伝えられている。本書では、全国的に知られる「玄賓僧都(げんぴんそうず)」「後醍醐天皇」「金売吉次(かねうりきちじ)」「人柱」について、実際に新見各地で語られて来た伝説を読み味わいながら伝説探究の醍醐味を楽しむことができる。また、「序章 新見の伝説の魅力と意味」では、古代、中古、中世、近世、近代にわたる新見の主要な歴史と文化について簡略にまとめてあり、手早く新見の歴史や文化を知ることができるように工夫されている。
火難の首里城 大龍柱と琉球伝統文化の継承(インパクト出版会 2024)狩俣恵一・田場裕規/編著
琉球王国の王城であった首里城は1992年に再建されたが、2019年に焼失し、現在再建工事が進んでいる。最近、首里城正殿前に立つ大龍柱が「相対向き」であったか「正面向き」であったかという問題が注目されている。1992年には相対向きで再建された(古絵図に描かれた向きが相対であることを主たる根拠とする)。一方の正面向き説は、古絵図は実測に基づく厳密なものではないこと、1877年撮影の古写真が正面向きであること等々説得力のある反論を多数提示している。本書は大龍柱の向き問題に加えて、琉球伝統文化継承の問題も学ぶことができる興味深い内容となっている。
口語訳 日本霊異記(KADOKAWA 2024)三浦佑之/著
日本最古の仏教説話集として知られている『日本霊異記』は、奈良時代後期~平安時代初期に活躍した奈良薬師寺の景戒(きょうかい)という僧によって822年(弘仁13)頃編纂された。仙人になった人の話、閻魔王の話、カニに助けられた人の話、牛になった人の話、不思議なドクロの話、生き返った人の話、動物になった人の話など、奇妙で面白い説話が116話も集められている。この度の口語訳は、『口語訳 古事記』で著名な作者による新訳で、大変読みやすい。
木下香織先生の読書ノート
「いつもと違う」と感じ、思わず行う行為は実践の知なのか(日本看護協会出版会 2020)大谷則子/著
学術論文を読み物に再構成されたシリーズからご紹介します。経験の積み重ねによって形成される「実践の知」を、著者が臨床現場で参加観察し看護師と共通した感覚をもちながら明らかにしています。これから臨地実習を控えている学生の皆さんにもとても理解しやすい内容となっています。臨床場面の描写に沿って一緒に看護実践しているような感覚をもつことができると思います。
看護師の「痛み」を伴う経験とその意味(日本看護協会出版会 2022)上田理恵/著
学術論文を読み物に再構成されたシリーズからご紹介します。看護師の「痛み」の多くが患者との別れ-患者の死-を通した経験であり、臨床現場における看護の役割や責任、負担の大きさを表しています。一方で、その痛みは、看護師が臨床の場で成長を続ける「グロウイング・ペイン」であることを示しています。臨床実践と向き合う貴重な1冊です。
これからの時代を生きるあなたへ(主婦の友社 2022)上野千鶴子/著
NHK「最後の講義」を完全書籍化した1冊。「おひとりさま」シリーズでもおなじみですが、社会学者として著された書籍は敷居が高く感じる著者です。上野氏の研究者としての足跡を時代の変化に応じて、話し言葉で綴られているので、敷居がグーンと下がります。上野氏の筋が通った姿勢と変化に対する柔軟な向き合い方の両面を感じ、刺激をもらった1冊です。
栗本一美先生の読書ノート
弱さの情報公開 つなぐ (くんぷる 2023)向谷地生良・吉田知那美・内田梓・向谷地宣明・松本俊彦・繁田雅弘・内門大丈・芦田彩・最首悟・辻信一・ぺてるの家/著
本書は、精神障碍者を経験した人たちのコミュニティとしてある「べてるの家」の理事長が書かれた本です。べてるの家を利用している当事者の方の語りやオリンピック選手の吉田知那美氏と著者の対談、薬物依存症についての「Addictionの対義語はConnection」という考え方についてなど、色々な人が「弱さの情報公開」をキーワードに多岐にわたったテーマで語った内容が綴られています。「弱さとは?強さとは?」「つながりとは?」を考えさせられます。人と人とのつながりを大切にしながらケア領域で仕事をする人へ送られているにジェームズ・イェンのメッセージは印象に残ります。
そんなとき隣に詩がいます(大和書房 2022)谷川俊太郎・鴻上尚史/著
絵本でよく知られている作家だと思いますが、詩集も有名です。
本書は、鴻上さんの解説もあり、詩にあまり関心がない方でも手に取りやすいです。本書の中で、「詩は誰のものでもありうる(中略)、詩は微風となって人々の間をめぐる」と書かれています。詩は、誰のものでもあって、私たちの想いや悩みに、生活の中に、いつでも寄り添ったり、ヒントを与えてくれたり、感動を与えてくれたりすると思っています。本書には素敵な詩がたくさんあり、きっと皆さんの心にも響く詩と出会えると思います。谷川俊太郎さんの追悼を込めてご紹介いたします。
フキサチーフ(KADOKAWA 2024)松下洸平/著
「コロナ禍のある日の僕」を主語におき、松下氏の日々起きていることや最近感じたことなどが書かれた初のエッセイ集です。本のタイトルの「フキサチーフ」とは、完成した作品が色褪せたり擦れて剥げてしまわないように画家が最後に絵に吹きつける定着液のことです。日々の景色や出会いを書くことで描写し、日常の定着剤になればと思って付けたタイトルだそうです。カバー・表紙・中面イラストも本人が手掛けています。
本書を読むと松下氏の素直さや感性の豊かさ、何事にも一生懸命に取り組んでいる姿勢などを感じます。そして、読み終えた時に夢を見続けることや自分自身を信じることなど、何か勇気づけられ、心がホッと温かくなる感じを受けます。
礒本暁子先生の読書ノート
子どもが本当に思っていること 児童精神科医が「子育てが不安なお母さん」に伝えたい(日本実業出版社 2024)精神科医さわ/著
見えないこころを大切にするにはどうしたらよいか、そのヒントがたくさん詰まっています。母親に限らず子どもと接する機会のあるすべての方に手に取っていただけたらと思う1冊です。
タッポーチョ 太平洋の奇跡 「敵ながら天晴」玉砕の島サイパンで本当にあった感動の物語(祥伝社黄金文庫 2011)ドン・ジョーンズ/著 中村定/訳
第二次世界大戦最中のサイパン島で、47名の日本兵が民間人とともに、日本からの援軍を待ちながら、米兵17000人を相手に戦いを続けた512日間の物語です。史実を知り、今の日本の平和を考える機会を与えてくれるそんな書籍です。
スピノザの診察室(水鈴社 2023)夏川草介/著
ひとりひとりの人生を尊重し、医療者としてできることを考えて、寄り添いながら自分らしく生きていくことを応援する。手だてが限られているときにも、できることを考えてともにあることを実践する。そんなご縁をつないでいける医療がすべての地域にあってほしいと願いながら読んだ1冊です。
井上真一郎先生の読書ノート
十角館の殺人(講談社文庫 2007)綾辻行人/著
十角形の奇妙な館が建つ孤島・角島を、大学ミステリ研の7人が訪れた。館を建てた建築家・中村青司は、半年前に炎上した青屋敷で焼死したという。やがて学生たちを襲う連続殺人。ミステリ史上最大級の、驚愕の結末が読者を待ち受ける。私は古今東西の推理小説を読み漁ってきましたが、これを超える作品はないと思います!
「叱れば人は育つ」は幻想(PHP新書 2024)村中直人/著
脳・神経科学などの知見から、著者は「叱ることには効果がない」と語る。叱られると人の脳は「防御モード」に入り、ひとまず危機から逃避するため行動を改める。叱った人はそれを見て、「ほら、やっぱり人は叱らないと変わらないよね」と思ってしまうが、叱られた当人はとりあえずその場の行動を変えただけで、学びや成長を得たわけではない。「怒るのはよくない、叱ることが大切」と思っていた方には、目からウロコですよ!
バナナの魅力を100文字で伝えてください 誰でも身につく36の伝わる法則(かんき出版 2021)柿内尚文/著
「ある人気の八百屋さん。このお店では普通はあまり伝えない『あること』をお客さんに伝えているそうです。『あること』とはいったい何でしょうか?」この答えが知りたい方は、ぜひ本書をご一読下さい!
