新見公立大学教職員が、学生に向けてお勧めの本を紹介する企画です。

専門分野の良書や、人生について考える書、面白い小説など、様々なジャンルの本が紹介されています。

推薦図書を通じて普段はなかなか接する機会のない他学科の教員や、よく知っている教員の意外な一面を

発見することができるかもしれません。

紹介されている本は図書館で借りることができます。読書の後はぜひ感想を聞かせてください。

 

看護学科
健康保育学科
地域福祉学科

 

 

 

公文裕巳学長の読書ノート

ザリガニの鳴くところ(早川書房 2020) ディーリア・オーエンズ 著 , 友廣 純 訳

 全米500万部突破の話題作。家族に見捨てられた少女カイアが、6歳から

広大な湿地でたったひとり、豊かな感性により湿地の研究者にまで逞しく

成長していく過程と青年の不審死をめぐる犯人捜しのミステリーがスリリング

に並走する物語。動物学者で動物行動学が専門の著者が70歳での処女作で

描いた野生の本質、小説のおもしろさが満喫できる傑作。

 

 

少年と犬(文藝春秋 2020) 馳 星周 著

 第163回(2020年)直木賞受賞作品。東日本大震災で飼い主とはぐれた

シェパードの雑種犬「多聞」が、東北から魂のつながる少年と再会する

ために九州を目指して日本列島を横断する物語。旅の途中で出会い、共に

過ごすパートナーと波乱に満ちた生活を連作短編集で綴り、ついに少年と

再会する。人の心を理解し寄り添う犬が、人間の生活にとって特別な意味

をもつ動物であることを伝えてくれる感動の物語。

 

21 Lessons 21世紀の人類のための21の思考(河出書房新社 2019) ユヴァル・ノア・ハラリ 著 , 柴田裕之 訳

 21世紀の人類のための21の思考として、政治思想、社会問題のほかに「謙虚さ」や「意味」などの

哲学的課題がとりあげられている。人工知能(AI)が、認知的な能力においても人間を上回り、人間の

情動や欲望が生化学的なアルゴリズムにすぎないとしたら、AIがホモ・サピエンスを上回っても不思議

ではない。転換期の人類が変化に対処し、新しいことを学び、馴染みのない状況下でも心の安定を保つ

能力を身につけるための指南書。

 

 

 

 

看護学科

上山和子先生の読書ノート

妻を看取る日 国立がんセンター名誉総長の喪失と再生の記録(新潮社 2009) 垣添 忠生 著

 国立がんセンター名誉総長のがんの専門医である垣添先生の最愛の妻を

看取った体験記です。垣添先生は、本学40周年の記念講演でこの内容に

ついて講演をいただいた。今回、改めて、垣添先生の家族としての想いがつづ

られている書を拝読し、特に医療を目指す学生にとっては、心打たれる内容と

思います。喪失感とはどんな思いなのか。がん看護を目指すものにとって、

どう家族と向き合っていくかなど。示唆を得られる体験記だと思います。

 

コロナ後の世界を語る 現代の知性たちの視線(朝日新聞出版 2020) 養老 孟司 [ほか]  著

 今回のコロナ禍を語る識者の体験談として「コロナの時代をどう生きるか」という問いかけに

養老孟司氏は、ヒトとウイルスは不要不急の関係であり、ヒト集団の中で生き続け、薬剤が開発され

多くの人が免疫をもち、一種の共生関係が生じて、不要不急の安定期に入ることを挙げています。

また、本学の40周年記念講演で語られた藻谷浩介氏は、今回のコロナ危機は、ライフスタイルを変える

好機になっており、東京への一極集中主義を是正する機会になり、地方創生の観点から述べられて

います。色々な分野からの提言を拝読してみませんか。

 

渋沢栄一 日本のインフラを創った民間経済の巨人(筑摩書房 2020) 木村 昌人 著

 新1万円札の肖像に選ばれた人物に焦点を当てた書です。江戸時代末期

に生まれ、明治・大正・昭和の時代を生き抜き、「近代日本資本主義の父」

と称される実業家です。日本は、現在コロナ禍の時代で大きな社会的転換期を

迎えています。その中、明治時代、自由な討論をとおして、「論語」「算盤」

「民主化」という3つのキーワードを唱え、社会福祉、教育などにも深く

関わっていった人物の思想や行動について解説した書です。

 

 

金山時恵先生の読書ノート

なぜ人と人は支え合うのか 「障害」から考える(筑摩書房 2018) 渡辺 一史 著

 この本の作者は「こんな夜更けにバナナかよ」の原作者です。多くの

障害者と交流するなかで、見聞きしたこと、感じたこと、考えたことから、

障害者の福祉の意味、人と人が支え合う意味を問い直しています。それは、

障害者について考えることは、健常者について考えることであり、自分自身

について考えることであるとしています。改めて、人と社会、人と人の

あり方を考えることができます。

 

 

保育園・幼稚園のちょっと気になる子(ぶどう社 2020) 中川 信子 著

 著者は言語聴覚士であり、幼児の言葉の相談にのり子どもの発達支援に携わって来られた第一人者

です。ちょっと気になる子はできない子ではなく、発達上何らかの弱さを抱えているだけであり、

子どもの特性にあわせ丁寧に配慮された工夫や関わり方で変わるといいます。子どもの側に立ち推測

すること、そのためのヒントが書かれています。

 

コミュニティナース まちを元気にする“おせっかい"焼きの看護師(木楽舎 2019) 矢田 明子 著

 コミュニティナースという言葉は目新しいかもしれません。地域で活動

する看護師となりますが、看護の専門性を活かしながら、まちに出て多様な

ケアを実践する看護師をいいます。この活動を一人で始めた矢田明子さんは

島根県出雲市出身です。コミュニティナースは新しい働き方であり、

「おせっかい」を提供するという地域ケアに取り組む奮闘記となっています。

 

 

 

四宮美佐恵先生の読書ノート

小さな悟り 人生には「小さな答え」があればいい(三笠書房 2018) 枡野 俊明 著

 この本では、余計な考え・迷い・情報を取り除いて、人生や生活の本質を

直視してシンプルに行動するための、ヒントが書いてあります。困ったとき、

悩んだとき、迷ったときにこの本を読むと、色々な考えが頭の中に渦巻いて

身動き取れなくなりそうな自分を「小さな悟り」によって救い出してくれ

ます。

 

 

脳に悪い7つの習慣(幻冬舎 2009) 林 成之 著

 この本では、脳が情報を受け取り、感じ、理解し、思考し、記憶するという

順番に従って「脳に悪い習慣」と「その習慣をやめ、脳を生かすための具体的

な方法が書かれています。そして、脳は、人に興味をもち、好きになり、心を

伝え合い、支え合って生きていく。『違いを認めて、共に生きる』ことを

望んでいることを知ることが出来ます。

 

 

 

「いいこと」をどんどん引き寄せる! 言葉の習慣(PHP研究所 2013) 植西 聰 著

 日本には、『言霊』という言葉があり、言葉には魂が宿っていると昔から

信じられてきました。言葉には人の運命を変える力があり、言葉のパワーは

計り知れないものです。プラスの言葉をたくさん使って、心をプラスの状態

にしている人には、いいことがたくさんやってくるそうです。この本では、

人生をより良い方向へ導く言葉の使い方について、様々な視点から説明して

います。

 

 

 

矢庭さゆり先生の読書ノート

「老い」を生きるということ 精神病理とケア (中央法規出版 2012) 竹中 星郎 著

 人が“老いる”ということはどういうことなのか、きちんと理解をしておく

必要がありますね。この本は老年精神医学領域の著者ならではの視点で

書かれています。喪失体験、孤独、孤立、適応への歩み、今、起きている

高齢者の現実の暮らしに向き合い、そのストーリーを理解する。高齢者保健、

認知症ケアに携わる専門職にはぜひ読んで欲しい1冊です。

 

 

単身急増社会の衝撃(日本経済新聞出版社 2010) 藤森 克彦 著

 今後、単身世帯の急増が現実のものとなっています。結婚し同居家族が

いることが当然視されていた従来の日本社会にとって、大きな意識改革が

必要となります。血縁を超えて地域で支え合っていく社会の再構築が求め

られ、地域コミュニテイの大切さについて再確認できます。関連科目の

副読本としてもお勧めします。

 

 

長生きできる町(KADOKAWA 2018) 近藤 克則 著

 “健康格差”で著名な近藤克則先生の本です。寿命は環境で異なることに

加えて0次予防の大切さを説明し、環境を変えることで人々の行動を変える

重要性を示唆しています。男性の孤食は死亡リスク1.5倍、笑わない人は

1.5倍不健康などデータをもとに明確に解説されておりコンパクトで分かり

やすいです。研究のヒントも得られそうです。

 

 

 

 

原田信之先生の読書ノート

新見公立大学 創立四十周年記念誌(新見公立大学 2020) 創立四十周年記念誌編集委員会 編

 本学では10年ごとに記念誌を刊行しており、本書は創立以来4冊目の記念誌となる。この40年間で

校名も新見女子短期大学、新見公立短期大学、新見公立大学と変わった。本書は特に2010-2020年の

出来事を中心にまとめてあるが、わかるうちに昔のことをできるだけ記録しておくことを目指して編集

された。付録DVDには本書の全頁PDFデータと各種動画が収録されている。本学の歴史を知るのに最適な

1冊といえよう。

 

本屋を守れ 読書とは国力(PHP研究所 2020) 藤原 正彦 著

 江戸末期の日本の識字率は90%ともいわれ断トツの世界一で、江戸に

800軒、京都に200軒の本屋があったという。著者は読書こそが日本の

国柄で隠れた国力であり、小さな島国が維新後30余年で列強入りしたのも

ノーベル賞を多数取っているのもこの真の国力があったからだと述べて

いる。そして、読書を支えた本屋が20年前に比べ半数以下と急減している

ことから、あらゆる手段を用いて本屋を守ることが必要と主張している。

 

 

美意識の値段(集英社 2020) 山口 桂 著

 著者はクリスティーズジャパン代表取締役社長で、日本美術作品史上最高額(約14億3千万円)である

伝運慶の仏像の落札にかかわった人である。1766年創業のクリスティーズは、ライバルのサザビーズと

ともに世界2大オークション・ハウスとして知られる老舗で、現在の収益は世界で最も規模が大きい。

著者は評価の定まった最高級の本物を観ることが重要で、アートは仕事に役立つ教養ではなく「本物」の

教養だと主張している。

 

 

土井英子先生の読書ノート

癒える力(晶文社 1999) 竹内 敏晴 著

 看護理論家のヘンダーソンは「患者の皮膚の下に潜り込む」ことが看護に重要と述べています。

本書には、「その皮膚の下」に潜り込むことの意味を「ひとの身になる」という言葉で表しています。

その他にも、「凍らせた綿棒で口の中を刺激すると、ゴクンとできた。ゼリーを入れて、ゴックン」と

新聞の記事をのせて、「人」としてのからだについて述べられています。特に看護・介護を専門職と

する人は手にとってください。

 

ケアリング 看護婦・女性・倫理(メディカ出版 2000) ヘルガ・クーゼ 著 , 竹内 徹、村上 弥生 監訳

 オーストラリアの倫理学者がケアリングについて書いています。ケアの倫理についても言及して

おり、看護や介護や保育について学ぶ学生には是非読んで欲しいと思います。

 

チーム医療と看護 専門性と主体性への問い(看護の科学社 2016) 川島 みどり 著

 チーム医療とは何か、そこでの看護の専門性とは何かを考えるために有用な書籍です。特に、看護

の専門性とは何かを改めて考えて欲しいと思い推薦します。

 

 

