持続可能な大学、新見市に ―新見公立大・短大の学長に着任されて、1年が経とうとし ているが。感想は。 新見市は少子高齢化、人口減少に係る諸々の課題に直面しているが、 「よくぞこのまちに 大学があった」と思う。人口約 3 万人のまちに公立大学があるのは、 新見市と名寄市だけ。 1980年設立だから、37 年間大学があることの意義は大きいが、 持続可能な未来の構築 が課題でもある。 ―新見公立大・短大を核にして地方創生に取り組 む、地方創生にいみカレッジ鳴滝塾も1 年が経過した。 塾をとおして、私自身が新見には 活性化の素材「お宝」が沢山あることを学んだ。お宝 を生かす具体策を探るというのがこ れからの鳴滝塾の役割だ。 ―具体策は見つかりそうか。 まだ見つかっていないが、これか らは人口減少にかかわらず、「どのように持続可能なま ちにするのか」という視点が重要だ。 「健やかなこどもの成長」と「高齢者の健康寿命の延 伸」を基本に、心の豊かさが向上す るような優しいまちづくりを目指して、そのために何 をすべきかを鳴滝塾として提言して いきたい。 ―今後の鳴滝塾は。 今年1月までで新見の課題をほぼ拾い上げた。今年度の総 括をしたあと、次年度からは 市内の若い人たちにも企画委員として参加してもらい、テー マの再設定や活動の輪を広げ るための具体策を考えていきたい。 ―いろいろな角度から 新見をご覧になったわけだが、何が必要だと思うか。 いろいろな組織がまちを活性化する ために活動しているが、先ず、それらが連携する必 要がある。また、未だ、「何とかなる」 と思っている市民の方々も、危機感を共有し、持続 可能で、人に優しいまちづくりを目指 して、「 今、自分たちに何ができるのか」を考えて提 案して欲しい。 ―昨年末の鳴滝塾で、 学生はカリキュラムや実習が過密なのにも関わらず、市民との交流 やボランティア活動を していることを知った。 短大の保育士養成も介護福祉士養成も、伝統的に質の高い専門職 教育課程を実践してい る。多くの学生は地域貢献活動やキャンパス外の活動から、もっと 多くのことを学びたい と思っているが、短大の枠組みでは現状が目いっぱい。短大の4大 化は、学生にとっても 市民にとってもプラスになるだろう。 ―今春から看護学部が健康科 学部に変わる。 現在の看護学部看護学科から、健康科学部看護学科に名称変更することで、 同学部内に 4 年制の健康保育学科、地域福祉学科を設置して、1学部3学科への発展が可 能になる。現 在の短大幼児教育学科では、発達障害児や子どもの病気への対応力など、よ り専門性の高 い保育士育成には限界があり、4年制への移行が課題。一方、短大地域福祉 学科では、こ の 2 年間定員割れをしており、4年制として介護福祉士に加えて幅広い福祉 人材の育成に 乗り出す必要に迫られている。質の高い専門職人材の育成法を確立、実践を してきた新見 公立短大ではあるが、このままだと「学生がここ(新見公立短大)に来る魅 力」が低下し ていく。更に、2018年から大学に進学する人口が100万人を切る。ま ちづくりと同 じで持続可能な大学にするための改革をしないと未来はない。 ―昨秋、日本 泌尿器内視鏡学会の第 16 回カールストルツ賞を受賞された。 私は泌尿器科が専門。泌尿 器科は内視鏡を使用する体に優しい手術への取り組みが、臨 床各科の中で最も進んでいる。 私は内視鏡とその手術法を改良、開発する仕事をしてきた。 同賞はそれに対する功労賞。 自分が力を入れ、大事にしてきた学会から表彰されてうれし かった。 ―遅ればせながら今年の抱負は。 今年だけのことではないが、常に改革のための努力をしないといけない。ど んな組織で も、たとえうまくいっていても、改革をしないと世の中の新しい流れの中で埋 もれていく。 改革にはスピードも必要だ。 (聞き手は桂孝志)