矢嶋裕樹先生の読書ノート
夢を叶えるために脳はある(講談社 2024)池谷裕二/著
本書は『進化しすぎた脳』『純な脳、複雑な「私」』に続く高校生脳講義シリーズ三部作の完結編であり、最先端の脳研究の知見を平易な語り口で解説する1冊。特設サイトには動画や音声が公開されており、本書の内容をより深く理解する助けとなる。また、脳の働きを通じて、私たちの解釈がどれほど限定的でバイアスに満ちているかを明らかにし、新しい視点を受け入れる「準備された心」の重要性についても触れている。人間や科学の本質に興味をもつ方にお薦めしたい。
インプット・ルーティン 天才はいない。天才になる習慣があるだけだ。(ダイヤモンド社 2024)菅付雅信/著
本書は、「天才」と称されるトップクリエイターたちの知的ルーティンを解説する1冊。著者は言う。彼らは日常的に、読書、映画、音楽、アート、旅、人との交流などを通じてネタのストックを増やし、その膨大なネタを頭の中で掛け合わせ、試行錯誤を重ねることで驚くべき成果を生み出している。インプットの際は、「自分を賢くしないものを、自分の目と耳と口に入れない」ことを意識し、プロが評価するものや賛否両論が分かれるものを意識的に選んでいる。彼らの姿勢や習慣から学ぶことは多い。
なぜEBMは神格化されたのか 誰も教えなかったエビデンスに基づく医学の歴史(ライフサイエンス出版 2024)大脇幸志郎/著
本書は、エビデンスに基づく医学(EBM)の現状を鋭く批判し、その神格化がもたらす医学の歪みを浮き彫りにする。著者は、ファインスタイン、サケット、コクランといったEBMを支えた主要人物の功績と葛藤を描きながら、EBMが医学を「より科学的にした」という素朴な信念が実態と大きくかけ離れていると指摘する。さらに、EBMを模倣して他分野を科学的にしようとする試みが、過度な単純化や形式化を招き、現場の柔軟性や批判的思考が損なわれる危険性について論じる。医療従事者のみならず、科学や政策に関心をもつ方に薦めたい1冊。
上山和子先生の読書ノート
孤城春たり(徳間書店 2024)澤田瞳子/著
本書は、備中松山藩の財政をわずか7年で立て直した改革を記している。松山藩の西に位置する新見藩とは、人の行き来が盛んであった。新見藩のお抱え儒者・丸川松陰の私塾に入門した山田安五郎方谷は、学問を知識だけでなく、人生をひいてはこの世の中をよくする手段を考えている。つまり人を思いやり、他者を信じることこそが学問を究めることであるとしている。方谷は、常に目に見える分かりやすい結果ではなく、それを支える人を重んじた。
幕末における備中松山藩での山田方谷の献策は、人生の考え方を示唆してくれる書です。
ボクと、正義と、アンパンマン なんのために生まれて、なにをして生きるのか(PHP研究所 2022)やなせたかし/著
アンパンマンは、幼児から小学校低学年にかけて人気がある。アンパンマンは、メルヘンワールドでパンの妖精みたいなもので、善のこころのアンパンマン、悪のこころのバイキンマンの善悪のバランスがあってこそ、抑制力が働くことを説いている。また、絶えずバランス感覚をもった人間であることは、人として生きていく上での必要性として説いている。そして、人が育っていく過程として、傷つくことを恐れず、冒険に立ち向うことが成長につながることを示している。
この本は、子育てにおける大人のありようを反映させている書です。
「静かな人」の戦略書 騒がしすぎるこの世界で内向型が静かな力を発揮する法(ダイヤモンド社 2022)ジル・チャン/著 神崎朗子/訳
本書は、「口数は少なくても、誰もが耳を傾ける」ような自分の意見をきちんと伝えるための実践書である。自分らしさや自分の強みを見つけ磨きをかけていくために、自分の性質を生かして活躍する方法や、さまざまなカルチャーに合わせて、コミュニケーションの取り方を柔軟に切り替える方法を学ぶことを勧めている。
静かな人は、自分の強みを見つけ、得意分野や特徴を生かし、自分の長所を全面に出して貢献すれば、チームにとって不可欠な存在になり、道を切り拓いていく存在でもある。
つまり、聞く力、気配り、謙虚、観察眼などを持ち合わせることで、人間関係に必要な信頼を得ていることを語っている書です。
山本智恵子先生の読書ノート
透析を止めた日(講談社 2024)堀川惠子/著
透析患者の闘病生活を書いたノンフィクション。看護学科の学生は臨地実習で透析を受ける患者を受け持たせてもらうこともあり、私もなんとなくわかっているつもりになっていましたが、透析患者の将来への不安、家族の思い、国の制度など今まで考えてこなかったことが書かれてあります。透析を受ける患者や家族の実態が丁寧に書いてあり、勉強にもなる本です。
マンガでよくわかる!発達障害の人が見ている世界(アスコム 2024)岩瀬利郎/監修
発達障害のことが、マンガだからこそイメージができ、わかりやすく、理解できる本です。発達障害、その特性が理解できれば、コミュニケーションの方法も変わってくるはず。自分の見ている世界と違う世界があり、その人の立場で考えたら…と考えを改めるきっかけにもなります。
アドラーに学ぶ人はなぜ働くのか(KKベストセラーズ 2024)岸見一郎/著
何のために働くのかを考えてみようと手にとった本です。お金のため…答えはそうではありませんでした。読んでいるうちに今の仕事に向かう気持ちが変わってきました。『貢献感』がキーワードでした。何のために働くのかの意味を考えるきっかけになるはずです。
真壁五月先生の読書ノート
看護における概念開発 基礎・方法・応用(医学書院 2023)Beth L.Rodgers・Kathleen A.Knafl/著 近藤麻理・片田範子/監訳
概念とは何かについての哲学的基盤から、概念開発とはどういうことかが記され、さまざまな概念分析の方法も紹介されています。原著は30年以上前からありましたが、やっと日本語翻訳版が出ました。概念の定義は普遍的なものと考えていましたが、変化するものである、というRodgersの考え方も示されており、興味深い1冊です。
心とからだの調和を生むケア 看護に使う28の補助的/代替的療法(へるす出版 1999)Mariah Snyder・Ruth indquist/編 野島良子・冨川孝子/監訳
看護独自の介入方法について、理論と実践方法が記載されています。古い本ではありますが、対症療法ではなく、対象者の心・身体・精神の癒しにつながる「看護」の基本が学べます。医療の現場では疾患や症状に着目したケアを重視するため、看護独自のケアは意識せず行っていることがあります。そのような実践に、「看護ケア」としての輪郭を与えてくれる1冊です。何気ないケアを意図的な「看護ケア」として行うことの大切さを教えてくれます。
夢をかなえるゾウ4 ガネーシャと死神(文響社 2023)水野敬也/著 https://bunkyosha.com/books/9784866513515(文響社HP)
医師による突然の余命宣告・・・、途方に暮れる主人公のもとにガネーシャ登場!!いつものように主人公に対していくつもの課題(?)を与えるガネーシャ!今回は「死」と「生」がテーマであり、考えさせられることが多くありました。人生の最後に後悔しないよう、今現在をどう生きるか・・・関西弁を操る、一見ハチャメチャな神様は、今回も大切なことを教えてくれます。
赤澤真旗子先生の読書ノート
心の傷を癒すということ(作品社 1996)安克昌/著
2025年1月で阪神・淡路大震災から30年目を迎えます。私自身も被災し、その後は保健室で児童生徒の心のケアに携わってきました。本書は、心のケア元年と呼ばれた阪神・淡路大震災で自身も被災しながら、避難所等での精神医療に従事し多くの実績を残した精神科医の記録です。心に傷を負った人たちにとって何が最も大切なのか、どんなサポートが必要なのか、『心のケア』の大切さを私たちに問いかけてくれます。
生き心地の良い町 この自殺率の低さには理由(わけ)がある(講談社 2013)岡檀/著
全国でも極めて自殺率の低い徳島県南部の海部町において4年間にわたり現地調査を行い『いろんな人がいてもよい、いろんな人がいたほうがよいという価値観』『人物本位主義をつらぬく』『どうせ自分なんて、と考えない』『「病」は市に出せ』『ゆるやかにつながる』という海部町において自殺率を下げている5つの要因を明らかにしています。「生き心地が良い」とはどのようなものかを考えてみるきっかけになる1冊です。
その幸運は偶然ではないんです! 夢の仕事をつかむ心の練習問題(ダイヤモンド社 2005)J.D.クランボルツ・A.S.レヴィン/著 花田光世・宮地夕紀子/訳
『計画的偶発性理論』をもとに実例をあげて書かれています。『自分のキャリアは自分自身で意図的に積み上げる』という考え方は変化の激しい時代になじまない。『キャリアの8割が予期しない出来事や偶然の出会いによって決定される』この時代に、予期しない出来事をただ待つだけでなく、積極的に行動したり、周囲の出来事に神経を研ぎ澄ませたりして、偶然を意図的・計画的にステップアップの機会へと変えていくべきという考え方です。道に迷った時、手に取っていただきたい1冊です。
安田陽子先生の読書ノート
わかったつもり 読解力がつかない本当の原因(光文社新書 2005)西林克彦/著