木下香織先生の読書ノート

支える側が支えられ生かされていく 認知症になった母が教えてくれたこと 自選藤川幸之助詩集致知出版社 2020) 藤川 幸之助 著

 認知症の母の介護を父から託され、介護体験から7冊の詩集を纏めた著者が、24年間の介護の歩み、

足跡の集大成とした1冊です。著者が選びぬいた詩が並び、5つの章立てに母の認知症の進行や介護する

著者自身の変化が浮き彫りになっています。ときには、介護に後ろ向きな気持ちになるときだってある

、、、母の声なき声に救われるときも、、、まさに「支える側が支えられ生かされる」のだと感じられ

ると思います。

 

一本の線をひくと(クリエイツかもがわ 2020)藤川 幸之助 さく , 寺田 智恵 え

 絵本 子どもに伝える認知症シリーズ(全5巻)の一冊です。知識として「認知症伝える」のでは

なく、認知症のひとの言葉や行動、家族や周囲の人との関わり、そのまるごとを描くことで「認知症

伝える」内容になっています。推薦したこの本では、『こっちとあっち』『自分と関係ない世界』と

線を引いてしまっていたことで見えなくなってしまうものがあることを教えてくれています。

 

ボクはやっと認知症のことがわかった 自らも認知症になった専門医が、日本人に伝えたい遺言(KADOKAWA 2019) 長谷川 和夫、猪熊 律子 著

 『自らも認知症になった専門医が、日本人に伝えたい遺言』…そうです、

認知症スクリーニングのスケールを開発した長谷川和夫先生が、ご自身の

認知症での体験を著した一冊です。長谷川式スケールの開発秘話の章では、

約半世紀前のことが克明に記されています。さすがです。「認知症になって

わかったこと」の章では、認知症の当事者…「本物(著者談)」だからこそ

の体験や想いから「本物の学び」を得る一冊です。

 

 

栗本一美先生の読書ノート

命あるがままに 医療的ケアの必要な子どもと家族の物語(中央法規 2020) 野辺 明子、前田 浩利 編著

 本書は、医療的ケアの必要な子供と家族の物語です。

 人口呼吸器や経管栄養などを必要とする子供たち6人の医療的ケア児とその

ご家族が、地域で暮らすことの難しさと葛藤、喜びが書かれています。医療

従事者の私たちは、地域包括ケアが推進されている現代、医療的ケア児も住み

慣れた地域でご家族と共に生活ができることを目指さなければならないと

思います。そのため、この本は、医療的ケアが必要な子供とご家族のとても

貴重な思いを知ることができる本です。

 

ボランティアナースの奇跡(アートデイズ 2020) 菅原 由美 編著

 著者の菅原 由美さんが1997年に立ち上げた訪問ボランティアナースの会「キャンナス」の活動と歴史

を綴った本です。「キャンナス」は、困っている人を助けたいという思いから設立され、現在は全国

136カ所にあり、岡山にもあります。本書には「非常時も支える・寄り添う―被災地支援活動 西日本豪雨

被災地支援」として西日本豪雨の時の支援活動や病院、施設と自宅への橋渡しをした事例などが多く書か

れています。

 

私の患者になってくれてありがとう 残存小腸0cmの短腸症候群17年間の在宅静脈栄養の軌跡(フジメディカル出版 2019) 井上 善文 著

 著者が主治医として関わった残存小腸0㎝の短腸症候群の患者さんが亡くなるまでの17年間の

在宅静脈栄養(HPN)の軌跡をたどった話です。彼女は、長期HPN患者として世界で9例目であった妊娠・

出産も成し遂げ、子供との在宅生活と入院を繰り返しながら人生を送ります。短腸症候群という珍しい

症例理解と、患者さんが生きていくための「栄養」とは、在宅生活の意味などを考えてもらいたいです。

彼女は、教員であり私の幼馴染です。亡くなった後も書籍という形で、私たちに教えてくれていると

思っています。

 

 

郷木義子先生の読書ノート

いのちをめぐる物語 死ぬって怖い?(神戸新聞総合出版センター 2020) 神戸新聞社 編

 人はいつか死ぬ―その時を、あなたはどう迎えますか?

 看取り、介護、孤独死、終末期医療、安楽死―― 一人ひとりの人生に向き合い、現場の生の声を

拾い、対話を重ねて、それぞれの「いのちの終わり」を見つめた新刊図書です。

 

 

礒本暁子先生の読書ノート

はたらく細胞(講談社 2018‐) 清水 茜 原作・イラスト , 時海 結以 著

 主に免疫系の細胞の働きを擬人化した漫画です。とっつきにくい免疫機能が

ぐっと身近に感じられます。人体の神秘にほれぼれするかもしれません。

 

 

 

 

 

ライオンのおやつ(ポプラ社 2019) 小川 糸 著

 最期のときまで自分の人生を生きる。しーちゃんにとって、

ホスピス:ライオンの家で思い出のおやつを食べる時間は、生きているこの

瞬間を慈しむ時間でもあり、これまでの人生を懐かしむ時間でもある。

一人ひとりにとってのライオンのおやつが探せたらよいな、そんなことを

感じた一冊です。

 

 

ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力(朝日新聞出版 2017)帚木 蓬生 著

 不確実で混とんとした事態、理不尽だと感じる状況の中でも、性急に答えを

出さずに耐える。そして、それぞれの立場で物事を考えながら、落としどころ

を探る。今の自分自身に必要な能力はこれかもしれないと感じた書籍です。

白黒つけ過ぎず丁度良いバランスを保つには、耐える力が必要なのかも

しれません。

 

 

 

矢嶋裕樹先生の読書ノート

コロナの時代の僕ら(早川書房 2020) パオロ・ジョルダーノ 著 , 飯田 亮介 訳

 本書は、日本に先んじて感染拡大に見舞われたイタリアにおいて、

ベストセラー作家である著者が、コロナ禍に直面して感じたこと、考えたこと

を綴ったエッセイ集である。数学や物理に造詣が深い著者ならではの視点で、

コロナによってもたらされた「非日常」から私たち人類が学ぶべき教訓を

探ろうと試みる。読めば多くの「気づき」が得られるであろう。

 

 

仕掛学 人を動かすアイデアのつくり方(東洋経済新報社 2016) 松村 真宏 著

 公園のゴミ箱にバスケットゴールをつけると、ポイ捨てが減る。このように「ついしたくなる」ような

仕掛けをうまく利用すれば、わざわざ口頭や貼り紙で注意しなくても、人々の行動を望ましい方向に

変えることができる。事例紹介にとどまらず、仕掛けの原理や発想法なども平易な言葉で解説されて

おり、大変参考になる。

 

日本人のための声がよくなる「舌力」のつくり方 声のプロが教える正しい「舌の強化法」(講談社 2018) 篠原 さなえ 著

 普段聞く自分の声と動画を通して聞く自分の声はかなり違う。普段聞く

自分の声には骨導音が混ざるが、動画を通して聞く自分の声には骨導音が

混ざらないからである。普段聞く自分の声で相手も自分の声を聞いていると

思い込んではいけない。オンライン授業導入より、動画を通して自分の声を

聞く機会が増えたが、残念ながら聞きやすい声とは言えない。私同様、滑舌が

悪い、人によく聞き返されるなど、発声に悩む人におすすめの本である。

 

 

塩見和子先生の読書ノート

渋沢栄一に学ぶ福祉の未来(青月社 2019) 杉山 博昭 著

 今年の大河ドラマの主人公、新一万円札の人。諸作ありますが、読みやすいです。一般的によく知られ

ているのは経済人としてですが、福祉・医療にも多大な貢献をされ、その業績が分かりやすく綴られて

います。弱い立場にある人を救済してきた徳のある人柄にも触れることができます。

 

つまずき立ち上がる看護職たち 臨床の知を劈く看護職生涯発達学(医学書院 2019) 佐藤 紀子 編著

 看護職が仕事を継続していくことの意義と価値について、生涯発達学という切り口から考えることが

できます。看護職が生涯のキャリアの各時期で経験されたことも書かれています。キャリアの分岐点

では葛藤しつつも前に進むこと、看護職の働き続ける力とはどんなことかを知ることができます。

 

感情と看護 人とのかかわりを職業とすることの意味(医学書院 2001) 武井 麻子 著

 タイトルに看護とありますが、看護だけでなく、あらゆる対人サービスなど、人とのかかわりを職業

とする人々すべてを対象とされた書です。家族や組織、さまざまな場においての新たな人間関係を考える

上で参考になるでしょう。

 

 

山本智恵子先生の読書ノート

余命10年(文芸社 2017) 小坂 流加 著

 20歳の主人公は難病で余命10年と宣告をうけます。みなさんは、同じ立場ならどのようにこの余命を

過ごしていきますか?余命が数か月という本はいくつか読んできましたが、この本は10年。未来に制限が

ある時、人はどう過ごすのだろうと思いながら読みました。作者は、この単行本の出版前に亡くなって

しまったようです。この本はフィクションのようですが、作者自身のことも重ねられている気がします。

 

ナイチンゲールの『看護覚え書』 イラスト・図解でよくわかる!(西東社 2014) 金井 一薫 編著

 2020年はナイチンゲール生誕200年という年でした。看護覚え書初版発行

が1859年で今から161年前のことですが、今でも本は読み継がれています。

看護覚え書をはじめから読むのはちょっと…と思っている方、ぜひこの本を

お薦めします。イラスト・図解もあり、読みやすい本です。現代の看護に

合わせてわかりやすくまとめてあり、看護する上で迷ったときにもヒント

になると思います。

 

看護実践の語り 言葉にならない営みを言葉にする(新曜社 2016) 西村 ユミ 著

 作者が看護師の『実践知』についての研究の一環としてグループ

インタビューしたものをそのままの語りと合わせて看護実践について詳細に

書かれています。臨床経験年数が10年前後の看護師6名が語り合い、その語り

から実践知を言葉にしている本です。わかりやすい言葉で語られており、実習

に出た後や就職前に読むと看護の面白さも少しわかるのではないかと思い

ます。

 

 

真壁五月先生の読書ノート

看護職としての社会人基礎力の育て方 専門性の発揮を支える3つの能力・12の能力要素(日本看護協会出版会 2018) 箕浦 とき子、高橋 恵 編

 IT化、グローバル化が進んだ現代において、さまざまな環境で多様な人々とかかわり、自分自身を成長

させることのできる人間力をもった人材が求められています。経済産業省はその力を「社会人基礎力」

として発表し、学生の頃から高めていくよう推奨しています。これは新人のみならず指導者、管理者

にとってもキャリア形成には不可欠の考え方です。本書では看護職に焦点を当て、具体的な事例を挙げて

わかりやすく解説されています。

 

黒田裕子の入門 看護診断(照林社 2018) 黒田 裕子 著

 看護診断について、また看護診断NANDA-Iと、NOC(看護成果分類)、

NIC(看護介入分類)との関連について身近な事例を用いて説明されて

います。初めて看護診断を学ぶ看護学生の皆さんにはお勧めの一冊です。

 

 

 

 

あめつちだれかれそこかしこ(マッグガーデン 2014-) 青桐 ナツ 著

 両親を亡くし、天涯孤独の身だと思っていた青年が、会ったこともない

祖父から埃積もる古民家を相続します。他人と距離を置くクールな青年が、

古民家に集う神様たちとの交流により、少しずつ若者らしさを取り戻していく

物語。この本を読んだ後、家の神棚を掃除し、子どもの頃、信心深かった

祖父と雪をかき分けながら年始のご挨拶に行った山の斜面にある土地神様の

小さなお社に、数十年ぶりにお酒とお米を供えに行きました。

 

 

安田陽子先生の読書ノート

結局、「すぐやる人」がすべてを手に入れる 能力以上に結果が出る「行動力」の秘密(青春出版社 2015) 藤由 達藏 著

 「いつもギリギリにならないと動けない」「先延ばし、先送りグセがある」

「考えているうちにチャンスを逃す…」まさにそんな自分が「10秒あれば

誰でも抜け出せる!」なら読むしかないと手に取りました。すぐやるか、

やらないか、行動に移せるためのヒントが書かれています。

 

 

 

