平成29年度入学式学長式辞(2017年4月8日)
 
 爽やかな新見の春風と桜の花が、新しい出会いを祝福しています。新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。
 平成29年4月8日、新見公立大学 健康科学部・看護学科64名、助産学専攻科5名、大学院看護学研究科4名、並びに新見公立短期大学 幼児教育学科54名、地域福祉学科56名、計183名の入学にあたり、大学を代表いたしまして、新入生、ならびにご列席のご家族の皆様に心よりのお祝いを申しあげます。また、ご多用中にもかかわりませず、ご臨席を賜りました、ご来賓の皆様に厚く御礼を申し上げます。
 本日ここに、それぞれの夢と希望を抱いて、未来に向かって目を輝かせている新入生の皆さんを前に、私ども大学の役員、教職員一同、大変誇らしく嬉しい気持ちで一杯であります。新入生の皆さんを心より歓迎するとともに、その責任の重さを改めて痛感し、身を引き締めているところであります。同時に、本学の歴史と伝統に裏打ちされた専門職養成のノウハウ、教職員の研究・教育に対する熱い情熱と固いチームワークは、必ずや新入生の皆さんの期待に応えられるものであると確信いたしております。

 皆さんは、長く辛かった受験勉強を経て、今日の日を迎えられたものと思いますが、他者との競争は、今回の入試でひとまず終止符を打つことになります。これからの競争相手は内なる自分であり、如何にして自分自身の総合力を高めていくか、ということが最重要課題となります。人間の総合力は、知識、技能など数値化できる学力と、必ずしも数値化ができない人間力との総和であり、学力とともに人間力の向上が望まれます。本学は開学以来の基本理念として「誠実、夢、人間愛」を謳っています。誠実であること、夢を抱くこと、そして人間の尊厳を守り生命をいとおしむ人間愛の精神を培うことが、皆さんが目指す看護師、保育士、介護福祉士など、人と係る専門職の人間力向上の基盤となります。

 本学は、人口3万人、高齢化率39%の典型的中山間地域にある、日本でほぼ唯一の保健福祉系の公立大学・短期大学であります。現在、改めて、この課題先進地域にある地の利と教育研究資源を生かし、「健やかなこどもの成長、心の豊かさの向上、高齢者の健康寿命の延伸」を実現する「地域を拓く健康科学」を体系的に研究、教育する特色のある公立大学の構築を目指しています。本年4月より、看護学部の名称を健康科学部に変更しました。今後、看護学と幼児教育学、地域福祉学との学際的融合を図り、新見市全域を学びのキャンパスとする新しい健康科学部を創造していく計画です。新入生の皆さんには、「地域で乳幼児から高齢者まで全ての世代の心と体の健康を切れ目なく支援する」ことを目指す、本学の創造的未来についても一緒に考えてもらいたいと思っています。

 幸か不幸か、この街には若者向けのいわゆる娯楽施設はなく、出かけて行くためには相応の時間がかかるという不便さがあります。他方、勉学に専念し、人間力と感性を養うのにふさわしい学修環境、四季折々の変化に富む豊かな自然と中山間地域に暮らす人々の生活の現場があります。中世新見庄から続く歴史と文化にも触れながら、良き師、良き友との良き人間関係を構築しつつ、これからの数年間、オンとオフのスイッチを上手に切り替えて、主体的、能動的な学びの習慣と人間力の向上に努めて下さい。

 近い将来、人工知能(AI)の開発が急速に進み、人間の判断力や能力を超える日が来ると予測されています。しかし、自らの人生を決断するのは、決してAIではなく、あなた方自身です。また、人に優しい地域社会を支えるのもAIではなく、社会的弱者の声に「傾ける耳」、「感動する心と涙する目」、そして「踏み出す勇気と差し伸べる手」を持つこれからのあなた方です。あなた方の手には、卓越した専門職としてのスキルとともに、暖かいぬくもりが期待されています。

 最後に、幅広い人間力の涵養は日常の生活にあります。本日より、お世話になります新見市の皆様への感謝の気持ちを忘れず、明るい笑顔に思いやりと気配りの一言を添えた挨拶をお互いに掛け合いながら、健康に留意して充実した学生生活を送って下さい。
ご列席のご家族の皆様、ならびにご来賓の皆様に、本学に対する温かいご支援とご厚情をお願いしまして、私の式辞とさせていただきます。
 
平成29年4月8日

新見公立大学・公立短期大学 学長 公文 裕巳