表面的な理解にとどまらず、深い知識を身につけることが重要です。「わかったつもり」にならないためには、批判的思考を養い、学んだことを実際の問題に適用できるよう意識的に取り組むことが求められます。また、疑問を持ち続け、他者との議論を通じて理解を深めることで知識が身につきます。さらに、定期的に復習し、自己の理解を確認することで学びを確かなものにできます。学びの姿勢とその重要性について学べる1冊だと思います。
新版 思考の整理学(筑摩書房 2024)外山滋比呂/著
授業や研究で得た知識を効率的にまとめるために、情報の分類や整理の技術は非常に有用です。本書では、重要なポイントを的確に抽出し、深い理解の促進につながる方法やアイデアを視覚的に整理することで、プレゼンテーションやレポートを効果的に作成する方法などヒントを得られるのではないでしょうか。
「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか?(日経BP 2024)今井むつみ/著
繰り返し伝えることの重要性を強調しつつ相手の視点に立ったアプローチの提案をしています。言葉の選び方や具体例を活用することでシンプルに伝える技術が身につき、授業や指導において効果的に活用できるのではないでしょうか。情報の伝達方法を見直し、相手の理解を得るための工夫が学べる貴重な本だと思います。
川下菜穂子先生の読書ノート
昨夜のカレー、明日のパン(河出書房新社 2013)木皿泉/著
主人公は7年前に夫の一樹と死別し、ギフと呼ぶ義父の連太郎と二人暮らしをしている。同僚の岩井からプロポーズされたが、そのプロポーズを受けられないくらい夫のことを忘れられない。家の向かいには夫の幼馴染で元CAの娘が住んでおり、一樹の死を境に笑顔になれなくなり、CAを辞めてしまった。一樹の死が奇妙な絆を結んでいく…一人の死が様々な人に影響し、死を受け止めるにはそれぞれの時間が必要であることに気づきました。
くもをさがす(河出書房新社 2023)西加奈子/著
2021年コロナ禍の最中、滞在先のカナダで浸潤性乳管がんを宣告された著者が、乳がん発覚から治療を終えるまでの約8 ヶ月間を克明に描いたノンフィクション作品。言葉が思うように伝わらない、医療体制も違う土地での闘病。がんの治療を別角度から見た気分になりました。看護者としての立ち位置を考える機会になりました。
神様のカルテ3(小学館文庫 2014)夏川草介/著
信州にある「24時間365日対応」の本庄病院で働く主人公の内科医・栗原一止の前に、新任としてベテラン医師・小幡奈美先生がやってきた。彼女の医師としてのゆるがぬ姿を見た一止は、新たな道を行く決意をする…。人生の岐路は、どこにあるのかわからない。慣れた場所で留まることも良いが、勇気を出して、一歩踏み出すことも必要な時もある。背中を少し押してもらった気がしました。
浅原佳紀先生の読書ノート
赤と青のガウン オックスフォード留学記(PHP研究所 2015)彬子女王/著
大正天皇のひ孫にあたる、三笠宮家の彬子女王殿下が、女性皇族としては初めて海外で博士号を取得されたエピソードがつづられたものです。学習院大学卒業後にイギリスのオックスフォード大学大学院で日本美術についての論文を執筆されて博士号を取得するまでの経緯や、皇族ならではの海外生活での苦労話などがユーモアを交えながら描かれています。僭越ながら同じ研究者として、見習わなければならない部分が多かったです。
新装版 魔女の宅急便(KADOKAWA/角川文庫 2015)角野栄子/著
いわずと知れたジブリ映画「魔女の宅急便」の原作ともいえる作品です。映画とはちょっと雰囲気が違い、どちらかというと「児童書」という感じですし、構成も短いエピソードがいくつも描かれている「短編集」という感じがしますが、主人公のキキがいろんな人と出会いながら成長していく過程は映画と同じで、とても楽しくて勇気づけられます。
精神科アウトリーチ 心の病に寄り添い、地域で暮らす(星和書店 2024)近江翼/著
人が精神的に悩みを抱えた場合、精神科や心療内科で治療すると症状が軽減することが多いですが、中には様々な理由によって医療につながれない(つながりたくない)人もいます。そのような方々に対して、病院などに来てもらうのではなく、支援者側から赴いて手を差し伸べ、信頼関係を構築しながら可能な範囲で医療や福祉の提供を試みる、それが精神科アウトリーチです。新見市でも近々精神科アウトリーチが始まる予定です。
丸山純子先生の読書ノート
おいしく食べ続けたい! KTBCとお手軽介護食 すべての人に口から食べる幸せを!(口から食べる幸せを守る会 2024)小山珠美・髙橋瑞保/監修・編集
「口から食べることは生命をはぐくむ根幹であり、幸せなひとときを織りなす人生の要。」小山先生がいつも口にされている言葉です。本書には、すべての人に口から食べる幸せをもたらすために、身体的な知識や食支援に必要な包括的評価・支援ツールのKTバランスチャート、安全に食べるための食事介助の実際などが、イラストや写真付きで分かりやすくまとめてあります。どうぞ学生のうちから手に取り、実践してみてください。
医療・ケア従事者のための哲学・倫理学・死生学(医学書院 2022)清水哲郎/著
臨床現場では、常に「どうしたらよいか」を判断する場面に出会います。「適切な判断」「的確な実行」といっても程度はさまざまで、ケアする営みに必要な意志の働き、ケアする姿勢のブラッシュアップのための省察も重要となります。本書では、知的に省みる際の共通言語からまずはほぐし、医療・ケア活動の倫理を読み解いていきます。「知っている」と「分かっている」とは同じではないこと、ジレンマ関係にある両立しない選択・行動の構造。人間の生と死、意思決定支援のすべての過程に携わる私達にとって、知っておくべき1冊です。
重松清/著 きみの町で(新潮文庫刊 2019)
本書はフランスで創刊された「こども哲学」シリーズの日本語版創刊にあたって、作者が各巻のテーマに沿って執筆した短編集です。それぞれ、手に取るように「あの町」での情景や感情が伝わってきて、子どもならではのほろ苦さも思い起こします。少年や少女を通してみる日常の中での東日本大震災との関連もあり、今、読み返してみても大きく心が揺さぶられます。四季折々の描写の美しさも感じる1冊です。
山本裕子先生の読書ノート
休養学 あなたを疲れから救う(東洋経済新報社 2024)片野秀樹/著
「休むこと=寝ることではありません」というフレーズに眼を引かれ手にした1冊です。寝れば疲れが取れる!と思いながらも実際には疲れはさほど取れず…という方は多くいらっしゃると思います。私もその一人です。寝れば元気になると幼少期から思っていましたが、疲労の反対語は「活力」。疲労に立ち向かうためには寝るだけではダメだと気づきました。活力は自分にとって心地良い少しの負荷をかけること。私も生活の中に活力を入れて上手に休養に入れるようにしていこうと思えた1冊でした。
頭が冴える!毎日が充実する!スゴイ早起き(株式会社すばる舎 2019) 塚本亮/著
「早起きが良い」というのは、よく言われていて私もよく耳にします。そして、早起きをしようと一時は頑張りますが、できないの繰り返しで、再チャレンジという気持ちでこの本を手に取りました。早起きが「できない」「続かない」の原因は、嫌々していたからだとわかりました!早起きをする目的、その目的が自分のやりたいことになっているということが大きなポイントだそうです!学生の皆さんに特にお薦めしたい1冊です。復習は疲れ切った「夜」の脳ではなく、「朝」の脳だと良いそうですよ。
喜ばれる人になりなさい(株式会社すばる舎 2021)永松茂久/著
この本は、著者が幼い頃に母親から言われた「喜ばれる人になりなさい」という言葉を胸に著者が夢に向かっていくというものでした。「喜ばれる人になりなさい」と聞くと、人の顔色を伺い周りに合わせるというとても窮屈な印象を受けますが、自分の信念は持ちつつ、人が求める形を考え与えるという内容でした。著者のお母様から子育ての本質も教えてもらったように思います。著者のお母さんから著者へ、著者から私たち読者へとみんなが「喜ばれる人」になるリレーができそうな本でした。
安藤 亮先生の読書ノート
宮島未奈/著 成瀬は天下を取りにいく(新潮社刊 2023)
ある日、ラジオで本書の紹介を著者が行っているのを聴き、この本を知りました。主人公の成瀬あかりがどのような人物なのか、私は何となくイメージがあって読みましたが、特に事前に情報を入れずに読んでいく方が楽しめる作品ではないかと思いました。強いて言えば、滋賀県や競技かるたについて少し知っていると、更に楽しめるかもしれません。
スピノザの診察室(水鈴社 2023)夏川草介/著
京都にある小さな病院に勤務する内科医が主人公です。内科医として終末期にある患者や認知症の患者とその家族とのかかわりの場面が中心ですが、節々に哲学家の名前が出てくるとともに、死生観やエンドオブライフケアの在り方について考えさせられる内容でした。京都の地名や銘菓などもたびたび登場することや、個性豊かな医師の同僚との掛け合いも面白いのではないかと思います。
永瀬清子詩集(岩波文庫 2023)永瀬清子/著 谷川俊太郎/選
本書の選者であり、著名な詩人である谷川俊太郎氏が亡くなったことをきっかけに、赤磐市出身である詩人の永瀬清子氏を知りました。これまで詩集というものをあまり読んだことが無かったのですが、どの詩も作者の率直な心情や、その時の情景が綴られており、そこには時代背景も垣間見ることができます。そして、後半にある谷川俊太郎氏との対談の記録も興味深い内容であり、気軽に手に取って読んでもらえればと思います。