1日10分のごほうび(双葉社 2020) 赤川 次郎 [ほか] 著

 NHK国際放送のラジオ番組で世界17言語に訳して朗読されたうちの8作品が収録されています。

それぞれ異なるジャンルやストーリーで短い作品ながら、微笑ましくも、ジーンと感動し涙したり…。

1日のほんの少しの時間、ほっこりとするのも悪くないですよね。

 「1日10分のしあわせ」「1日10分のぜいたく」も同時に読んでみてはいかがでしょうか。

 

いのち輝くいい話 忘れられない看護エピソード(河出書房新社 2013) 日本看護協会 編

 看護にまつわる感動のエピソードを募集する「忘れられない看護

エピソードコンテスト」があります。その応募作品から、看護師や患者・

家族の忘れられないエピソードが収載されています。看護する看護師の

想いと看護される患者・家族の感謝の気持ちが詰まっています。人に

寄り添える看護の素晴らしさを感じる1冊だと思います。

 

 

 

赤田いづみ先生の読書ノート

モリー先生との火曜日(NHK出版 2018) ミッチ・アルボム 著 , 別宮 貞徳 訳

 モリー先生は、難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)に侵されていました。動かなくなった体で人と

ふれあうことを楽しんで生活しており、16年ぶりに再会した主人公のミッチに毎週火曜日をくれました。

モリー先生最後の講義のテーマは、「死」「恐れ」「老い」「欲望」「結婚」「家族」「社会」「許し」

「人生の意味」についてです。医療従事者を目指す学生だけでなく、すべての学生に読んでもらいたい

1冊です。

 

野心のすすめ(講談社 2013) 林 真理子 著

 中学時代はいじめられっ子、その後もずっと怠け者だった著者の

林真理子さんが、なぜ強い野心を持つ人間になったのかについて書かれた

ものです。全敗した就職試験、どん底時代を経ての鮮烈なデビュー、

その後のバッシングを振り返り、“低め安定”の世の中にあえて「野心」の

必要性を説いています。特に女子学生にはこれからの人生のキャリア

について考える際に参考になる本だと思います。

 

 

幸せになる勇気(ダイヤモンド社 2016) 岸見 一郎、古賀 史健 著

 「嫌われる勇気」の続編ですので、そちらを読んでから読むことをお薦め

します。前作の青年が教職に就き、アドラーの考えを実践しようとした際の

苦悩から話が始まります。どうしても日常では自分自身に意識が向きがち

ですが、視野を広く持ち自らがどのように動いていくべきかについて考える

きっかけにもなると思います。社会人になる今の時期に「嫌われる勇気」

とともに読んでおくと良い本だと思います。

 

 

丸山純子先生の読書ノート

希望学(中央公論新社 2006) 玄田 有史 編著

 「希望学」とは、東京大学社会科学研究所の著者らが2005年に発足

した新たな学門。コロナ禍となった本年、我が家の本棚にあった本書が

目に留まりました。希望を個人の性格や感情としてだけでなく、社会の

産物もしくは原動力として科学的に考察しています。「かつての希望は

失われたが、挫折を経験し別の希望へと修正を遂げた人が、やりがいに

最も出会っていた」というデータにはなるほどと実感しました。「希望」

とは何かを考え、学生時代にぜひ読んでいただきたい1冊です。

 

人間の値打ち(集英社 2017) 鎌田 實 著

 資本主義により引き起こされる格差社会において、「人間の値打ち」について考えさせられる1冊

です。精神医学者フロイトの「人間は絶望したとき、この二つがあれば生きていくことができる。

ひとつは働く場があること、もうひとつは愛する人がいること」との言葉から、日本社会の過重労働

問題、イラクの難民キャンプ地での支援の在り方にまで切り込んだ奥深い内容でした。価値ある人生

を生きるヒントが見つかると思います。

 また、著者の鎌田先生は毎年元旦の当直を引き受け、患者さん一人一人全員に「今年こそ元気になろ

う」と声をかけていた、という医師としての真摯な姿に感動しました。

 

星のかけら(新潮社 2013)重松 清 著

 「星のかけらがお守りになるんだ。」小学6年生のユウキが塾の友達から

聞いた「星のかけら」を探しに行った夜、交差点で交通事故により亡くなった

フミちゃんに出会ったことから始まる全6章の短編小説です。同じ年ごろの

子供を持つ母親となって読み返すと、本編の子を亡くした母親の姿が焦点化

され、涙を止めることができませんでした。

 「生きているひとは、みんな、自分の力で歩いていかないといけない―。」

命の意味に触れ、少しずつ大人に近づいていく少年たちの描写や声が聞こえて

きそうな言葉の綴り方に感嘆します。命に係わる職を目指すみなさんに、ぜひ読んでいただきたい1冊

です。

 

 

吉田美穂先生の読書ノート

死ぬ瞬間の5つの後悔(新潮社 2012) ブロニー・ウェア 著 , 仁木 めぐみ 訳

 コロナ禍でこれまでと違う生活になったことで、これからのこと(人生)を

考える機会が増えたように思います。著者は緩和ケアの介護に長年携わった

経験から、人生をどう過ごしたらよいかということを綴っています。共感

できる部分があるのではないかと思います。

 

 

 

優しい音楽(双葉社 2005) 瀬尾 まいこ 著

 3つの物語からなる短編集です。どの物語も登場人物が少し変わっていて、内容も不思議な感じが

します。しかしながら、どの物語もとても温かく、愛にあふれていると思います。ほっこりとした

気分になりたいときにおすすめです。

 

i(アイ)(ポプラ社 2016) 西 加奈子 著

 シリア人のアイはアメリカ人の父と日本人の養父母に育てられます。他人と違う自分の容姿に悩み、

疎外感を感じたりしながら、思春期のアイが大人になっていく間の様々な苦悩が描写されています。

私自身、人と同じであることに安心感を持つこともあります。自分とは何か、考えるきっかけをくれる

と思います。

 

 

西川由貴子先生の読書ノート

わたし84歳、今がいちばん幸せです! スピリチュアルな生き方が夢を実現させる(ロングセラーズ 2019) 広瀬 尚子 著

 いつ何が起きても不思議でないのが人生であり、今出来ることは「今を生きること」であるとの語り

より、一日一日をもっと大切に生きようと思わせてくれます。幸福感のベースには、意識の変容が大きく

関わり、「意識」が変われば人生は変わっていく。これからの人生において、自分次第で意識が変わる

ことができるので、ご縁に感謝しながら生き方を考えてみませんか。そして、今を生きているだけで、

素晴らしいと思える本です。

 

いのちをいただく(西日本新聞社 2009) 内田 美智子 文 , 諸江 和美 絵

 人間は食べなければ生きてはいけません。でも食べるということは、他の命を奪うということを、牛の

みいちゃんの感動の実話から気づけます。助産師である筆者は、生命の誕生に触れているからこそ、

「命の大切さ」や「いのちをいただく」ことが、どのくらいの重みがあるかを伝えてくれます。食べ物が

溢れている現代社会において、食べ物のありがたみを「命」として考えることができる本を、手にとって

読んで欲しい一冊です。

 

ドキュメント豪雨災害 西日本豪雨の被災地を訪ねて(山と溪谷社 2019) 谷山 宏典 著

 「平成30年7月豪雨」あと少し早ければ助かった命もある。人はなぜ逃げ遅れるのか。なぜ生き延び

られたのか。臨床心理士会のメンバーとして、災害へのさまざまなアセスメントの視点から執筆して

います。また、子どものメンタルヘルスへの支援を行う場合、「保護者の笑顔を取り戻せないと子ども

の笑顔は取り戻せない」ことを常に念頭におくことを気付かせてくれる本です。減災のため、自分に

できることは何かを考えて欲しい。

 

 

平田知子先生の読書ノート

僕たちは、宇宙のことぜんぜんわからない この世で一番おもしろい宇宙入門(ダイヤモンド社 2018) ジョージ・チャム、 ダニエル・ホワイトソン 著 , 水谷淳 訳

 2020年12月6日、日本の小惑星探査機「はやぶさ2」からのカプセルが

地球に帰還したニュースはまだ記憶に新しいのではないでしょうか。本書

は、宇宙論の入門書です。ダークマター、ダークエネルギーをはじめ耳慣れ

ない言葉も出てきますが、イラストを交えて楽しく分かりやすく宇宙について

解説されているので、興味がある方はぜひ手に取ってみてください。

 

 

世界で一番美しい深宇宙図鑑 太陽系から宇宙の果てまで(創元社 2016) ホヴァート・スヒリング 著 , 武井 摩利 訳

 美しい写真や想像図を眺めるだけでも癒されます。私たちが暮らしている

地球から始まり、太陽系、銀河、銀河団、宇宙へと、ページが進むにつれて

広大な宇宙へと連れていってくれます。地球よりはるかに大きな太陽系で

すら、天の川銀河の中央から遠く離れた小さな天体であり、その信じられない

くらい大きな天の川銀河ですら、宇宙の中では小さな存在にすぎないこと思う

と、本当に不思議な気持ちになります。

 

NICU命の授業 小さな命を見守る最前線の現場から(赤ちゃんとママ社 2020) 豊島 勝昭 著

 著者は、ドラマ「コウノドリ」の医療監修もされている、神奈川県立こども

医療センター新生児科医の豊島勝昭先生です。本書によれば、およそ33人に

1人の赤ちゃんがNICUに入院して何らかの治療を受けています。NICUは

それほどなじみのない場所かもしれませんが、本書にはNICUがどんな場所

で、どのように小さな命とその家族に向き合っているのか、NICUを卒業した

後の生活の様子などについて分かりやすく書かれています。

 

 

山本裕子先生の読書ノート

スタンフォードの自分を変える教室(大和書房 2012) ケリー・マクゴニガル 著 , 神崎 朗子 訳

 スタンフォードの人気講義と書いてあるのを目にして、思わず読みたく

なった一冊です。「自分を変えたい」という文字を見ると、変えたい部分が

いくつか頭に浮かぶのではないでしょうか。まず自分を客観的に見ていく

こと、そして、子どもの時からずっと言われていた睡眠のとり方が書いて

あり、今すぐ実行できそうなことがたくさん載っています。怠けているな

と思っている方は是非読んでトレーニングしてみてください。

 

鏡の法則(サンマーク出版 2017) 野口 嘉則 著

 「9割の読者が涙した」に惹かれ軽い気持ちで手に取った本でしたが、私も涙が自然と溢れて

きました。コロナ禍で家族と自由に会えない状況や離れて暮らすようになったからこそ気づく家族の

愛情をこの本がより一層気づかせてくれるように思います。家族という近い存在だからこそ言いにくい

言葉、伝えられないことはたくさんありますが、この本を読むと家族だからこそ伝えてみようかなと

思えるようになりました。

 

人生が劇的に変わる スロー思考入門(ビジネス社 2017) 香山 リカ 著

 こんなことあるある!とまるで自分の日常生活を見ているようでした。自分のことを棚に上げるとか

休日にゴロゴロしすぎるとか、こんなのじゃダメだなと思っていましたが、「それで良い!」と背中

を押してくれる内容で、とても気持ちが楽になりました。自分に優しく甘いというのは精神衛生上

とっても大切なことなんだと気づきました。息抜きにピッタリの本でした。

 

 

宮武一江先生の読書ノート

わすれられないおくりもの(評論社 1986) スーザン・バーレイ さく・え , 小川 仁央 やく

 はじめて読んだのは小学生の頃です。誰からも慕われていたアナグマが老い

により死を迎え、かけがえのない友(アナグマ)を失ったまわりの動物たちが

悲しみを乗り越えていく話です。大人になって読み返すと、読む人それぞれの

思いや経験によって、様々な感じ方があると思います。グリーフケアにも用い

られている本ですので、医療者になる皆さんには是非読んでいただきたい一冊です。

 

夢をかなえるゾウ(飛鳥新社 2011) 水野 敬也 著

 夢をかなえるために、ガネーシャから出題される課題を実行していく

というお話です。多くの方が読まれているかと思いますが、今一度、読んで

みてはいかがでしょう。一歩ずつ前に進むための「習慣化」の大切さを教え

てくれる一冊です。

 

