「地域文化実習」;生活文化の視点をもった福祉・介護の専門職へ

 地域福祉学科の特徴的な授業一つに2回生が履修する「地域文化実習」が挙げられます。この授業の目的として第一に提示されているのは、「主に新見地域で展開されている生活文化に触れることによって、人々が培ってきた時間や伝統への理解を深める」ということです。生活文化を理解し自己を高めることはもちろんのこと、福祉・介護の対象となる方々がこれまで生きてこられた文化を理解することにより、よりよい福祉や介護を提供することにもつながる科目となっています。この授業では、履修者は「音の文化論」コースと、「神楽コース」に分かれます。

「音の文化論」コース

 「音の文化論」コースでは、「音に対する反応や音に対する感覚(音の聞き方)は、個々人の生活様式や生活環境によって異なるものであり、我々の育った環境や生活文化によって創られる音感性について考察し、一人ひとりの人生を音という視点から考え、高齢者の生活環境の中にある音の重要性に気付き、対象者理解につなげる力を修得させる」ことを目的に、非常勤講師の吉村淳子先生から講義を受け、新見市新見の船川八幡宮の例大祭の「土下座祭り」において、短期大学時代から本学科で披露しているお囃子を篠笛奏者の朱鷺たたら先生と吉村先生から学びます。今年度は、新型コロナウイルスの影響を受け、朱鷺先生の授業はオンラインによる指導となりました。また土下座祭りが中止となりお囃子をお祭りで披露することはできず、残念ながら、祭りが地域の人々にとって大切な行事となっている事や、神楽を通した地域の方々の交流や次世代の育成の場になっていることを実感する場がもてませんでした。そのようななか、1月20日の地域文化実習発表会は唯一の貴重な発表の機会となりました。

お囃子
 

今回の授業に関し、お囃子団のリーダーであった山口楓さんは以下のように述べています。

 今回お囃子を演奏するにあたり、人と息を合わせて1つのことをやり遂げる難しさを学びました。小学生の頃にはいろんなことをみんなで力を合わせてやることが多いですが、それ以降は個々の力を伸ばしていくことの方が多く、なかなかみんなでやるということがなかったように感じます。そんな中で、大学生になって個性が際立つ中、それぞれが息を合わせてなにかをやるということはとても難しいということを改めて痛感しました。しかし、コロナの影響で練習時間が十分ではなかったことを感じさせないぐらい、当日の演奏はみんなの息を合わせて上手くできたと思います。
私たちのために動画で解説を送ってくださった朱鷺たたら先生、上手くできない時も諦めず教え続けてくださった吉村淳子先生、今回発表の場を設けてくださった地域福祉学科の先生方、このお囃子に関わってくださった全ての方々に感謝しています。貴重な経験をさせて頂きありがとうございました。

「神楽コース」

「神楽コース」は、「神楽の稽古をとおして、地域に伝承されている文化およびそれを継承することの意義についての理解を深めていく」ことを目的に、備中神楽の唐松社の池田利文先生と吉村先生の指導のもと、10月からの授業で稽古が始められました。

準備風景
準備風景

練習風景(衣装着用)
練習風景(衣装着用)

 

 今回、神楽コースの履修者は9名です。その9名で「新見公立大学社」が設立され、社長となった髙山菜々子さんは、神楽の稽古をするにあたっていろいろと調べたことを以下のように述べています。

 備中神楽を体験することで日本の古事記に興味がわき、演目ごとに登場する神様について調べるきっかけとなった。私が演じた素戔嗚の尊(すさのうのみこと)が乱暴で粗暴な神様であること、しかし奇稲田姫(くしなだひめ)を救うために勇猛果敢に大蛇(おろち)に立ち向かう神様であることを知った。また大国主命(おおくにぬしのみこと)の衣装に鼠が描かれていることが気になったが、古事記に大国主命が鼠に救われたという話を見つけ、また大豊神社という大国主命と鼠に縁のある神社が存在することもわかった。

 また、猿田彦命舞を舞った一人、三宅眞由さんは、備中神楽を舞うにあたって多くの人たちに支えられていることを実感し、次のように述べています。

 最初は全く形とならなかった猿田彦命舞も、他の舞をするメンバーに時間を割いて動画を撮ってもらったり、同じ演目同士で教え合い自主練習に励んだりして8人の仲間に支えられ本番を迎えることができた。池田先生は私たちができないところを何度も熱心に指導してくださり、本番前には「今まで頑張ってきたから堂々と舞うこと」と言ってくださり、この言葉を胸に猿田彦らしい勇姿になったと感じている。他にも何も分からない私たちのために衣装や道具、新見公立大学と備中神楽の関係を教えてくださった先生方のお力添えがなければ、発表会は成功しなかった。自分の演目が終わっても次の演目のために幕を閉じたり、演奏に行ったりなど、最初から最後まで全員が一丸となって主役から裏方まで行った。自分の舞いを覚えるだけでなく他の舞も覚えて、どのタイミングで裏方は動くのか一人一人常に役割と責任があった。新型コロナウイルスで誰かが欠けてもおかしくない状況のなか、誰一人として欠けることなく最後を迎えることができたのは私自身非常に嬉しかったことである。新型コロナウイルスで発表会を行うことへの懸念もあったであろう中、先生方、地域の方々にも来場していただき、これまでの頑張りを披露する機会をいただけたこと、見ていただいたことは感涙にむせぶ思いであった。私たちは、見えないところで多くの人に支えられていることを実感した。

 以上のように、本学地域福祉学科の地域文化実習の授業では、他の大学ではほとんど経験できない地域文化を学び、学生たちの人間的成長にも大きくつながっています。なお、1月20日(土)に実施した地域文化実習発表会についての記事と演目発表を撮影した動画も本ウェブサイトで公開しておりますので、どうぞご覧ください。

(地域福祉学科教員 山内圭)