宮武一江先生の読書ノート
大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをした(ダイヤモンド社 2021)クルベウ/著 藤田麗子/訳
悲しいとき、心が疲れたときに癒しをもらえる、つらいときにつらいと言えないことを代弁してくれているかのような1冊です。誰が読んでも共感できる部分はあると思います。人気イラストレーターの福田利之氏のイラストにも癒されます。
ナミヤ雑貨店の奇蹟(KADOKAWA 2014)東野圭吾/著
あらゆる悩み相談に乗る不思議な雑貨店。過去と現在を超えて手紙交換がはじまる・・・。ベストセラー本なので、読まれた方も多いのではないでしょうか。映画化もされ、昨年逝去された西田敏行さんがナミヤ雑貨店の店主として出演された作品です。心温まる映画となっており、本と映画の両方で楽しめるのではないでしょうか。
あんなに あんなに(ポプラ社 2021)ヨシタケシンスケ/著
ヨシタケシンスケさんの世界観で、クスッと笑えて、それでいて胸が熱くなるような・・・。あっというまに大きく成長する子供のことを考えると自然と涙があふれる優しい絵本です。子供が成人する頃に、プレゼントしたい1冊です。
井上弘子先生の読書ノート
家庭の防災計画(徳間書店 2023)高橋智也/著
令和6年能登半島地震から1年が経過しましたが、再生への道のりは長いとされています。自然災害はいつ発生するかわかりません。「発災後」にできることは限られており、「発災前」の対策が重要です。自助として、水や食品の準備はすぐに思いつきますが、命を守るためには、家の耐震基準や家具の配置を見直すことも必要です。災害に対して「避ける」「耐える」「逃げる」「しのぐ」方法が分かりやすく述べられている1冊です。
組織行動論の考え方・使い方(有斐閣 2023)服部泰宏/著
「組織行動論」という言葉は聞きなれないかもしれませんが、この本は経営学のレリバンスを問いつつ、組織行動論の主な理論や測定尺度を紹介しています。すらすらと読みやすい本ではありませんが、ほとんどの人が社会人になると会社や病院、学校などの組織に所属します。組織の一員として自分の成果ややりがいを感じるための行動とは何かを、理論や研究結果を行動心理の視点から解説してくれています。
びょうきのほん①~③(福音館書店 1989)山田真/文 柳生弦一郎/絵
小学校中学年からが対象の絵本ですが、大人が見ても「なるほど」と勉強になります。文章は多めですが、心臓の機能や腸の働きなど、いきなり病気の説明から入らずに、体の仕組みから教えてくれるので、病気と繋がりやすいです。子どもがかかりやすいおたふくかぜや水疱瘡から、生活習慣病の糖尿病まで幅広く病気が紹介されています。専門用語については、どのページに戻ると良いか補足してくれていて、すごく親切でした。
矢野英樹先生の読書ノート
社会学講義 (ちくま新書 2016) 橋爪大三郎・大澤真幸・若林幹夫・吉見俊哉・野田潤・佐藤郁/著
『社会学とは何か?』に関心があり、また看護における研究に役立てたいという思いでこの本を手に取りました。人間と人間の関係のあり方は多様で、社会学はそうした多様な関係のもっとも一般的なあり方を研究しようとする学問です(本書より)。本書は、看護学を研究するうえで重要な示唆を与えてくれます。興味のある方は是非ご一読ください。
いとうせいこう/著 ボタニカル・ライフ 植物生活 (新潮文庫刊 2004)
サボテンや多肉植物を窓際で育てる植物愛好家です。大切に育ててるつもりですが、枯らしてしまうこともあります。この本は、著者が花や観葉植物に愛情をもって育て、観察していく記録です。すこし古いエッセイではありますが、植物との生活を通して、私たちの日常の大切にしたいことを考えさせられる1冊です。第15回講談社エッセイ賞。
安藤忠雄/著 建築家安藤忠雄(新潮社刊 2008)
独学で建築家を目指した著者は、自分の手で仕事の道を切り開いてきた方です。著者のプロフェッショナルな考え方に触れ、「仕事とは何か、働くとは何か」を考えさせられる1冊です。興味のある方は是非ご一読ください。
髙尾 緑先生の読書ノート
ドイツ人のすごい働き方 日本の3倍休んで成果は1.5倍の秘密(株式会社すばる舎 2024)西村栄基/著
ドイツでは、フレックス制や長期休暇の取り方など、ドイツの企業文化とその背景があり、また、午前中の集中作業時間や会議の効率化など、具体的な仕事術が紹介されています。さらに、リフレッシュのための休暇の取り方や、仕事とプライベートのバランスの取り方といった、ドイツ人は、無駄を省き、効率的に働くことで、短い時間でも高い成果を出しており、ドイツ式の働き方を日本でも実践できるようにするためのヒントが満載です。
あの小さなお店が儲かり続ける理由 リピート率90%超!(クロスメディア・パブリッシング 2024)中谷嘉孝/著
ヘアサロン業界で驚異のリピート率90%超を達成し、その成功の裏には、単なる集客ではなく、顧客にとっての価値を提供することの重要性などの、常識を打ち破る独自のアプローチがあると述べています。この本は、常識にとらわれず、顧客満足度を高めることは、教育業界にも通じるものがあると思います。
“ほんとうの感情”をとり戻す五感セラピー 自然に心と体が満たされる50のワーク(大和出版 2022)糀本成美/著
この本は、ストレスケアや自己成長を目指す人々に向けて書かれています。五感セラピーの基本である、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚を活用し、日常生活の中で感情を豊かにする方法として、例えば「部屋の照明を徐々に暗くする」「耳を塞いだ状態でハミングする」など、簡単に取り入れられる方法や、ストレスケアによる心身の健康を保つためのアプローチなどにより、感じる力を育てることで、幸せに満ちた日々を送るためのヒントが詰まっています。
西村美紗希先生の読書ノート
その「一言」が子どもの脳をダメにする(SB新書 2023)成田奈緒子・上岡勇二/著
脳科学と教育の視点から、子どもの脳に与える言葉の影響について解説された1冊。子どもに対してついついかけてしまうネガティブな言葉が脳に悪影響を与えることが示され、自己肯定感を育てる具体的な言葉や接し方などを教えてくれます。この1冊は、子育てなどや子どもと接する機会に役立つのではないだろうか。
日々臆測(光村図書出版 2022)ヨシタケシンスケ/著
ヨシタケさんの作品は、「クスッ」とするものが多く、疲れや気持ちをほどいてくれます。この1冊も「クスッ」ときたり、「なるほど」となったり、「なんだそれ」となるようなバラエティーに富んだ内容(著者も前書きで書かれております)で、ヨシタケさんの世界観が垣間見れる作品です。
はたらく細胞(講談社 2015~2021)清水茜/著
今冬映画化されたコミック。子どもが読みたくて、借りてきた漫画本。子どもで白血球、赤血球など体内細胞の働きを理解できる内容になっています。看護学生にとっても学んだことが擬人化してイメージできるため、知識を吸収・定着できるのではないでしょうか。
浅井美穂先生の読書ノート
生きがいについて(みすず書房 2004)神谷美恵子/著
岡山県のハンセン病療養施設・長島愛生園で精神科医として働いた神谷美恵子さんが執筆された著書です。苦しみや悲しみの中にある人々の希望や尊厳に着目され、「生きる意味」を突き付けられます。 初版は1966年に書かれた古い本ですが、今でも多く人を力づける永遠の名著だと思います。
366日文学の名言(366日の教養シリーズ)(三才ブックス 2021)頭木弘樹・品川亮/選・文
1月1日から12月31日まで毎日1名言、さまざまな文学作品の1節が紹介されています。悩んだときやちょっと気分を変えたいとき、思いもよらなかった角度からアドバイスをもらえることでしょう。日めくりカレンダーのように毎日1ページずつ読むもよし。自分や家族や好きな人の誕生日の作品を読んでみるもよし。何かに行き詰ったとき占い師に相談するつもりで目をつぶったまま開いたページのお言葉を噛み締めるもよし。
よみがえる変態(文春文庫 2019)星野源/著
音楽家・俳優として人気を誇る星野源さんは、2012年にくも膜下出血という大病を経験されました。この本は星野さんが雑誌で連載されていたエッセイ集ですが、後半の「生きる」という章以降は、星野さんの闘病生活が記録された手記となっています。ICUでの様子の描写が素晴らしく、ユーモアなども織り交ぜながら書かれた大変読みやすい文章です。世の中に数ある闘病記の中でも私が特にオススメしたい闘病記です。
全世代型地域包括ケア研究センター 認定看護師教育課程
飯田尚美先生の読書ノート
オールカラーまるごと図解 摂食嚥下ケア(照林社 2017)青山寿昭/編著
「食べること」は人生の質を大きく左右する基本的な行為であり、摂食嚥下障害ケアは人々の健康や生活の質に直結する重要な分野です。本書では、小児、慢性疾患、がん術後、認知症などのアプローチ方法が分かりやすく解説されています。また、豊富なイラストや写真が知識を視覚的に補完し、初心者でも理解しやすい構成となっています。日々のケアや実習にも役立つ実践的なガイドブックです。
まとめないACP 整わない現場、予測しきれない死(医学書院 2021)宮子あずさ/著