 

 

ためらいの看護 臨床日誌から(岩波書店 2007) 西川 勝 著

 患者と看護師のやりとりを描きながら、フロイトの書を引用し、看護に

ついて分かりやすい表現で説明しています。改めて、「看護には100%の

正解はない」ことに気づかせてくれる一冊です。

 

 

 

 

 

中川彩見先生の読書ノート

学びを結果に変えるアウトプット大全(サンクチュアリ出版 2018) 樺沢 紫苑 著

 インプット=「入力(読む、聞く)」することで「脳内世界」が変わり、

アウトプット=「出力(話す、書く、行動する)」することで「現実世界」が

変わるようです。多くの人はインプット:アウトプットを7:3で行っている

ようですが、成長するためには3:7の方が良いようです。一冊は少し分厚い

ですが、アウトプット上手になるためにも、気になるchapterだけでも

読んでみてはいかがでしょうか。

 

きみたちはどう迷うか これからキャリアを築くために必要なこと(大和書房 2012) 酒井 穣 著

 帯に「仕事人生は“選択の連続”でつくられる」と書かれていますが、仕事だけでなく、人生は選択の

連続です。皆さんの目下の岐路は就職活動かも知れませんが、今後様々な人生の岐路に立った時、どう

迷うか…というヒントを得てもらえたらと思います。大学生のA君と私との会話形式で展開されており、

読み進めやすいと思いますし、大学生の皆さんを投影できる部分も多いと思います。良かったら手に

取ってみてください。

 

仕掛学 人を動かすアイデアのつくり方(東洋経済新報社 2016) 松村 真宏 著

 人を動かすアイデア、仕掛けについて書かれています。世の中には思わずやってみたくなるような

仕掛けが多くあります。好奇心をくすぐる、無意識に働きかけるような仕掛けを応用することで人や

自分自身も動くように導けるかもしれません。人と関わる専門職の私たちがこの仕掛学知ることに

よって様々な行動にアプローチできるかもしれませんよ。専攻とは異なる学問を知り、視野を広げ、

人間の幅を広げるきっかけにしてみてください。

 

 

井上弘子先生の読書ノート

災害支援手帖(木楽舎 2016) 荻上 チキ 著

 募金をした経験がある方は、募金をしてみたはいいけけど、この後は

どのような流れで被災者に届けられるの?と疑問を持ったことはないですか。

何か支援をしたいけど、大学も休めないし、何もできないなぁ…と感じた

ことがある方には、ぜひ読んでほしい一冊です。現在のニーズに合致した

様々な支援方法を紹介してくれいます。 2021年1月時点ではネットで公開も

されています。そして日頃から減災への意識も持ってもらえると嬉しいです。

 

破局(河出書房新社 2020) 遠野 遥 著

 第163回の芥川賞受賞作品です。「破局」というタイトルだけにハッピーエンドな結末ではありません

でしたが、現実のようで、非現実の感じもするストーリーに引き込まれました。主人公は大学4年生の

男子学生で国家公務員を目指し勉強中、勉強も筋トレも計画通りストイックに進めることができる男の子

です。ストーリーは、卒業までの1年間の主人公を取り巻く人々や彼女との関係が描かれています。

男性の著者が男性の目線で書かれています。

 

飛べない鳥たちへ 無償無給の国際医療ボランティア「ジャパンハート」の挑戦(風媒社 2009) 吉岡 秀人 著

 途上国で医療活動を続けてる「ジャパンハート」を創設された吉岡秀人先生

の自伝&ミャンマーでの活動が書かれています。本の中には写真も多く掲載

されていて、最後のページは現地の方が手術を受けている時に、吉岡先生の

腕を握りしめる1枚でした。「不安と恐怖を抑え、勇気を持って、一歩踏み

出すと景色は変わる。」吉岡先生の言葉一つ一つには経験に裏付けされて

いるので、心に沁みます。迷っているときに読みたくなる一冊です。

 

 

多田めぐみ先生の読書ノート

最後の講義 完全版 石黒浩 1000年後のロボットと人間(主婦の友社 2020) 石黒 浩 著

 テレビで見逃したので、未放映を含めた書籍を読んでみました。石黒浩教授

が、‘今日が最後の講義だったら何を語るのか?’ ロボットについて、ひたすら

語られているのかと思いましたが、人間とは何かを常に考えることでした。

1000年後、人間は太陽からの放射能に耐えられず無機物として生き残る説

は、面白くもありましたが怖くもあり、人間の存在や身体について考える

ことに・・・。紹介されるアンドロイドやテレノイドを通して、自分自身を

客観視する良いキカイになりました。

 

82年生まれ、キム・ジヨン(筑摩書房 2018) チョ・ナムジュ 著 , 斎藤 真理子 訳

 韓国で130万部を売り上げ、大ベストセラーとなり社会現象にもなった本で

す。この本は、主人公キム・ジヨン氏(33歳)が、生まれてから学生時代、

恋愛、結婚、出産、育児などの人生を振り返る中で、女性が生きていく上での

困難や理不尽、不平等が細かく描かれています。私は、最後にキム・ジヨン氏

のカルテだったことに気付きましたが、共感と後戻りができない感覚になり

ました。今も、心にずっしり何かが残っている感じです。

 

イラストでよくわかる古事記の本(彩図社 2019) ミニマル、Blockbuster 編著

 本物「古事記」は、上、中、下の全巻3冊あります。今から1300年以上前の奈良時代中期に、文官であ

る太安万侶がそれまでの神話や天皇に関する歴史を編集し書き記したものです。

 このイラスト本は、近寄りがたいが知りたい「古事記」を、重要な所だけをわかりやすくイラスト入り

で解説してくれています。驚きましたが(知らなかった)が、アマテラスオオミカミがイザナキの禊に

よって生まれたこと・・・。スサノウノミコトは、思った以上に乱暴者だったこと。スケールが大きく

て笑ってしまいました。八岐大蛇や天石屋戸隠れの神話は、懐かしく読みました。

 

 

小林匡美先生の読書ノート

しろいうさぎとくろいうさぎ(福音館書店 1965) ガース・ウイリアムズ ぶん,え , まつおかきょうこ やく

 しろいうさぎとくろいうさぎがお互いのことを思い合い、結婚をするお話

です。まわりの動物にも祝福され幸せになります。素直になって大切な人を

大事にしてほしいという思いで、よく子どもに読み聞かせをしました。

読むとこちらまで幸せを感じられるような作品です。

 

 

「育ちがいい人」だけが知っていること(ダイヤモンド社 2020) 諏内 えみ 著

 育ちが良くて品のある人とはどんな人だろうと、興味を持って読みました。

ふるまい、話し方、見た目と、書かれていることができると一目置かれる存在

になるかもしれません。でも読んでいると分かっていることばかりで、

わかっているのに実践できていないなあと自分を振り返ることができます。

良い印象を与えることは、人との関係づくりでも役に立つことだと思います。

自分にとっても、まわりの人にとってもよい影響を与える本だと思います。

 

科学的な適職 4021の研究データが導き出す 最高の職業の選び方(クロスメディア・パブリッシング 2019) 鈴木 祐 著

 就職について考えるとき、何について考えたらよいのか?結局自分は何に向いているのか?ワーク

ライフバランスか金銭面で考えるのか?など迷うこともあると思います。そういった迷いの中で選択して

いくときに、アドバイスをくれる本だと思います。就職に迷ったとき、参考にし、自分のやりたいことを

考えられる手助けになるかなと思います。

 

 

安藤亮先生の読書ノート

SDGs(持続可能な開発目標)(中央公論新社 2020) 蟹江 憲史 著

 「SDGs:Sustainable Development Goals」は「持続可能な開発目標」

と訳され、昨今ニュースや新聞等で取り上げられることが多く、皆さんも

一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。この本ではSDGsの全貌

にはじまり、企業、自治体、そして個人レベルでの取り組みとその問題点

について分かりやすく書かれています。結びにはCOVID-19がSDGsに

与える影響についても考察があり、本書をSDGsについて知る足がかりに

するのもよいかと思います。

 

スマホ脳(新潮社 2020) アンデシュ・ハンセン 著 , 久山 葉子 訳

 スウェーデン出身の精神科医である著者が、スマートフォンはいかにして

私たちの脳を“ハッキング”しているのか、様々な研究によって得られた知見も

交えながら科学的に考察しています。日常生活の中でついついスマートフォン

を手にしてしまうことが多いと感じている方は、本書を読んでその付き合い方

を見直してみるのもよいかもしれません。

 

 

 

若年認知症 本人・家族が紡ぐ7つの物語(中央法規出版 2006) 若年認知症家族会・彩星の会 編集 , 宮永 和夫 編集代表

 若年認知症は一般的に働き盛りや、家庭における役割が大きい年代で発症

するため、生活や家族へ与える影響が大きいとされています。本書では、

若年認知症の当事者である本人・家族へのインタビューから、発症までの

経過と、発症後の生活に至るまでの困難や思い、希望について克明に記録

されています。また、当時における支援体制についても紹介されており、

若年認知症について理解を深めることができると思います。

 

 

難波香先生の読書ノート

コーダの世界 手話の文化と声の文化(医学書院 2009) 澁谷 智子 著

 コーダとは、聞こえない親をもつ子どもたちのことを言います。聞こえない

人の文化「ろう文化」を受け継いでいる一方で、聞こえる文化「聴の文化」

にも交わっている彼らが、二つの言語文化の間でどのような経験をして成長

していくのか。異文化のギャップについても、コーダの語りから知ることが

できます。また、親子関係を考えるきっかけにもなるので、ろう文化やコーダ

に関心のない方にもおすすめの一冊です。

 

Letters ~今を生きる「看護」の話を聞こう~ 私もエールをもらった10人のストーリー(メディカ出版 2020) 白石 弓夏 著

 患者さんや家族、または看護業界や医療業界を良くしたいと奮闘している10名の看護師の語りが

まとめられています。新生児集中ケア認定看護師、看護師兼イラストレーター、

Medical Design Engineerなど、様々な形で「看護」と向き合っている姿から、自分の知らなかった

「看護」の新たな可能性を感じることができます。私にできることは何だろう、と悩んだときに、

患者さんや看護と向き合って、自分なりの向き合い方を見つけるきっかけなればと思います。

 

ショートショートクリニック(キノブックス 2018) 田丸 雅智 著

 ちょっと変わった施術をする整体院、平熱のマイナス5度になると変わった現象が起こる病気、など

「医」がテーマになったショートショート集です。 一話5分あれば読むことができるので、忙しくて

本をゆっくりと読む時間がない方にも、また飽きやすくていつも最後まで読み切れないという方にも、

手に取りやすい内容になっています。慌ただしい日々の中の、ちょっとした息抜きになればと思います。

 

 

西村美紗希先生の読書ノート

自分を好きになりたい。 自己肯定感を上げるためにやってみたこと(幻冬舎 2018) わたなべ ぽん 著

 “どうせ私なんて…”から脱する、「自己肯定感を上げるために」の文字に興味がわき手にした

1冊。自分を好きになりたい、自信を持ちたいなど悩んでいる人のヒントになる本だと思います。

周りがどう思っているかより、自分がどうしたいのか。“自分だけでも自分の味方でいてあげて

”すごく素敵な言葉ですね。息苦しさを感じたら、読んでみてはいかがでしょうか。

 

看護技術の現在(勁草書房 1994) 川島 みどり 著

 授業の中で読んだ本ですが、看護とは何か、について考えさせられました。時代として変化

していく医療、職種専門性であるが、その中で看護師の専門性とは何なのか、患者に寄り添う

とはどういうものか、ということを問いただされます。どう寄り添うのか、自分の看護感を

見つめるときのヒントになりそうな1冊です。

 