ACP(アドバンス・ケア・プランニング)は、人生の最終段階の医療やケアについて、本人が家族や医療チームと繰り返し話し合うプロセスです。本書は「ACPが推進される中で、積極的治療を選ばず亡くなることが推奨されるのは避けたい」という危機感が執筆の背景にあったといいます。読む際には、「もし自分だったら…」と考えながら、ACPの本来の意義について思いを巡らせてみてはいかがでしょうか。
スイミー ちいさなかしこいさかなのはなし(好学社 1979)レオ・レオニ/作 谷川俊太郎/訳
絵本『スイミー』は、小学校低学年向け国語教材として親しまれており、小さな黒い魚スイミーが仲間と知恵を出し危機を乗り越える物語です。しかし、大人になり作者の背景を知ると、作品に深い哲学的メッセージが込められていることに気付かされます。そして、谷川俊太郎さんの美しい訳が、物語の奥深さをさらに引き立てています。子どもだけでなく、大人にも読み直してほしい1冊です。
健康康保育学科
斎藤健司先生の読書ノート
宗教の起源 私たちにはなぜ〈神〉が必要だったのか(白揚社 2023)ロビン・ダンバー/著 小田哲/訳
著者ダンバーは、霊長類の脳の大きさと群れの大きさに関する研究から、ヒト集団が社会的関係を安定して維持できる人数を約150人(ダンバー数)までと推定しています。宗教が生まれた要因の一つに、この人数を超える規模の集団の維持があったのではないかと述べています。
たとえば、宗教的儀式(祈り、歌、踊りなど)は、脳からオキシトシンなどの神経伝達物質を放出させることで報酬効果を生み出し、集団内の絆や信頼感を高め、より強固な集団を維持する助けになっていると述べています。
科学と宗教の関係を考えるうえで、非常に興味深い内容です。
親指はなぜ太いのか 直立二足歩行の起原に迫る(中央公論新社 2003)島泰三/著
著者はセミプロみたいな研究者です。内容は、ヒトの手の形(親指など)と直立二足歩行、歯の形状から、野生であった頃の自然食性(主として骨髄)を考察しているのは秀逸です。
岡本邦広先生の読書ノート
ほとけさまと心が「ほっこり」温まるお話(三笠書房 2021)岡本一志/著
本書は、お釈迦様の教えを短編でわかりやすく述べています。「自分を大切にするお話」「悲しみや怒りがしずまっていくお話」「心配や不安から抜け出すお話」「そっと背中を押してくれるお話」「ご縁に気づくお話」「日々を心穏やかに生きるお話」の全6章、全50話から構成されています。
君たちはどう生きるか(岩波文庫 1982)吉野源三郎/著
本書は、タイトルが示すとおり、生き方の手がかりを示しています。10の短編で構成され、1つ1つのストーリーが大変興味深いです。「ニュートンの林檎と粉ミルク」という話があります。一見すると無関係に思えますが、実はつながっています。これらにはどんな関係があると思いますか。短編の中でも、とりわけ、「貧しき友」の話が大好きです。
トルストイ民話集 人はなんで生きるか 他四篇(岩波文庫 1992)トルストイ/著
「一人の貧しい靴屋が礼拝堂の壁にもたれた素っ裸の男を拾った。その男ミハイルは、余計な口も利かず、寡黙に仕事をこなし、5年経っても笑顔をたった2度見せただけだった。ある日、客として来た婦人と2人の女の子の話を聞いて、ミハイルは3度目に笑った」ミハイルは、そこに何を見たのでしょう。
渡部昌史先生の読書ノート
だから殺せなかった(東京創元社 2019)一本木透/著 Hamza Geno・EyeEm・Getty Image/写真 大岡喜直(next door design)/装幀
言葉は、頭の中や心の中で考え感じたことを外へ出力する際に使われます。その言葉は、出力先の環境で、その環境に合った力を発揮します。この小説は、言葉で犯人と対話をしながら、そこで出力された言葉の微妙な表現から、真相に迫っていく小説です。言葉が紡ぎ出す展開を是非楽しんでください。
小説の神様(講談社 2016)相沢沙呼/著
登場人物の苦しい胸の内を訴える言葉が、本から飛び出してくるようでした。自分を大切にすること、前に踏み出す勇気といったことが、文字を通して皮膚感覚を刺激するかのように身体へ伝わってくる本でした。
真夜中のパン屋さん(ポプラ社 2011~2013)大沼紀子/著
この物語は、真夜中に開くパン屋さんを舞台に、様々な人々が集まり、それぞれの思いや葛藤を抱えながら織り成す人間模様が描かれています。人間模様を通して、人々の心の葛藤や成長、ヒトを想う大切さについて考えさせられます。この世の中には、パンの種類以上の人間関係があると思います。自分の周りの人々との絆を見つめ直し、思いやりと支え合うことの意義を考えてみてください。
梶本佳照先生の読書ノート
科学的根拠で子育て(ダイヤモンド社 2024)中室牧子/著
教育経済学の視点から、子育てや教育における科学的根拠(エビデンス)を紹介する本です。著者はビッグデータや信頼性の高い学術論文を基に、効果的な教育方法や子育ての実践を解説してあります。例えば、早寝早起きや適度な運動が子どもの集中力を高める方法として紹介されています。また、子どもの質問に真剣に答えることで質問力を育てることができるとされています。この本は、科学的根拠に基づいた子育てのヒントが満載です。
子どもの脳の育て方 AI時代を生き抜く力(講談社 2023)黒川伊保子/著
AI時代に必要な「自己充足度の高い脳」を育てる方法を紹介しています。著者は人工知能研究者であり、自身の子育て経験を基に、好奇心や意欲を引き出す方法を解説されています。例えば、集中力を高めるためには、早寝早起きや適度な運動が重要です。また、質問力を育てるためには、子どもの質問に真剣に答えることが大切です。さらに、子どもの好奇心を育むためには、自由な遊びや探求の時間を設けることが推奨されています。この本は、これからの時代に必要なスキルを身につけるためのヒントがたくさん詰まっています。
まわりにあわせすぎる人たち(IBCパブリッシング 2005)名越康文・ロブ@大月/著
現代社会で「過剰適応」してしまう人々について解説されています。著者たちは、精神科医とフリーライターの視点から、なぜ人々が周囲に合わせすぎるのか、その背景や原因を探っています。例えば、家庭や学校での環境がどのように影響するのについて具体的に説明してあります。また、過剰適応がもたらす精神的な問題や、その対策についても触れてあります。さらに、自己理解を深め、自分らしく生きるための方法も提案されています。この本は、自己理解を深め、より健全な人間関係を築くためのヒントが満載です。
加藤由美先生の読書ノート
保育士よちよち日記(三五館シンシャ 2023)大原綾希子/著
著者は、40歳を過ぎて保育士試験に合格し、保育業界に身を転じたとのこと。本書には、保育業界の慣習や、保育現場の良いことも悪いことも包み隠さず、実際に体験したエピソードが描かれている。日記風に記されているので気軽に読めて、保育経験者としては「そうだよね~」と共感できる。
保育で育ちあう 子ども・父母・保育者のいい関係(新読書社 2009)全国保育問題研究協議会/編
将来保育者となった時に、保護者とうまく関係がもてるかどうかが気がかり…という保育学生は少なくない。本書では、父母と共につくる保育内容・実践が報告されており、現場の保育者や保護者の生の声に触れることができる。保育者として保護者とどう向き合っていくかを理解する手がかりになるのでは。
「ストレスに負けない人」の習慣、ぜんぶ集めました。(青春出版社 2024)工藤孝文/監修 ホームライフ取材班/編
タイトルにひかれて手に取ってみた。既に知っていたり、「えっ、そうなの?」と思ったりする習慣が、簡潔に書かれていて読みやすい。かつてTV番組「ガッテン!」「世界一受けたい授業」に登場した著者は、ストレスに負けない人の習慣を、認知療法、脳科学、自律神経、最新栄養学、東洋医学などの観点から、多角的に紹介している。
本渡葵先生の読書ノート
いのちの車窓から 2(KADOKAWA 2024)星野源/著
音楽家・文筆家・俳優の星野源によるエッセイです。「どう考えても大切で、愛しく、ありがたくて、かけがえのない時を、恥ずかしげもなく歌にしたっていい」(p.170)。特別な人にだけ許されたことでも、なしえることでもなく、すべてのひとびとが、それぞれに大切なものを大切だと思い、生活する中に幸せがある。このエッセイを読んで、改めてそう感じました。2017年刊行の『いのちの車窓から』もおすすめです。
入江慶太先生の読書ノート
弥縫録 中国名言集(中公文庫 1986) 陳舜臣/著
突然ですが「破天荒」の意味は分かりますか?「豪快」「乱暴者」だと思ったあなた、それは間違っています。このように、時々目や耳にする言葉であっても、本来の意味とは違った意味で覚えていることがよくあります。この本は104の名言・名句の本当の意味を、歴史を絡めながら分かりやすく教えてくれる文集です。著者は直木賞作家、しかしとにかく読みやすい!では次に……「折檻(せっかん)」の本来の意味は分かりますか?
私が野球から学んだ人生で最も大切な101のこと(海竜社 2011) 野村克也/著
書店で手にとっては元の場所に戻され、買ってはすぐ売られていった自己啓発本の中で、いまだに私の書棚に残っている名著です。101の格言はプロ野球選手や監督として過ごしたエピソードを基に書かれていますが、それ以外の世界にも通じる力を持った珠玉の言葉が並べられています。特に、人間関係や社会の理不尽な出来事に納得いかないときに読むのがおススメです。著者は2020年に逝去されましたが、あなたの本に出会えてよかった!
愛してるよカズ 小児ガンと闘った母親と息子の愛の記録(長崎文献社 2008) 光武綾/手記
小児がんに冒され、7歳でこの世を去ったカズ君の臨終の瞬間まで描かれた手記&DVDです。クラウンDrであるパッチ・アダムスは「医療は死を遠ざけるために使うのではなく、生の質を高めるために使うものだ」と言っています。自分が今をどれだけ熱く、誠実に、真っ当に過ごしているかをカズ君の生き方が教えてくれる、そんな本です。彼が息を引き取る瞬間にお母さんがとった驚きの行動は、何度見ても胸が締め付けられます。
立浪朋子先先の読書ノート
アニー(あすなろ書房 2014)トーマス・ミーハン/著 三辺律子/訳
孤児のアニーは、ある大金持ちの気まぐれで彼の家で暮らすことに。孤児院での貧しい暮らししか知らないアニーには豪華な部屋も食事も全てが驚き。また大金持ちの主人もアニーと触れ合うことでそれまで知らなかった愛情を覚えます。主人はアニーの両親を探そうと計画するのですが……。世界中で愛されているミュージカルの小説版です。私はミュージカルより先に小説で知りました。なぜか貸出をしていなかった小学校の図書室で放課後に少しずつ、わくわくしながら読みました。下校時間になるのが惜しく、貸出がないことを恨みました。続きが読みたくてたまらない小説、との出会いは私の場合そう多くなく、本書は幸福な時間をくれた貴重な1冊です。
ナイティンゲール伝 他一篇(岩波書店 1993)リットン・ストレイチー/著 橋口稔/訳
新卒の就活時、エントリーシートにあった「尊敬する人物」欄に私は「フローレンス・ナイチンゲール」と書いていました。理由は本書で描かれたナイチンゲールの、目的のためには手段を選ばない類まれな行動力と実務能力に当時の私は憧れたためです。面接では愛するナイチンゲールのことを熱く語ろうと思っていたのに、なぜか全く質問されず今も残念でなりません。後日、「尊敬する人物がナイチンゲールというのは陳腐」と聞かされました。そうなのでしょうか。彼女の魅力は尽きず、まだまだ私たちの知らないナイチンゲールが隠れていそうに思えるのですが。
バレリーナ 踊り続ける理由(河出書房新社 2016)吉田都/著
高校時代、カナダの田舎町の古ぼけた図書館でたまたま手に取った古ぼけたバレエの写真集。なんとなく借りて図書館近くの古ぼけたカフェで開きました。掲載されているダンサーは知らない人ばかりでしたが、ヌレエフ、フォンティーン、カレン・ケインなど有名どころはわかりました。日本人はYoko Shimizu。これは清水洋子さんか、または森下洋子さん(清水はご主人の姓)。さらにもう一人日本人が。Miyako Yoshida。ん?誰?日本人が英国ロイヤル・バレエで主演、へぇ……。店員さんから「バレエやってるの?」と聞かれ、「いえ全然!」と全否定。夢中で見ていたようです。実際の吉田都さんの踊りに触れるのはそれから10年以上後。とても若い頃から活躍されていたのだなあと今もあの古ぼけた写真集を思い出します。ここでは吉田都さんの自伝的エッセイを紹介します。英国ロイヤル・バレエの頂点に立つバレリーナの厳しい日々が、なんでもないことみたいに軽やかに描かれているのがとても素敵です。
会話を楽しむ(岩波書店 1991)加島祥造/著
子どもの頃から、会話が大の苦手でした。何も話すことがないのです。「話題の豊富な人」ってどうしたらなれるの??と不思議でたまりませんでした。会話が悩みの種でしたので、タイトルを見た時はすぐに手に取りました。何かヒントはないものか。本書は、小説に登場する何度も同じ話を繰り返す男たち、つまらぬ格言を朗々と述べるマダムなどから会話を論じています。読みやすい文体で、会話とは何だろうとじっくり考えるには格好の1冊だと思います。
竹下可奈子先生の読書ノート
一日江戸人(小学館 1998)杉浦日向子/著
江戸風俗研究家であり漫画家でもあった杉浦日向子さんが、自筆イラストを交えながら江戸時代の人々の暮らしや趣味嗜好を紹介しています。まるで実際に見てきたかのような詳しい説明や図解を読んでいると、江戸時代の人々がとても身近に感じられます。
園芸家12ヵ月(中央公論新社 2020)カレル・チャペック/著 小松太郎/訳
小説家のカレル・チャペックが、趣味の園芸について書いたエッセイです。常に庭のことが頭から離れない愛すべき園芸家の性について、実体験をもとにユーモアたっぷり書かれています。また、なにかに夢中になること、なにかに魅了されることがいかに人生を豊かにしてくれるかについても教えてくれる本です。
久恒拓也先生の読書ノート
専門職の質保証(玉川大学出版部 2019)橋本鉱市/編著
本書は専門職の初期研修(新任者向け)の制度史や背景を分析したものである。中には、本学で取得可能ないくつかの資格についての章も設定されている。例えば保育士は、その平均勤続年数の短さなども要因となり、初期研修が全国レベルの実施へ移行しきらず、先に制度化が図られたのは中堅職員に対する研修であったことなどが描かれている。このほか、看護師や社会福祉士の章も閲覧を推奨したい。
社会史のなかの子ども(新曜社 1988)宮澤康人/著
Ph.アリエスの主著『〈子供〉の誕生』は子ども史研究に大きな一石を投じた。同書の主張の一つは、中世の社会では子ども期へのサンチマン(=感覚、まなざし、意識)は存在していなかった(それは近代の産物である)というものである。今回紹介する宮澤編著においては、アリエス以降の近代観や、子どもを子どもらしい存在として見る大人の意識が教育に何をもたらしてきたのかが追求されており、幼児教育に携わる者には薦めたい。
松島英恵先生の読書ノート
ぼちぼちいこか(偕成社 1980)マイク・セイラ-/作 ロバート・グロスマン/絵 今江祥智/訳
カバくんが消防士や船乗り、パイロットなどを目指して次々に挑戦しますが、どれもうまくいきません。「どないしたら ええのんやろ」と思うのですが、「ここらで ちょっと ひとやすみ」しようと思いつきます。いろいろ悩みは尽きないし、なんだかしっくりこないことも多いけれども、「ぼちぼち いこか」というゆとりは大事かなあと思います。今江祥智さんの関西弁の訳がぴたっとハマって、肩の力が抜けてほっこりする絵本です。
子どもが中心の「共主体」の保育へ 日本の保育アップデート!(小学館 2023)おおえだけいこ/著 大豆生田啓友/監修
「主体性」や「共主体」の意味解釈についてコミック形式で説明されたり、「主体性」や「共主体」の理論について専門家との対話形式で掲載されたりして、学生や初学者に大変わかりやすいものになっています。大人の主体性と子どもの主体性の両方を尊重する「共主体」の保育とはどのような保育でしょう。自分なりに考える機会になると思います。
植物図鑑(幻冬舎 2013)有川浩/著
ある日、道ばたで拾ったイケメンは、家事万能の上、重度の植物オタクで、休日に2人で近所の野草を採取して、野草を使った料理を楽しみながら距離を縮めていくという恋愛小説です。とにかく出てくる料理が美味しそうでたまりません。散歩に行って、野草を摘んできたくなり、食べられる野草の図鑑まで購入してしまいました。これを読んだら新見の自然の全てが、八百屋さんに見えてくるかもしれません。
福武幸世先生の読書ノート
創造力の育て方・鍛え方(講談社 1997)江崎玲於奈/著
1973年にノーベル物理学賞を受賞された江崎玲於奈さんの本です。私の心に刻まれたのは「人間は幸福な時こそ仕事の効率を上げるものだ。」という言葉です。創造力を育て鍛えることは、一人ひとりが自分で考える習慣を身に付け、自分の意志で決定した人生を幸せに生きていくことに繋がります。自分らしく満足のいく人生を送ることについて考えたい時に本書を手に取っていただければ幸いです。
心を整える。勝利をたぐり寄せるための56の習慣(幻冬舎 2011)長谷部誠/著
長谷部さんは、2011年にAFCアジアカップでキャプテンとして日本代表を牽引し、優勝に貢献しました。2024年には、指導者としてのキャリアをスタートされました。彼の人生は、サッカーで語り尽くされると思いますが、その原点となる心(メンタル)の調整方法が様々な角度から描かれています。お気に入りの音楽や読書ノートをつけるといった日常生活から、精神的な部分まで真似したい心の整え方が書かれている本です。
地域福祉学科
松本百合美先生の読書ノート
地域福祉・介護福祉の実践知(現代書館 2016)中嶌洋/著
本書は社会福祉学の研究者である著者が研究の成果をまとめたもので少しとっつききくいかもしれませんが、ホームヘルパー等地域福祉の最前線で活動している人々の語りに触れて欲しいと思ったからです。地域福祉の重要性が語られつつ、一方では訪問介護等の在宅サービスの介護報酬は低減され、次々に訪問介護等の事業所が立ち行かなくなっている現在、今一度しっかり学びなおしておきたい内容です。
完本 神坐す山の物語(C)浅田次郎/双葉社 2024
著者は代々御嶽山で神官を務める家系です。子供のころ神官屋敷と言われる母親の実家で伯母から寝る前に聞かされた怪談のような話をベースにした短編をまとめたものです。これに「神上りましし諸人の話」(あとがきにかえて)が加わって完本になっています。若い人には、古い家の慣習が残る生活を知るだけでもなかなか面白いと思います。できれば、慣習に沿った生活の中で、親族それぞれの暮らしと『家』の暮らしが続いているということにも思いを寄せると、また別の読み方もできるように思います。
諦める力(プレジデント社 2013)為末大/著
男子400mハードルのオリンピックメダリストである著者が、100m走から400mハードルに絞ってメダリストになったエピソードをもとに、諦める力の大切さを書いた本です。諦めるという言葉には、断念するなどネガティブな意味だけでなく、まわりの状況や道理を明らかにしてよく見極めるという意味があるそうです。何かを諦めること自体を自分で許せず悩んでいる人には、「諦めないために諦める」という選択があることを知ってほしいと思う1冊です。
山内圭先生の読書ノート
The Works of John Steinbeck: In the Magic Light of “Celtic Twilight”(大阪教育図書 2024)Yasuhiro Sakai/編
ジョン・スタインベックの文学「ケルトの薄明」の魔法(大阪教育図書 2022) 酒井康弘/編著