子どもを叱りつける親は失格ですか?(KADOKAWA 2020) アベ ナオミ 著 , 小川 大介 監修

 タイトルを見たとき、“あっ!”と思いました。ガミガミ叱りすぎる母、

“私もあるな”と思いました。『叱る』も『ほめる』も『子どもを大事』に

思ってるから。また、母親が怒っているのは、いったい誰に対して何

でしょうね?母親になる女性はもちろん、共に子育てしていく男性にも

ぜひ読んでもらいたい1冊。

 

 

大島由美先生の読書ノート

おかあさんとあたし。1&2(大和書房 2014) ムラマツ エリコ、なかがわ みどり 著

 かわいいイラストで描かれた母と子の日常会話だけですが、小さい頃の

わが子たちとの毎日が思い出され涙が出ます。またあの頃は何ともない日常が

今となっては幸せでほっこりする毎日だったのだなぁとあらためて振り返る

ことができる1冊です。母親からの立場、子供からの立場で読んでも親子愛を

感じさせられます。小さい頃しか味わえないあのかわいい親子のやりとりを

思い出し、長いようで短い自身の子育てを応援してくれるそんな素敵な

本です。

 

実践!病を引き受けられない糖尿病患者さんのケア(医学書院 2019)石井 均 編集

 本書は糖尿病という慢性疾患を持つ患者さんの“こころ” に着目し、医療者がどう考え対応したらよい

か学ぶことができる本です。心理的アプローチの方法では、症例や座談会、さまざまな文献の紹介も

あり、実践してみようと思えるような1冊です。糖尿病に限らず、慢性疾患を持つ患者さんの治療継続

には効果・気持ち・行動の3要素それぞれに配慮するが必要があり、特にこころに注目している内容が

非常に勉強になります。

 

言葉で治療する(朝日新聞出版 2009) 鎌田 實 著

 患者さんの痛みには“肉体的な痛み”だけでなく、“精神的な痛み”や

“社会的な痛み”、そして存在の意味や自分が生まれたことに対する意味に

痛みを持つ“スピリチュアルな痛み”の4つを癒すには言葉の力が必要と教えて

くれます。患者さんを支えるコミュニケーションは簡単なようで難しいスキル

ですが、この本は患者さんとの関わりが多く紹介され、今後の自分の

コミュニケーションに変化をもたらせてくれそうな素敵な1冊です。

 

 

 

 

健康保育学科

斎藤健司先生の読書ノート

エレガントな宇宙 超ひも理論がすべてを解明する(草思社 2001) ブライアン・グリーン 著 , 林 一、林 大 訳

 超ひも理論説く世界は、エネルギーが極めて強く、かなり遠い将来にわたっても直接検証することは

困難と考えられている。すなわち、理論の展開は主として数学を用いた論証によっている。思索と論証

からはじまった自然哲学から実証を重視する科学が生まれたが、その最先端は再び実証の難しい領域に

さしかかり、思索と論証によって進歩する学問になっているのはおもしろい。

 

銃・病原菌・鉄(草思社 2012) ジャレド・ダイアモンド 著 , 倉骨 彰 訳

 この本は、なぜ地域によって先進国と発展途上国が生じたのかという疑問

について、徹底的に考察している。農業や文明の出現と伝播ということです。

化石人類の時代から、古代文明がはじまるころまでを対象としています。古い

本ですが、大変な名著だと思います。おすすめの一冊。

 

 

 

 

梶本佳照先生の読書ノート

日本史サイエンス 蒙古襲来、秀吉の大返し、戦艦大和の謎に迫る(講談社 2020) 播田 安弘 著

 歴史上の事象について、従来の根拠のない通説に疑問をもったエンジニアの

著者が「数字」を使ってなぞ解きをしています。事例としては、次の3つに

ついて書いてあります。

(1) 文永の役で蒙古軍はなぜ一夜で撤退したのか

(2)羽柴秀吉の「中国大返し」はなぜ成功したのか

(3)莫大な国家予算を投入して建造された戦艦大和は、なぜほとんど出撃し

ないまま沈没したのか。本当に『無用の長物』だったのか

 

世界のトップデザインスクールが教える デザイン思考の授業(日経BPマーケティング 2020) 佐宗 邦威 著

 ビジネスでは、最後に決断が求められます。この決断をするためには、細部

のことよりも「全体を俯瞰してまとめあげる」ノウハウを持っていることが

最も必要です。この全体を俯瞰する方法がデザイン思考です。複雑な事象を

図を使用してわかりやすく表す方法を具体的な事例を通して解説してあり

ます。

 

 

未来を変える目標 SDGsアイデアブック(Think the Earth 2018) Think the Earth 編著 , ロビン 西 マンガ

 SDGs(持続可能な開発目標)が提唱されていますが、何をどうすればよいのかよくわからないという

方が多いのではないでしょうか。この本は、開発目標の17について、アイデア事例が掲載され、各目標の

概念が理解しやすくなっています。この事例をヒントに、あなたなりの取組を考えてみてください。

 

 

松本好生先生の読書ノート

そうか、もう君はいないのか(新潮社 2008) 城山 三郎 著

 彼女はもういないのかと、ときおり不思議な気分に襲われる。気骨ある男

たちを主人公に、数多くの経済小説、歴史小説を生みだしてきた作家が、最後

に書き綴っていたのは、亡き妻とのふかい絆の記録です。終戦から間もない

若き日の出会い、大学講師をしながら作家を志す夫とそれを見守る妻がともに

家庭を築く日々、そして病いによる別れという感涙の手記です。「眠狂四郎」

でも知られる引退された俳優の田村正和さんが演じる主人公で放映もされ

ました。年配の人の別れの手記の中に学生の皆さんのご両親の内的世界を垣間

見ることができ、皆さんのこれからの人生で役立つことが十分に盛り込まれていることばかりかと思い

ます。青年期を生きている大学生のうちに、一読し、初老期になって、もう一度、手にしてほしい時空間

を超える本として推薦します。

 

明石家さんまヒストリー1 1955~1981 「明石家さんま」の誕生(新潮社 2020) エムカク 著

 少年時代から落語界入門、大阪での活躍、「ひょうきん族」スタートまで、

若き日の明石家さんまの“歴史”を本人の発言や膨大な資料をもとに克明に記録

されたものです。師匠のもとで芸を磨き、芸人仲間と切磋琢磨しながら順調に

スターの階段をのぼる一方で、芸を捨てる覚悟をした大恋愛、ブレイク前夜の

挫折など、苦くも充実した“青春時代”の姿を浮かび上がらせる読みやすい本

です。昔があったからこそ、今がある明石家さんまさん。ぜひ、この書を手に

してみてください。

 

容疑者Xの献身(文藝春秋 2005) 東野 圭吾 著

 天才数学者でありながら不遇な日々を送っていた高校教師の石神は、一人娘

の美里と暮らす隣人の花岡靖子に秘かな想いを寄せていた。ある日、靖子の

前夫・富樫が母娘の居場所を突き止めて訪ねてきた。金を無心し、暴力を

ふるう富樫を、靖子と美里は殺してしまいます。呆然とする二人を救うため

に、石神は完全犯罪を企てる。 しかし皮肉にも、石神と帝都大学の同期

であり、親友である物理学者の湯川学がその謎に挑むことになります。

第134回直木賞受賞作でもあり、イマジネーションを膨らませ、満足感が得られる本物の本として推薦

します。

 

伝わるちから(小学館 2017) 松浦 弥太郎 著

 「対話のポイントは、常に、今のこと、そして、未来のことの両方を話す

ように心がけるといい。まずは、今、自分が思っていること、悩んでいる

こと、向き合っていること、抱えている問題を自ら話す。自分のことを相手

に話せば、自然に相手も話してくれる」(本文より)。人との

コミュニケーションに悩んでいる時に役に立つ、たくさんのヒントがあり、

自分自身への付き合い方にかかっていることに気づかせてくれる、そうした

人生を積み重ねたいと思える本として推薦します。

 

 

髙月教惠先生の読書ノート

花さき山(岩崎書店 1969) 斎藤 隆介 作 , 滝平 二郎 絵

 やさしいことをひとつするとひとつ花が咲くというお話です。「つらいのをしんぼうして、じぶんの

ことよりひとのことをおもってなみだをいっぱいためてしんぼうすると花がさく」。このコロナ禍、皆が

マスク・手洗いをして密を避ければ、山ンばの花さき山いちめんに花が咲くかも。「いのちをかけて

すれば山がうまれる。うそでない、ほんとうのことだ…」と。

 

シュタイナー教育100年 80カ国の人々を魅了する教育の宝庫(昭和堂 2020) 広瀬 俊雄、遠藤 孝夫、池内 耕作、広瀬 綾子 編

 この本は、ルドルフ・シュタイナー(1861-1925)がシュタイナー学校を創設(1919年9月)して

100年を記念し、出版された本です。シュタイナーは「感謝は幼児期に、愛は児童期に、義務は思春期・

青年期に成長する」といいます。本学の広瀬綾子先生のご家族が執筆されているので、温かく身近に

感じられます。子どもの心が育つとはどういうことかがわかると思います。

 

日本における保育カリキュラム 歴史と課題(新読書社 2017) 宍戸 健夫 著

 宍戸は「保育カリキュラムとは、子ども一人ひとりが、その生活や発達に

即して、将来にむけて健やかに成長していくことを願い、とりくむ、保育活動

の全体的な計画のことである」といいます。日本の保育カリキュラムの歴史と

今日の課題について語られています。子どもとどのように関わればよいかと

迷った時、先輩の保育実践から、先が少し見えてくると思います。

 

 

 

八尋茂樹先生の読書ノート

罪と罰(新潮社 2010) ドストエフスキー 著 , 工藤 精一郎 訳

 ある貧しい若者が、「自分は選ばれた人間なんだ。だから、罪を1つ犯し

ても、善い行いを百すればチャラ」とか、「明るい未来を作るためには、

道徳から外れても許されるんだ」などと考えるようになります。彼は老婆を

殺害し、彼女から奪ったお金で世の中のために良い行いをしようとする

のですが……。鬼滅の刃も面白いですが、土曜の深夜にクラシックやジャズ

を流しながら、ドストエフスキーでもめくってみてはいかがでしょうか。

 

泣いたあとは、新しい靴をはこう。 10代のどうでもよくない悩みに作家が言葉で向き合ってみた(ポプラ社 2019)  日本ペンクラブ 編

 若い人には若い人なりの悩みがあります。たとえば、悲観的な人生観を

持ったり、孤独感を感じたりするかもしれません。年齢を重ねた人は

「元若者」です。大人はどうやって心の危機と向き合い、乗り越えようと試み

てきたのでしょうか。若者の悩みに対し、元若者の著者たちが人生のヒントを

提示してくれています。今の自分の生き方の参考や、将来大人になった時に、

若者へのアドバイスの指針となるかもしれません。

 

 

福島に生きる(双葉社 2011) 玄侑 宗久 著

 福島県は、2011年の東日本大震災を起因とする原発事故の影響で、放射能

汚染にも苦しみました。そして、災害から10年、福島を離れた人もいれば、

残った人もいます。今、あなたの地元で原発事故が起きたとしたら、あなた

の家族はそこに残るでしょうか。それとも離れるでしょうか。この本を読む

と、自分が「今」「ここ」で生きている意味、「これから」「そこ」で

生きていく意味とも向き合えます。

 

 

芝﨑美和先生の読書ノート

自分の顔が好きですか? 「顔」の心理学(岩波書店 2016) 山口 真美 著 

 大人も子どももマスクが手放せない現状で、乳幼児の表情理解にマスクが

どういう影響をもたらすかといった問題に注目が集まるようになってきま

した。日本では、「目は口ほどにものを言う」という諺がありますが、

はたしてそれは本当なのでしょうか?本書には、「顔」についての心理学的

知見が集約されています。毎日見ている顔について、新しい発見ができると

思いますよ。

 

 