アメリカのノーベル賞作家ジョン・スタインベック研究者として毎年スタインベック関連の書を紹介しています。米子高専の酒井康宏名誉教授が編集・執筆された書ですが、僕もスタインベックの『チャーリーとの旅』についての文を寄稿しています。英語で書かれたものではありますが、英語を読んでみたい方、ぜひ挑戦してみてください。日本語で読みたい方のために、同内容の日本語版も紹介しておきます。
日本の同時代小説(岩波新書 2018) 斎藤美奈子/著
僕の所属する日本メディア英語学会の基調講演者として斎藤美奈子氏をお招きするにあたり読んだ書です。文芸評論家の斎藤美奈子氏は多くの著作を出されていますが、いくつか読ませてもらった中で僕が学生の皆さんに推薦したいのはこの書です。これ一冊で立派な現代日本文学ガイド書になっていると思います。この書をきっかけにして、読んでみたい日本文学の作品を探してみるのもいいと思います。
大統領失踪 上・下(The President Is Missing)(早川書房 2018) ビル・クリントン(Bill Clinton)・ジェイムズ・パタースン(James Patterson)/著 越前敏弥・久野郁子/訳
ステイト・オブ・テラー(State of Terror)(小学館 2022)ヒラリー・R・クリントン(Hillary Rodham Clinton)・ルイーズ・ペニー(Louise Penny)/著 吉野弘人/訳
昨年がアメリカ大統領選挙の年でしたので、元大統領のビル・クリントン氏が作家ジェイムズ・パターソン氏と執筆して話題になったこの書を読みました。世界一の国家の最高責任者になった者しかわからない大統領の心理描写がとても興味深く、また実在の固有名詞とともに史実が織り交ぜられて興味深く読むことができます。妻のヒラリー・クリントン氏の書と比べて読んでみて、僕は夫のビルさんに軍配を上げたいと思います。
テムズとともに 英国の二年間 (紀伊國屋書店 2023) 徳仁親王/著
徳仁天皇が英国オックスフォード大学での留学のご経験について書かれた書です。留学時代の経験が素直に書かれ、僕が言うのもおこがましいですが、好著です。自分の国の天皇がこのような素晴らしい書を書かれていると思うととても誇り高い気持ちになります。オックスフォードを訪問してみたくなる書でもあります。ちなみに天皇陛下は1981年に新見に来られ、三日市船着き場跡、高瀬の氷室神社などを訪問されています。
赤と青のガウン オックスフォード留学記 (PHP研究所 2015) 彬子女王/著
上記の徳仁天皇の書に続いて、ベストセラーになった彬子女王の二度に渡るオックスフォード大学への留学記も読んでみました。著者の彬子女王は、昨年101歳でご逝去された三笠宮妃百合子様の孫にあたります。ということで、ご身分の高い方の留学記ではありますが、一般人の私たち(学生の皆さんも)が留学する時の参考になる書だと思います。また、留学前から留学中の英語学習についても参考になることが多い書です。
青べか物語 (新潮文庫 1964) 山本周五郎/著
若い頃に父親のすすめで読んだものですが、昨年ある学生と話していてこの書の話となり、久しぶりに読んでみました。現在はディズニー・リゾートで有名な浦安ですが、その浦安が「浦粕」という名で舞台になっています。当時の庶民の生活の描写が秀逸です。以前、山本周五郎展で彼の書斎が再現されていたものを見ましたが、書棚にはスタインベックの『罐詰横丁』『おけら部落』がありました。スタインベック作品の影響もみられます。
積読こそが完全な読書術である(イースト・プレス 2020) 永田希/著
昨年、若くして亡くなった(享年44歳)、永田希さんの著書です。推薦図書として何冊も紹介していることからおわかりかと思いますが、僕は本好き人間です。書斎には、多くの本が「積読」状態で置かれています。この情報過多の時代、読みたい本、見たい映画・映像などが多すぎてなかなか追いつかない皆さんもいらっしゃることと思います。そのような方もこの本を読み大いに勇気づけられ、さらに読書をしたくなる、そんな本です。
ツミデミック (光文社 2023) 一穂 ミチ 著
近年、直木賞候補作が発表されるとそれらを読み受賞作を予想して楽しんでいます。本書は僕の予想が見事的中した第171回直木賞受賞作です。この作品は、コロナ禍およびコロナ後の社会やそこに生きる人々の生活の描写がすぐれている「コロナ禍文学」とジャンル分けできる作品だと思います。短編集ですが、収録作の中で僕は「さざなみドライブ」がよかったです。読まれた方は、どの短編がよかったか教えてくれると嬉しいです。
Who Sees Who at the Zoo? (Grosset & Dunlap 1987) Patricia Lacey/著
新見市の姉妹都市、米国ニューヨーク州ニューパルツ・ヴィレッジから寄贈された、ニューパルツ国際交流協会役員のおばにあたる著者が書かれた英語の絵本です。夏休みに何をしようかと楽しみにしているきょうだいが動物園に出かけることになりました。人が動物を見に行くのが動物園だと考えられていますが、動物たちがやってくる人を見る場所でもあるのです。平易な英語で書かれ、カラフルなイラストも印象的な絵本です。
DVと子ども虐待のソーシャルワーク 実践を変える視点と方法 (日本評論社 2024) 増井香名子/著
本学地域福祉学科に以前在籍されていた増井香名子先生の著書です。僕は現在増井先生が主宰されているDV被害者と子どもの支援実践研究会に英語アドバイザー的に関わっていますが、この書では米国のDavid Mandel氏のSafe & Togetherモデルの知見を取り入れる際、翻訳のお手伝いをさせてもらいました。地域福祉学科の学生だけではなく、健康保育学科や看護学科の学生たちにも参考になる内容だと思います。
三上ゆみ先生の読書ノート
週末の縄文人(産業編集センターSHC 2023)週末縄文人 縄・文/著
この本との出会いはYouTubeの配信でした。都会のサラリーマン2人が、週末を使って縄文生活を送る様子を紹介されています。「火を一から起こす」「石を磨いて斧をつくる」「草の繊維を取って水に浸し、ひねってひもを作る」「鹿の角で釣り針を作る」など、中でも「土器を作る」過程の中では失敗を繰り返しながら気の遠くなるような調整がありました。なにもない時代の当時の人々の技術のすばらしさと、時間の流れ方を教えてくれるそんな素敵な1冊です。
三秒の感謝(海竜社 2010)曽根綾子/著
少し古い作者のコラムを集めた日常の中での小さな感謝の重要性を描いたエッセイです。短い時間でも感謝の気持ちを伝えることで、心が温かくなり、人間関係が豊かになることを感じます。特に、忙しい日常の中で立ち止まり、感謝の気持ちを表すことの大切さを再認識させられます。曽根綾子の温かい筆致が、読者に感謝の心を育むきっかけを与えてくれます。
フェイクニュースを哲学する(岩波新書 2024)山田圭一/著
現代社会におけるフェイクニュースの影響とその哲学的背景を探る1冊です。著者は、情報の信頼性や真実とは何かを問いかけ、読者に深い思考を促します。特に、メディアリテラシーの重要性や、情報を批判的に受け取る姿勢の必要性を強調しています。この本を通じて、私たちは情報社会における自己防衛の方法を学び、より健全な情報環境を築くためのヒントを得ることができます。
井上信次先生の読書ノート
戦後民主主義が生んだ優生思想 優生保護法の史的検証(六花出版 2021)藤野豊/著
優生保護を推進してきた日本の状況が、資料を用いて「公共の福祉」の観点から論じられている。非常に細かい記述があるが、本書を通じて、優生保護法、ハンセン病隔離政策等の人権侵害に関する知識を持った医療や福祉の専門職になってほしい。
教育にひそむジェンダ- 学校・家庭・メディアが「らしさ」を強いる(筑摩書房 2024)中野円佳/著
ジェンダーの形成に関して、具体的な記述が多くあり非常に参考になる書籍である。ジェンダーに関する議論は古くからあるにもかかわらず、性差別と判断できる事象が未だ多くある。何がジェンダーかを改めて考える契機にしてほしい。
障がい青年の学校から社会への移行期の学び 学校・福祉事業型専攻科ガイドブック(クリエイツかもがわ 2021) 田中良三・國本真吾・小畑耕作・安達俊昭・全国専攻科(特別ニーズ教育)研究会/編
特別支援学校を卒業後の進路の一つに学校・福祉事業型専攻科がある。世界的に知的障害等のある人達への学びの高等教育の保障が必要とされているが、日本では実践が不足している段階である。本書により、学校・福祉事業型専攻科の状況を具体的に理解することが可能である。特に、知的障害や発達障害に関心がある人に読んでもらいたい。
加藤雅彦先生の読書ノート
正義とは何か 現代政治哲学の6つの視点(中央公論新社 2018)神島裕子/著
ウクライナや中東での戦争を耳にする度に、人類がどのように正義を考えてきたか想起する必要がある、と私は考えてしまう。そういう思いで手に取った本書は、政治哲学者ロールズの『正義論』を中心にそえてリベラリズム、リバタリアニズム、コミュニタリズム、フェミニズム、コスモポリタニズム及びナショナリズムの6つの視点から正義論を紹介している。結局、「正義は…自分たちで学ぶしかありません」と最後に著者は結んでいる。
夏目漱石論(講談社 2012)蓮實重彦/著
著者は、東大総長を務めたフランス文学者、蓮實重彦。意味不明により眠くなる難解な漱石論である。したがって、第十章「『三四郎』を読む」及び終章「漱石的「作品」」だけを読めばよい。時間がない人生において、そのような読書も許されるはずだ。第十章は、『こゝろ』以上に、罪の意識や自己抹殺の志向が『三四郎』にある、と読者を驚かせる。そして、終章において、漱石を通した著者の文学観が描かれている。
松田実樹先生の読書ノート
エルマーのぼうけん(福音館書店 1972)ルース・スタイルス・ガネット/作 わたなべしげお/訳
私の娘がそろそろ活字を読みだす年齢となり、何の本を一緒に読もうかな~と図書館で数冊選んだ児童文学の本の中、断トツでおススメしたい本です。タイトルにある通り、エルマーという少年が冒険に出る話なのですが、その冒険では色々な動物に命を狙われる中、出発前にリュックに詰めた小物やオヤツを使ってピンチをくぐりぬけていく様子が何とも爽快!大人が読んでも童心に戻り、ワクワクする本です。
1分で大切なことを伝える技術(PHP新書 2009)斎藤孝/著