渡部昌史先生の読書ノート

言葉の品格(光文社 2018) イ・ギジュ 著 , 米津 篤八 訳

 タイトルを見て,普段、自分が使っている言葉をあらためて見つめ直しました。「言葉」,皆さんも

今一度,深く考えてみる契機にしてください。

 

天使のナイフ(講談社 2008) 薬丸 岳 著

 それぞれの主張や感情が、相撲の立ち合いのような激しさをもって何回もぶつかります。ぶつかって、

ぶつかって、前に行く。読後は全力を出した後の心地良い疲労感に似ていました。考え、感じられる本

だと思います。是非、手に取ってみてください。

 

虚ろな十字架(光文社 2017) 東野 圭吾 著

 ヒトはそれぞれが自分の意識の世界をもっています。自分の世界からみている世界と他人の世界から

みている世界は、見方、感じ方、捉え方など違っていると考えられます。よって、何を正解だとしよう

とするのかは、個々で異なることがあると思います。異なる場面において、自分でしっかり考えることの

重要性を感じることが出来る本だと思いました。手にとってみてください。

 

 

広瀬綾子先生の読書ノート

シュタイナー教育100年 80カ国の人々を魅了する教育の宝庫(昭和堂 2020) 広瀬 俊雄、遠藤 孝夫、池内 耕作、広瀬 綾子 編

 シュタイナー学校創設100年を記念して出版された待望の書。本学の教員、広瀬綾子が編著者の

一人となっています。絵を描く活動や音楽をとり入れた活気に満ちた授業。クラス全員で取り組む

クラス演劇。弦楽器作り。童話・昔話の語り聞かせ。点数評価からではなく学ぶ楽しさからの学習。

驚きや感激を生む直接体験の重視。幼児教育、道徳教育、ICT教育、地理や理科教育、世界の

シュタイナー学校の動向、公的権利の獲得、8年間一貫担任など、シュタイナー教育の真髄に迫る。

 

変身(新潮社 2011) カフカ 作 , 高橋 義孝 訳

 ある朝、気がかりな夢から目をさますと、自分が一匹の巨大な虫に変わって

いるのを発見する男グレーゴル・ザムザ。なぜ、こんな異常な事態になって

しまったのか……。謎は究明されぬまま、ふだんと変わらない、ありふれた

日常がすぎていく。忘我、新しきものへの待望などを変身した男に託して描く

海外文学最高傑作の一つ。

 

 

 

加藤由美先生の読書ノート

92歳の現役保育士が伝えたい 親子で幸せになる子育て(実務教育出版 2019) 大川 繁子 著

 「92歳で現役?」「園の敷地が3000坪?」まずそこに驚いた。

モンテッソーリ教育とアドラー心理学の“いいとこどり”を実践しているこの園

は「奇跡の保育園」と呼ばれている。保護者が園の方針に共感しているため

クレームはゼロ、働く保育士が幸せを感じているため離職者はゼロだという。

子どもと対等な立場で自由に生きる力を育む保育は、とても尊い。

 

 

魅力ある保育者たち(ひかりのくに 1985) 高杉 自子 著

 随分昔の本で著者は既に故人であるが、中身は色褪せていないと思う。まず、たいくつな保育や魅力の

ない保育者について指摘する場面は、かなり辛辣だが的を射ていて、かつての自分もそうだったかも

しれない、と今更ながら申し訳ない気持ちになった。保育者として子どもに向き合う姿勢や人間的な魅力

の大切さについて考えさせられる。

 

幸福優位7つの法則 仕事も人生も充実させるハーバード式最新成功理論(徳間書店 2011) ショーン・エイカー 著 , 高橋 由紀子 訳

 「今は辛く苦しいけれど、頑張ればいつかきっと幸せになれる」と思っている人は少なくないはず。

「努力すれば成功する。成功すれば幸せになれる」という考え方が180度変わってしまう本である。

本書は、ポジティブ心理学と脳科学の膨大な研究成果に基づいて書かれており、人の生き方そのものを

変えてしまう程の説得力がある。個人的にはお薦めの1冊。

 

 

立浪朋子先生の読書ノート

ガラスの仮面(白泉社 1994-) 美内 すずえ 著

 ガラかめが大学図書館に揃っていたら素敵だと思いませんか。女優を目指す一人の女の子が、ライバル

と切磋琢磨しながら天才的な演技の才能を開花させていく……と、わざわざあらすじを書く必要もない

くらい有名な未完の名作。外出が難しい今、大長編のガラかめはおうち時間の救世主。少女漫画ですが、

男性ファンも多いとか。

 

発達障害 ヘンな子と言われつづけて いじめられてきた私のサバイバルな日々(明石書店 2012) 高橋 今日子 著

 現在は発達障害者支援などで活躍されている著者の自伝。タイトルにある

ように「ヘンな子」と周囲に言われてきた著者。子ども時代の辛い思い出から

成人式の出席は拒否。就職すると、同僚から高橋さんにはとりえがないと言わ

れるほど、仕事ができません。どこに行っても叱られる日々。それでも憧れの

ドイツで働き、休日にはベルギーを旅し、歯科技工士に転職して自らの人生を

切り開いていきます。頑張りすぎるくらい頑張った著者に喝采を送りたい。

そして、もうこんなに頑張らなくても誰もが自分らしく生きていける社会に

する方法を考えたいものです。

 

発達障害の僕が「食える人」に変わった すごい仕事術(KADOKAWA 2018) 借金玉 著

発達障害サバイバルガイド 「あたりまえ」がやれない僕らがどうにか生きていくコツ47(ダイヤモンド社 2020) 借金玉 著

 発達障害の診断を受けた著者が見つけ出した、

人生をどうにか生きていくコツの数々が紹介

されています。社会人向けですが学生さんにも、

また発達障害ではない方にも役立つと思います。

たとえば日々必要な物は全て一つのカバンに入れ

て持ち歩く。重いけど、重い以外は全て解決。

毎日カバンの中身を入れ替えるという困難も、

忘れ物をする恐怖もなくなるのでどうにか生きていけます。とにかくどうにか生きていければそれで

良い、と思える本です。

 

チャイコフスキー・コンクール ピアニストが聴く現代(中央公論社 1991)  中村 紘子 著

 30年前の出版ですが、あまりに面白いので引越しのたびに捨てられず持ってきて何度も読み返して

います。著者はチャイコフスキー・コンクールの審査員を務めたピアニスト。権威ある国際ピアノ

コンクールの裏側、出場者のピアノの実力より彼らの容姿を話題にする審査員たち、ピアニストという

職業の厳しい現実、審査員の仕事のために著者がモスクワにカイワレ大根を持ち込んだ理由。生の芸術に

触れることが難しい今、芸術家の心に触れてみるのはいかがでしょうか。

 

来て!助産婦さん(クオリティケア 2015) Jennifer Worth 著 , 土屋 さやか 訳者代表

 1950年代にロンドンの貧困地区の助産婦として活躍した著者の回想記。当時の助産婦さんの仕事ぶり

が生き生きと描かれています。本書によれば、当時の多くの専門家は母乳よりも粉ミルクの方が優れて

いると主張しました。しかし、著者たち助産婦は母乳を推奨しました。なぜか。貧困地区の哺乳瓶は

猫の毛だらけ。母親は消毒を面倒がり、真夏に長時間放置したミルクを子どもに飲ませる。それなら

母乳の方がずっと安全だから。著者は、専門家は実態に対応していないと批判します。「清潔な哺乳瓶

がある」という前提で知識を語ってはいけないと反省させられます。

 

 

本渡葵先生の読書ノート

あるひ あるとき(のら書店 2020) あまん きみこ 文 , ささめや ゆき 絵 , 佐藤 仁史 解説監修

 あまんきみこさんの作品は好きですか。あまんさんは旧満州の生まれです。

中国の大連で過ごしたあまんさんの子どものころの記憶から、この絵本が

うまれました。子どものころの、たいせつなともだちとのおはなしです。

みなさんのたいせつなともだちは、だれですか。

 

 

 

竹下可奈子先生の読書ノート

家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった(小学館 2020) 岸田 奈美 著

 著者の岸田奈美さんは,弟さんがダウン症,お父さんは中学2年生の時に

急逝,そしてお母さんは心臓病の後遺症で車いすユーザーという家族構成

の方で,この本ではおもに家族との思い出の数々が書かれています。

お父さんが亡くなった時の出来事など辛いエピソードも多いですが,

岸田さん独特の明るくテンポのよい,それでいて愛情に満ちた語り口からは

悲壮感は感じられません。「自分が愛する人たちの話を,みんなに楽しく

伝えたい」。そんな思いが伝わってくる本です。

 

「昔はよかった」病(新潮社 2015) パオロ・マッツァリーノ 著

 過去を美化し,思い込みで判断することに対して,資料をもとに反論して

いる本です。口調が辛辣なので好みが分かれるかと思いますが,近代日本の

意外な文化史に触れることができます。明治末期に日比谷図書館でもっとも

読まれていた本の種類や,コーラが日本で発売され始めた際のキャッチ

コピー,昭和初期の文部省における女性職員の採用方針などについて紹介

されています。

 

 

世間とズレちゃうのはしょうがない(PHP研究所 2020) 養老 孟司、伊集院 光 著

 養老孟司さんと伊集院光さんの対談本です。対話形式で書かれているため,

すんなり読めます。ひとつのテーマに沿って議論を深めていくのではなく,

いろいろな話題に移り変わりながら内容が発展していきます。全体としては

「価値観やルールが激変しうる世間というものと,どう対峙していくのか」

について語られており,疲れたときのヒントになる言葉があちこちにある

本です。

 

 

久恒拓也先生の読書ノート

隠れ教育費 公立小中学校でかかるお金を徹底検証(太郎次郎社エディタス 2019) 栁澤 靖明、福嶋 尚子 著

 子どもの頃、自分にはいったいどれほどの教育費がかかっていたのだろう

か。大学生になり自分で家計管理をしている方は、そんな疑問を持ったこと

はありませんか。本書は、教育における私費負担を考えるときの一冊として

おススメです。個別の学校の教育費例(制服代から教材費、修学旅行代に

至るまで)も挙げられており、全国的な平均値からは見えない実態をつかむ

手がかりが豊富にあります。

 

ジュラシック・パーク(早川書房 1993) マイクル・クライトン 著 , 酒井 昭伸 訳

 遺伝子工学により甦らせた恐竜を鑑賞する娯楽施設が制御不能になり、恐竜たちが暴れまわるという

大まかなストーリーは映画で知っているのではないでしょうか。本書では、娯楽のために科学をどこまで

用いてよいかという現在にも通じる倫理的な問いや、人間が案外しぶとい存在として描かれること

(ロケット砲や猛毒で恐竜に対処しようとする等)を愉しむことができます。

 

 

髙橋彩先生の読書ノート

自分をコントロールする力 非認知スキルの心理学(講談社 2019) 森口 佑介 著

 ストイックさというか、意思を貫く力というか、自分を律する力が年々

弱くなっているな…と感じている時に手に取って読んだ本。幼児期から青年期

を中心とした実行機能にかかわる研究成果について、非常にわかりやすく

解説をしてくれている。実行機能について知りたい人にはお勧めの入門書。

 

 

 

 

思いどおりになんて育たない 反ペアレンティングの科学(森北出版 2019) アリソン・ゴプニック 著 , 渡会 圭子 訳

 原題は“The Gardener and the Carpenter(庭師と大工)”。仕事柄、

子育て中のお母さんたちに子どもへの接し方について話をすることもあるの

だが、「こうあるべき」論でお母さんたちを追い詰めていないか…と時々

不安になる。子育てとは設計図があり型にはめようとする大工の仕事のような

ものではない。思い通りにいかない予想外の偶然性があり、それに対して

庭師のように栄養をやり、時に剪定したり添え木をしたり、花がその花らしく

育っていくことを手助けするという考えに私自身が励まされた気がした。

 

勉強の哲学 来たるべきバカのために(文藝春秋 2017) 千葉 雅也 著

 ジル・ドゥルーズ等を専門とする哲学者による勉強のハウツー本。

「勉強とは、自己破壊である」という印象的な言葉から「勉強とは何か」

が語られていく。当たり前のことしか書かれていない、世にあふれがちな

ハウツー本よりも圧倒的に刺激的で、面白い。「深く」勉強するとは何か

を考えさせられる一冊。「増補版」も刊行されたようなので近々読んで

みたい。

 

 

 

 

地域福祉学科

松本百合美先生の読書ノート

罪の声(講談社 2016) 塩田 武士 著

 昭和59年から昭和60年に起こったグリコ・森永事件は、平成12年に時効に

なった未解決事件です。子供の声で企業への恐喝文が録音されていました。

この小説は、その声の持ち主が成長し、父親の遺品から見つけたカセット

テープの中に、自分の声を発見するところから始まります。フィクションと

ノンフィクション部分の境が曖昧で、どこまでが真実なのかわからなくなって

きますが、犯罪に自分の声が使われた主人公の目を通した小説になって

います。

 

剱岳―線の記 平安時代の初登頂ミステリーに挑む(朝日新聞出版 2020) 高橋 大輔 著

 剱岳は、明治期に陸軍の測量隊が苦難の末、登頂した険しい山です。

その話は『剱岳 点の記』として小説・映画化もされていますが、実は

初登頂のはずの測量隊は、平安時代の鉄剣と青銅の錫杖頭を発見します。

現在のようなルート本も装備もない時代に誰が(錫杖となれば僧侶だろう

という想像はつきますが)、なぜ、どうやってこの山に登ったのかという

ことを、世界的な登山家である筆者が、文献や歴史家などへの調査をもとに

ルートを推論し実際に登頂した記録でもあります。

 

 

岡京子先生の読書ノート

ザリガニの鳴くところ(早川書房 2020) ディーリア・オーエンズ 著 , 友廣 純 訳

 米国でベストセラーになった小説。米国南東部の湿地を舞台に、美しい

自然とともに孤独な少女の成長と殺人事件の謎解きとが物語を構成して

います。物語の面白さと湿地の自然の精緻で迫力のある描写に圧倒され

ました。貧困、DV、差別から始まった主人公の人生ですが、人間の誇りや

気高さを見せつけられたように思います。何より読んでいる間ずっと

私自身が、湿地の豊かな自然に包まれていました。

 

カカ・ムラド ナカムラのおじさん(双葉社 2020) ガフワラ 原作 , さだ まさし[ほか] 訳・文

 2019年12月4日、アフガニスタンで銃撃を受けて亡くなった中村哲医師の

功績を讃え後世に伝えるため、現地のNGOがアフガニスタンの子どもたちの

ために作った絵本の日本語版です。医師としてアフガニスタンに出会った

中村先生は、清潔な水の必要性に気づき、現地で水利事業に取り組みました。

出会ってしまった課題に対して、今いるところでできることをする、そんな

ことを中村先生に教えていただきました。

 

大人は泣かないと思っていた(集英社 2018) 寺地 はるな 著

 軽く読める小説です。窮屈な田舎の人間関係の中で日常を送る人たち、登場人物6人がそれぞれ

一人称で語る7つの短編から成り立っています。それぞれの人に固有の物語があり、不器用でも人を

思いやりながら生きていることを教えてくれます。自分自身が日常の人間関係でしんどくなった時、

ちょっと視点を変えて相手の物語を想像してみると案外楽になるかもしれません。人って優しいな、

と思わせてくれる一冊です。

 

 

山内圭先生の読書ノート

キャナリー・ロウ / たのしい木曜日 (スタインベック全集9)(大阪教育図書 1996) 井上 謙治 訳 , 清水 氾 [ほか] 訳

 ジョン・スタインベック研究者として毎年スタインベックの著作を紹介しています。今では、

レストランの名前として有名になってしまいましたが、Cannery Rowとは、アメリカ合衆国

カリフォルニア州モンテレーある、以前イワシ缶詰工場が立ち並んでいた通りの名前なのです。

その地に住む愉快な仲間たちのお話がまとめられているのがこの書です。暗い時代だからこそ、

このように楽しいお話を読んでみるのはいかがですか?

 

ハーツォグ(早川書房 1981) ソール・ベロウ 著 , 宇野 利泰 訳

 近年スタインベックの他にアメリカ人作家のソール・ベローについても研究していますので彼の

作品も紹介します。ベローはスタインベックの次にノーベル賞を受賞したアメリカ人作家です。

この作品は、中年の大学教授が主人公となっていてその意味からも自分を重ね合わせて読むことが

できました。また日本人女性も登場し(主人公の愛人なのですが)、その描写もおもしろいです。

その他、内容盛りだくさんで、とても書ききれません。

 

しらみとり夫人 / 財産没収ほか(ハヤカワ演劇文庫6)(早川書房 2007) テネシー・ウィリアムズ 著 , 鳴海 四郎、倉橋 健 訳

 知り合いの演出家為国孝和さんが、この本に収録されているウィリアムズの短編演劇

「話してくれ、雨のように……」の演出をすることになり、それを観劇する前に原作を読みました。

ウィリアムズは、映画化された『欲望という名の電車』や『ガラスの動物園』などの作品が有名ですが、

この本にもおもしろい作品が収められています。中には日本が舞台になっている

「東京のホテルのバーにて」というものも収められています。

 

最新版 大学生のためのレポート・論文術(講談社 2018) 小笠原 喜康 著

 以前短期大学時代に同書の前の版を、ゼミ指導に使用していました。

この度、地域福祉学科でゼミを担当するにあたり、この最新版を用いて

レポートや論文の書き方、資料の集め方、そして卒業論文の執筆の仕方などを

指導するための課題図書としています。せっかくなので、山内ゼミ以外の

学生にも紹介します。日頃のレポートの宿題や各学科の卒業論文作成にも

きっと役に立つと思います。ぜひどうぞ。

 

 

本屋を守れ 読書とは国力(PHP研究所 2020) 藤原 正彦 著

 現在、新見市内では1軒の書店がありますが、その書店がオープンする前、

市街地の書店が撤退してからしばらく、書店がない時期がありました。市内に

書店が復活してとてもよかったです。さて、『国家の品格』も書かれた

藤原さんは、数学者ですが読書の大切さをわかりやすい口調で説いています。

この本を読めば、読書の大切さが絶対にわかるのですが、本を読まない人に

それがどうやったらわかってもらえるのか、ちょっと難題です。

 

 

毒親 毒親育ちのあなたと毒親になりたくないあなたへ(ポプラ社 2020) 中野 信子 著

 この本は、読み始めたらとても興味深くて、一晩で読み終えることができ

ました。多くの学生の皆さんは、今、子ども側からしか親子関係を見ていない

と思いますが、親になると、自分が子どもだったことは忘れ、つい親側から

だけしか見ないことがあります。この本を読んで、親子関係、そして最近

増加していると言われる児童虐待等について考えてみるのもよいでしょう。

また、今後、親になる準備として読むのもよいかもしれません。

 

 

英語は聴くだけでモノにできる(ごま書房 1985) 長谷川 潔 著

 著者の長谷川潔先生は、大学・大学院時代の私の恩師で同じ「キヨシ」としてかわいがってもらい

ました。この書について以前、ブログに書いていたのですが、長谷川先生の功績について調べている

関東地方の大学生より連絡をもらいました。また、ある社会人の方より英語の勉強の仕方についての

質問を受け、この書を紹介しました。ということもあり、再び読み返してみましたが、若い頃影響を

受けた本を読み直してみるのもいいですね。

 

アメリカ歴史の旅 イエスタデイ&トゥデイ(朝日新聞社 1987) 猿谷 要 著

 これも古い本の紹介ですが、著者の猿谷先生には一度だけお目にかかったことがあります。自分の

卒業論文の参考文献に挙げた書の著者に会えて感動しました。この書は、猿谷先生が旅して集めた

資料や写真、そして体験などを踏まえ、アメリカの歴史を分かりやすく紹介しています。私は

この書を古本で購入しましたが、残された書き込みから、元の持主が、この書を使った猿谷先生の

講義の受講生だろうと思われるのも面白いことです。

 

アメリカ・南部/南西部(英米文学史跡の旅3)(英宝社 1982) リタ・スタイン 著 , 橋口 保夫[ほか] 訳 

 この本の主訳者である橋口保夫先生が昨年お亡くなりになり、追悼文を書かせていただくために、

以前から気になっていたこの書を初めて読みました。この書は合衆国を4つに分けて各地の文学者に

まつわる話をまとめたシリーズ本の第3の書です。私自身アメリカ南部や南西部にはまだあまり

行ったことがないのですが、各地にまつわる様々な文学者の情報を知り、ぜひいろいろと読んで

みたい(けど全部読む時間はないなあ)と思いました。

 

 

山本浩史先生の読書ノート

リスクの正体 不安の時代を生き抜くために(岩波書店 2020) 神里 達博 著

 社会における様々なリスクについて記されており、新型コロナウィルス

感染症等の感染症リスク、自然災害によるリスク、生活上のリスク等、

様々な社会に対するリスクについて記された一冊です。社会の仕組みと

リスクをどう考えるのか・・といった問題を提起している一冊です。

 

 

 

SDGs 危機の時代の羅針盤(岩波書店 2020) 南 博、稲場 雅紀 著

 SDGsとは何かについて説明され、世界、日本での取り組みなどが書か

れています。特に第3章の「日本のSDGs」では、岡山県の取り組みも紹介

され、鳥取県智頭町での取り組みも紹介されています。身近な地域での取り

組みが紹介されていることもあり、興味を持って、読むことができるのでは

ないでしょうか。

 

 

見放さない、その命! AMDA魂の連携総社市から全国へ! 西日本豪雨災害被災者支援活動の教訓と災害医療機動チーム構想(吉備人出版 2020)菅波 茂 編

 2018年7月に発災した西日本豪雨災害における支援活動の記録です。AMDA

の支援を中心に記されていますが、それ以外の組織や特に災害時の初動対応や

総社市で活躍した高校生ボランティアによる活動について記されています。

 

 

 

 

 

和田美智代先生の読書ノート

宇宙に行くことは地球を知ること 「宇宙新時代」を生きる(光文社 2020) 野口 聡一、矢野 顕子 著 , 林 公代 取材・文

 ミュージシャンの矢野顕子と宇宙飛行士の野口聡一さんという、不思議な組み合わせによる宇宙体験

についての対談です。野口さんの経験や思っていることを矢野さんが聞くことで、矢野さんの中に新たな

宇宙観がつくられる。バリバリ理工系の野口さんの、日常用語による「フツーの大人向け宇宙の解説」が

わかりやすく秀逸で、宇宙体験が人間に与える精神的影響がわかるような気になります。あなたも、

新しい発見にワクワクするかも。

 

時をかけるゆとり(文藝春秋 2014) 朝井 リョウ 著

 大学在学中に『桐島、部活やめるってよ』でデビュー、『何者』で戦後

最年少の直木賞受賞者という経歴から、「出来る人」なんだろうという

こちらの勝手な想像を見事に覆してくれる、面白い、笑える、噴き出し注意

の初エッセイです。題名は、ゆとり世代の著者が子供の頃から今もずっと、

馬鹿馬鹿しく可笑しい日常を過ごしている、というようなニュアンスなのだ

とか。2020年5月に2冊目『風と共にゆとりぬ』が出ています。

 

民法風土記 「法の現場」を歩く(講談社 2001) 中川 善之助 著 

 日本の民法(家族法)学の泰斗による、人間味あふれる文章で綴られたエッセイです。社会の中の

活きた法を調査・研究した際の思い出や、各地の風俗習慣などが、民法学的見地から、軽妙に綴られ

ています。変化途上の昭和時代の風俗習慣を内容とし、貰い子の習慣と児童福祉法の里親登録の関係

なども取り上げられています。地域調査する際の一つの視点としても興味深い1冊です。法学生向け

雑誌『法学セミナー』の連載の単行本化です。

 

 

三上ゆみ先生の読書ノート

ケーキの切れない非行少年たち(新潮社 2019) 宮口 幸治 著

 精神科医の著者が、医療少年院での勤務経験から、非行少年にみられる

どうしてそんな行動に出るのか、「境界型知能」に注目しています。見えて

こなかった本人たちの困りごとが要因となり、大きな問題行動へつながる

状況から解決の方法を探っています。IQだけでは測れない認知機能の低さや、

感情統制の低さや、融通の利かなさなどを知ることから教育や成長への支援

が見えてきます。

 

 

夢をかなえるゾウ(飛鳥新社 2011) 水野 敬也 著

 この本は2007年に発行、昨年2020年に第4巻が発売されドラマ化もされた

シリーズの第1巻です。自分を変えたいけれど変えられないと悶々とする

サラリーマンの前に「神様」を名乗る謎の生物・ガネーシャが現れます。

めちゃくちゃな神様に1日1つの課題をこなす約束をしたことから、当たり前

の事を当たり前にやれていないのに気付かされ、だんだん変化していく主人公

にもう一度共感してみてはいかがですか?