自分が大切だと思うこと、相手に伝えたいと思うことがあればあるほど、詳細に説明してしまいがちです。しかし、大切であるからこそ短く簡潔に伝える必要があります。著者によると、一分の話の中に導入として問いを発し、ポイントを3つほど示して、終わりに問いに対する答えを入れ込んで一文で括ることが最良だそうです。簡潔かつ相手の印象に残る話をする為には、練習が必要です。是非、簡潔に話すことが難しいと思っている人は、この本を手にとってみてはいかがでしょうか。
現場に出ると、大学で学んだ様々な知識を状況に合わせて応用していく必要があります。でも、そのためには基本を理解しておかないと応用なんてできません。そんなやりとりを一度は聴いたことがあるのではないでしょうか。本書は、自身が得た知をどう活用していけばよいかを、物事を覚える、理解する(わかる)という言葉を手掛かりに考え、知識を深めるために意識すべきことは何かを考えるきっかけになると思います。
合田衣里先生の読書ノート
プリズン・ドクター(新潮新書 2022)おおたわ史絵/著
テレビでもご活躍されている、医師のおおたわ史絵さんが書かれている本です。矯正医官、刑務所で働く医師の仕事内容や受刑者の様子などが読みやすく記されています。
家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった(小学館 2020)岸田奈美/著
ドラマを見たことがある人も多いかもしれません。エッセーもおススメです。お父さんを早くに亡くされ、お母さんが車椅子生活になり、弟さんは障害があるという難しく感じる状況について、ポジティブに書かれています。岸田さんの独特の感性から紡ぎだされる表現は、とっても素敵です。
答え合わせ(マガジンハウス新書 2024)石田明/著
M-1グランプリ審査員が話題になったNON STYLEの漫才論です。色々な芸人さんの名前を挙げながら、何が新しかったのか?どういう仕掛けがあるのか?など考察されています。言葉で人を笑顔にする、劇場に生の漫才を見に行きたいなと思いました。
高橋順一先生の読書ノート
ちなみにそれ、Canvaでデキます!(インプレス 2024)ぺち丸/著
Canvaは、プレゼンやインスタ、ポスターなどのデザインをおしゃれに作れるツールです。美しいスライドを作ってから、PowerPointに変換することもできます。様々な機能があり、生成AIによる便利機能も次々に追加されています。この本で、基礎と新情報が得られます。無料ではできない機能もありますが、活用できることはどんどん吸収していただければと思います。ドリームラボやマジック作文など最新機能はご自身で調べてみてください。
Q&A 社会的養育の実践 困難を抱える子ども・子育て家庭の支援(ぎょうせい 2023)日本児童養護実践学会/著
社会的養護(養育)についてまとめられている本です。似た用語も多い領域ですので授業の予習・復習に最適です。なお、2024年4月等の改正児童福祉法の施行に伴う事項については、社会福祉士の国家試験対策の本などでの継続した確認も効率的です。児童養護施設、児童自立支援施設、児童心理治療施設、施設の小規模化、里親ドリフト、児童相談所の一時保護、被措置児童等虐待、家庭支援専門相談員などを改めて確認してみてください。
できるWord2024 Office2024&Microsoft365版 Copilot対応 (インプレス 2024)田中亘・できるシリーズ編集部/著
皆様、Wordを上手く使えていますでしょうか。「Ctrl + B」で太字、「Ctrl + U」で下線、「Ctrl + E」で中央揃え、「Ctrl + Z」で操作を戻す、「Ctrl + Y」でやっぱり操作を進む、「Ctrl + A」で全て選択してフォントを一括で変更するなどなど、時短機能がたくさんあります。この本を読んで、レポートや卒論作成を効率的に進め、就職後も活用していただければと思います。「Ctrl」はキーボードの左下のキーです。
できるExcel2024 Office2024&Microsoft365版 Copilot対応 (インプレス 2024)羽毛田睦土・できるシリーズ編集部/著
Excelについて分かりやすく書かれた本です。時短機能を知っていると、1日掛かる作業が5秒で終わることもあります。セルを、「Shift」や「Ctrl」や「矢印」を押しながら選択し、「Ctrl + T」でテーブル化、「ホーム」の「並べ替えとフィルター」の「フィルター」で、選択したり、昇順に並べ替えたりできます。「Ctrl + 1(キーボードの左上)」で「セルの書式」が出ます。COUNTIFやXLOOKUP関数もご活用ください。
井上祐介先生の読書ノート
移動がつくる東中欧・バルカン史(刀水書房 2017)山本明代、パプ・ノルベルト/編
本書は、日本とハンガリーの研究者が共同執筆した論文集で、東中欧とバルカン地域の歴史を「人とモノの移動」という観点から検討しています。移住や民族問題、国家形成に焦点を当て、地域の双方向的関係性や文化的混交について考察しています。東中欧・バルカン史についての理解を深めることができます。
ターラの夢見た家族生活 親子をまるごと支えるフランスの在宅教育支援(サウザンブックス 2024)パボ/著 安發明子/訳
本書は、精神疾患を持つ母親と暮らす小学生ターラと、彼らを支える在宅教育エデュケーターの日常を描いたフランスの漫画です。家族全体を支える社会のあり方についてユーモアを交えて描写しています。ソーシャルワーカーや教育関係者、子育てに関心のある方々に役立つ一冊です。
はじめて向きあう韓国(法律文化社 2024)浅羽祐樹/編
本書は、韓国の政治、経済、社会、文化について解説する入門書です。各分野の専門家が執筆し、最新の韓国情勢や日韓関係に関する基礎知識を提供しています。韓国に関心を持つ方へのガイドとして利用できる内容となっています。
雑賀正彦先生の読書ノート
図解でわかる ソーシャルワーク (中央法規出版 2023)鈴木孝典・鈴木裕介/編著
本書は、ソーシャルワークとは何かについて、図解を用い平易な言葉で記述され、わかりやすい書籍である。また、今日の多様化・複雑化している生活課題への対応・支援も含まれており、ソーシャルワーク全体を俯瞰するにはよい書籍であると言える。そのため、ソーシャルワークへの学びを深めたい大学生にはお勧めの1冊である。
アカデミック・スキルズ 大学生のための知的技法入門(慶応義塾大学出版会 2020)佐藤望/編著 湯川武・横山千晶・近藤明彦/著
本書は、大学における学びの基本である調べ、読み、書き、まとめ、伝えることについて技法あるいは技術をわかりやすく解説した書籍である。大学での学びを社会人となった際にどのように活かすことができるかについても触れているため、より実践的な知識と技術が身につく1冊である。
泉宗孝先生の読書ノート
ライフステージを通しての「医療的ケア」「医療的ケア児支援法」の成立を受けて、現場の声を聞く!(クリエイツかもがわ 2024)荒木敦・NPO法人医療的ケアネット/編著
「医療的ケア児」というとどのような「こども」たちをイメージされるでしょうか。このような「こども」たちは全体からすると数が少ないだけに、よくわからないという方も多いと思います。「こども」のスペシャリストを目指したい方は、より「みんな」で楽しめる保育、丁寧な「こども」たちへの関わりを考える意味でも、読んでみてほしい一冊です。
「心のない人」は、どうやって人の心を理解しているか 自閉スペクトラム症者の生活史 (亜紀書房 2024)横道誠/著
自閉症スペクトラム症の当事者の方がどのような日常を過ごされているのか興味ありませんか? 「こども」から成長した先では、どのような生活なのかを少しでも知ろうとすることは、「連続性のある支援」、「安心・安全な生活」という観点からも必要なことだと思います。7名のお話がのっていますが、全員個性的でとても面白い、読み終わるころには、なぜこんな題名なんだろう…という疑問が解消できるのではないかなと思います。
一流の共通点 スカウトマンの私が見てきた成功を呼ぶ人の10の人間力(徳間書店 2023)二宮博/著
プロのサッカー選手になりたかった自分からすると、この年齢になってもテレビでサッカーを応援しながら、「プロと自分とは何が違ったのだろう」と思うことがあります。この本では才能だけでなく、「人間力」という言葉で説明をしてくれています。サッカー選手の話が主ですが、「人間力」をどのような視点で見ているのか、それは同時に社会人としてどのようなところを見られるのかということにもつながると思います、ぜひどうぞ。
柳廹三寛先生の読書ノート
問いのデザイン 創造的対話のファシリテーション(学芸出版社 2020)安斎勇樹・塩瀬隆之/著
社会にある多くの企業やグループなどは複数の人が関わり合いながら組織的に活動を行っています。しかし、複数の人が話し合ってもいいアイデアが浮かばないや問題を解決できないといったコミュニケーションの問題が発生してきます。この本では、コミュニケーションをうまく機能させるための技法が開設された1冊です。是非読んでみてください。
月の立つ林で(ポプラ社 2022)青山美智子/著
2023年本屋大賞にノミネートされた1冊です。 どことなく、傷ついた心をそっと癒してくれるような内容の1冊です。
いい質問が人を動かす(文響社 2016)谷原誠/著
「質問には人を動かす力がある」質問に答えるためには考えることがとても大切です。人に言われて能動的に動くことよりも主体的に考えて動いた方が人は何かとやる気をもって前に進むことができます。そんなことを気づかせてくれる1冊です。
長宗武司先生の読書ノート
アルビレックス新潟の奇跡(小学館 2005)飯塚健司・滝井寿紀/著
2024年、ファジアーノがJリーグ1部昇格を果たし、岡山県民の大きな話題となりました。一昔前までは、プロスポーツは大都市のプロ野球チームが中心で、地方のまちがスポーツで盛り上がることは稀でした。そのような中、新潟のJリーグチームアルビレックスは、一時期、毎試合4万人の市民がスタジアムに駆け付け、プロ野球をも凌駕するまちの盛り上がりを見せました。本書では地方チームの挑戦とまちの変遷が描かれています。
年収は「住むところ」で決まる(プレジデント社 2014)エンリコ・モレッティ/著 池村千秋/訳
「給料は学歴より住所で決まる」、「なぜ特定の地域では賃金が高いのか」、本書では地域科学の分野で蓄積された乗数効果の実証分析の結果から、都市・地域と賃金との関係を明らかにしています。自分はどこで働くべきか、どのような産業だと高い賃金を得ることができるのか、今後の人生にも役立つ1冊です。