 

THE LAST GIRL イスラム国に囚われ、闘い続ける女性の物語(東洋館出版社 2018)ナディア・ムラド, ジェナ・クラジェスキ著、吉井智津訳

 ノーベル平和賞を受賞したナディア・ムラドさんの自伝です。著者は

『戦下における武器としての性暴力の根絶に尽力』したとして、2018年に

ノーベル平和賞を受賞しました。イラク北部にあるコーチェという小さな村の

ヤズィデイ教徒たちに、イスラム国の襲撃が行われました。遠い国の現実を

ぜひ一読してください。

 

 

 

鄭丞媛先生の読書ノート

リスクの正体 不安の時代を生き抜くために(岩波書店 2020) 神里 達博 著

 2020年以降、新型コロナウイルスによって私たちの生活は一変しました。

感染症以外にも、豪雨災害、地震などの自然災害が度々起き、私たちは、様々

な不安や恐怖に囲まれて生きています。本書では、私たちに影響を与える

「リスク」とどう向きあっていけばよいのかについて、科学史・科学論の知見

を駆使しながら、考察しています。

 

 

人類と病 国際政治から見る感染症と健康格差(中央公論新社 2020) 詫摩 佳代 著

 人類の歴史は病との闘いでした。歴史を紐解いてみると、特に感染症は新型

コロナウイルス以前にも、ペストやコレラ、天然痘、ポリオ、スペイン風邪、

マラリアなどに苦しめられてきました。20世紀以降は医療の進歩と国際協力

によって、それらに対処し、困難を克服してきました。他方で、新型コロナ

ウイルスへの対応においても現れているように、医療をめぐる格差が生じて

います。本書では国際的視点から病とどう戦うべきかを論じています。

 

 

 

井上信次先生の読書ノート

先端医療と向き合う 生老病死をめぐる問いかけ(平凡社 2020) 橳島 次郎 著

 生命倫理学の視点から先端医療について考察した書物。文化、宗教的な視点

が含まれているだけでなく、LGBTや同性カップルについて触れている。法律

問題、家族問題を含めてバランス良く、先端医療に関わる諸課題を踏まえて

おり、当該分野に関する基本的な論点を理解するための良書である。

 

 

 

 

AIDで生まれるということ 精子提供で生まれた子どもたちの声(萬書房 2014) 非配偶者間人工授精で生まれた人の自助グループ、長沖 暁子 編著

 AIDは非配偶者間の人工授精を意味する。AIDは「生殖補助医療の提供等

及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律

(2020.12)」によって、これからより注目される可能性が高い。AIDに

関する議論の一つが「出自を知る権利」である。この「出自を知る権利」を

中心に、当事者の語りをまとめたのが本書である。初版が2014年のため、

法律や制度、社会背景は異なっているが、AIDの課題を理解する上で希な

書籍である。

 

概念としての家族 家族社会学のニッチと構築主義(新泉社 2010) 木戸 功 著

 家族社会学についての議論を構築主義の視点から整理している。約10年前

の書籍ではあるが、男性-女性が結婚し、家族をつくるという価値観が大きく

変わりつつある昨今の現状を分析する上での、理論的フレームワークになる。

「家族の多様化」の中にある家族の「標準理論」等、非常に参考になる。

第5章、第6章ではより具体的に支援の視点からの記述もあり、理論的文章が

苦手な人は、この2つの章だけでも十分参考になる。

 

 

松田実樹先生の読書ノート

こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち(北海道新聞社 2003) 渡辺 一史 著

 1日24時間常に誰かの支援を要する。そのような状態にある人が地域で生活

を送るために日々どのような人が関わり、どのような生活支援がされたのか。

介助ノートを基にまとめられた書籍。他人と生きる宿命をおった主人公が、

多くの人と信頼関係を築き、共に時間を共有する。人が人として生きる上で

当たり前の感覚を持つことの大切さに気付かせてくれる一冊。

 

 

ケアの本質 生きることの意味(ゆみる出版 1987) ミルトン・メイヤロフ 著 , 田村 真、向野 宣之 訳

 看護、福祉、教育といった立場からケアをどのように考えたらよいのか。本書では、ケアする人その人

自身も変化して成長を遂げるということが書かれている。また、読み進める中で、他者の人生に関わり、

支援者としてケアを行う上で忘れてはならないことが凝縮されているように思う。社会に出て利用者対応

に行き詰った時、何度も読み返した一冊。

 

 

合田衣里先生の読書ノート

このゴミは収集できません ゴミ清掃員が見たあり得ない光景(白夜書房 2018) 滝沢 秀一 著

 お笑い芸人であり、ゴミ清掃員でもある著者が書かれています。もしかすると、バラエティー番組に

出演しているところを見たことがある方もいるかもしれません。そんな著者が、ゴミ清掃員の仕事内容や

ゴミから的確にプロファイリングできるという話、まじめな環境問題まで芸人さんらしくコミカルに描か

れている一冊です。

 

アスペルガーですが、ご理解とご協力をお願いいたします。 私だから書けた「アスペ」の取扱説明書(大和出版 2012)アズ 直子 著

 アスペルガー症候群の診断を受けている「お母さん」で、「社長」の

アズさんが、家族や周囲の人たちと上手く付き合っていくために、どんなこと

に気を付けているのか。また、どのように接してもらいたいのか。そういった

ことを項目立てて分かりやすく具体的に書かれています。

 

 

 

苦しかったときの話をしようか ビジネスマンの父が我が子のために書きためた「働くことの本質」(ダイヤモンド社 2019) 森岡 毅 著

 経営危機にあったUSJ復活の立役者として知られる著者が、大学生の娘さん

に向けて書いた本です。就職を前にした娘さんに対して、「やりたいことが

わからないのはなぜか?」ということから「自分をマーケティングせよ!」

という難しそうな話まで分かりやすく説明されています。

 

 

 

 

泉宗孝先生の読書ノート

子どものやる気を引き出す7つのしつもん スポーツメンタルコーチに学ぶ!(旬報社 2017) 藤代 圭一 著

 サッカーのコーチを始めた当初、「丁寧に教えよう」という思いで関わっても、それだけだと一方通行

になりがちで、「何か違うなぁ」と悩んでいました。この本と出会い、「教えること」をやめ、子ども

たちと「しつもん」を通して、お話しすることで、子どもたちの笑い声がたくさん聞けるようになりま

した。子どもを応援するということは、何をすることで、何をしないことなのか… 子ども好きにはぜひ

読んでいただきたい一冊です。

 

あしたの君へ(文藝春秋 2019) 柚月 裕子 著

 主人公が家庭裁判所調査官補として、少年事件などの背景を調査し、相談者

と向き合っていく過程が描かれています。医療・福祉を学んでいる学生の

皆さんなら、ストーリーをただ楽しむことに加え、その支援の在り方に

ついて、「自分ならどのように相談者と向き合い、支援をすすめるのか…」

そんなことを考えながら、読むこともできると思います。相談支援の難しさ

だけでなく、明るい希望も伝わってくる一冊でおススメです。

 

 

柳廹三寛先生の読書ノート

わたしは今がいちばん幸せだよ エルマおばあさんケア日記(小学館 2004) 大塚 敦子 著

 私が、病院のソーシャルワーカーとして在宅緩和ケアに取組んでいた時に、著者である大塚敦子氏に

出会い、この本を手にすることとなりました。この著書は、人生の最後を「今がいちばん幸せだよ」

という言葉で旅立ったエルマおばあさんにより、よりよく死ぬとはどういうことかを教えてくれ、

家族は、どのように最愛の人の旅立ちを見送るのかを教えてくれる一冊です。

 

主体的に動く アカウンタビリティ・マネジメント 『オズの魔法使い』に学ぶ組織づくり(ディスカヴァー・トゥエンティワン 2009) ロジャー・コナーズ、トム・スミス、クレイグ・ヒックマン 著 ,  伊藤 守 監訳 , 花塚 恵 訳

 変革とスピードが求められる現代において、組織を維持し成長させていくためには、その組織の構成員

ひとりひとりのアカウンタビリティ(accountability)を高める必要があります。保健医療福祉の分野

においても、複雑かつ多様なニーズを持つクライエントの期待に応えるためにも、私たちの

アカウンタビリティを高めていく必要があるのではないでしょうか?そのための方法が書かれた

一冊です。

 

「医師アタマ」との付き合い方 患者と医者はわかりあえるか(中央公論新社 2010) 尾藤 誠司 著

 病院のSWをしていた時、頭を悩ませていたことのひとつに、医師をはじめ

とする医療職とのコミュニケーションがあり、「なぜ話がすれ違うのか」

でした。そうした時に、ふと本屋さんで出会ったのがこの『「医師アタマ」

との付き合い方』でした。この本との出会いにより、医師や看護師、薬剤師

などの仲間とのコミュニケーションだけでなく、医療職の仲間と患者さんの

トラブルの際の仲介役としても大変参考になった一冊です。

 

 

岸本由梨枝先生の読書ノート

多分そいつ、今ごろパフェとか食ってるよ。(サンクチュアリ出版 2018) Jam マンガ・文

 誰かのことで悩んだり…落ち込んだり…傷ついたり…その無限ループからなかなか抜け出せないことは

ありませんか?相手を変えることはできないけど、自分の考え方はほんのちょっとの工夫で変えられ

ます。

 この本には、そんな心のモヤモヤを引きずらないための考え方のコツが64個書かれています。挿絵の

ねこのキャラクターにも癒やされますよ。読んだ後は、気持ちがほっこりして晴れやかな気持ちになり

ますので、ぜひ手にとって読んでみてください。

 

世界でいちばん貧しい大統領からきみへ(汐文社 2015) ホセ・ムヒカ 著 ,  くさば よしみ 編 , 田口 実千代 絵

 皆さんは世界でいちばん貧しい大統領を知っていますか?南米の国

ウルグアイには、給料の大半を貧しい人に寄付し、大統領の公邸には住まず、

町から離れた農場で妻と暮らすホセ・ムヒカ大統領がいました。

 人生において「幸せ」とはなにか、本当の意味での「貧しさ」とはなにか、

とてもあたたかみのある挿絵と彼が大切にしている「言葉」には、物に

あふれた現代社会で生きる私たちの心に響くものがあります。

 

目の見えない人は世界をどう見ているのか(光文社 2015) 伊藤 亜紗 著

 私たちは日々、五感からたくさんの情報を得て生活しています。なかでも

視覚から得られる情報は人が外から得る情報の8~9割を占めるといわれて

います。

 「見えない人は,耳の働かせ方,足腰の能力,はたまた言葉の定義などが,

見える人とはちょっとずつ違います。使い方を変えることで,視覚なしでも

立てるバランスを見つけているのです。」

 障がいとはなにか、見えるが故に見えない(気づかない)ものはなにか、

「見る」ことそのものを問い直し考えさせられる1冊です。